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わかりやすく伝えたい!のハナシ

こんにちは。就労継続支援ビルドの秋田です。
ビルドは就労継続支援B型事業所ですが、ご本人のペースに合わせて就職活動のサポートもしています。
就職活動といえばつきものなのが……書類!
一般的な履歴書の他に、障害福祉分野特有のナビゲーションブックという自分の特徴、得意/不得意や必要な配慮をまとめた書面を用意する必要があります。
文章、たくさん書くんですよ。
しかも自分についてのことばかり。
普段の通所・利用を通して自分のことをたくさん知っていきたいですね。

さて、わかりやすく伝わる文章を書くのはスキルです。
小説ではないので、才能は関係ありません。スキルを習得することで第三者に伝わる文章を書くことができます。
ビルドは異業種から初めて障害福祉分野で働き始めたスタッフが多いので、たまに「支援記録の書き方」に悩む人もいるのですが、支援記録も所詮は文章なので、文章表現の基本を押さえておけば問題ありません。

というわけで今日は、ライティングの基本的なルールを確認していきましょう。

まずは基本の4つ


主語と述語を近づける

吾輩は猫である。名前はまだ無い。
どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。

夏目漱石「吾輩は猫である」

吾輩はどこで生まれたのかとんと見当はつかぬ、なにやら薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた名前のない猫である。

どちらが読みやすいかは一目瞭然ですね。
文章の早い段階で述語を登場させると、何を言いたいのか?をはっきりさせることができます。
履歴書の志望動機を書くときなどに意識してみてください。

修飾語と被修飾語を近づける

ゴーシュは町の活動写真館でセロを弾く係りでした。けれどもあんまり上手でないという評判でした。

宮沢賢治「セロ弾きのゴーシュ」

ゴーシュは、あまり上手ではない街の活動写真館でセロを弾く係でした。

これでは、「あまり上手ではない」のが町の活動写真館のことなのか、ゴーシュのセロの腕前なのかがわかりづらいですね。
実際の文章では、2文に分かれています。

もしも1文に収めるとしたら…

ゴーシュは町の活動写真館で、あまり上手ではないセロを弾く係りでした。

になるでしょうか。
「あまり上手ではない」(修飾語)の対象であるセロ(被修飾語)を近づけることがポイントです。

修飾語と被修飾語の間が空くと、文章として冗長になってわかりづらいので、センテンスを短くすることを意識すると良さそうです。

1文60文字前後にする

…………ブウウ――――――ンンン――――――ンンンン………………。
私がウスウスと眼を覚ました時、こうした蜜蜂の唸るような音は、まだ、その弾力の深い余韻を、私の耳の穴の中にハッキリと引き残していた。
 それをジッと聞いているうちに……今は真夜中だな……と直覚した。そうしてどこか近くでボンボン時計が鳴っているんだな……と思い思い、又もウトウトしているうちに、その蜜蜂のうなりのような余韻は、いつとなく次々に消え薄れて行って、そこいら中がヒッソリと静まり返ってしまった。

夢野久作「ドグラ・マグラ」

ドグラ・マグラ引用したら、3センテンス目が100文字くらいありましたけれど、小説なのでしょうがないです。

私は、耳に穴の中にはっきり余韻を残していくようなブウウ――――――ンンン――――――ンンンン………………という、ミツバチの唸るような音をジッと聞いているうちに……今は真夜中だな……どこか近くでボンボン時計が鳴っているんだな……と思い思い、又もウトウトしているうちに、その蜜蜂のうなりのような余韻は、いつとなく次々に消え薄れて行って、そこいら中がヒッソリと静まり返ってしまった。

1文が長ければ長いほど、何を伝えたいのか?があやふやになってしまいます。目安は60文字。多くても80文字程度に収めましょう。

句読点を正しく打つ

句読点の打ち方、難しいですよね。
最近はSNSくらいでしか文章を書かないせいか、句点(。)を打たない文章を多く見かけます。

自分は東北の田舎に生れましたので、汽車をはじめて見たのは、よほど大きくなってからでした。自分は停車場のブリッジを、上って、降りて、そうしてそれが線路をまたぎ越えるために造られたものだという事には全然気づかず、ただそれは停車場の構内を外国の遊戯場みたいに、複雑に楽しく、ハイカラにするためにのみ、設備せられてあるものだとばかり思っていました。

太宰治「人間失格」

句読点がなぜあるのか?というと、文章のわかりやすさ読みやすさのためです。また、読点の打ち方によってリズムが生まれます。
「人間失格」の文章、リズミカルなところと一息に読めるところの抑揚がついていて、読んでいて気持ちいいですね。
1文目から読点を抜くと読みづらさ・わかりづらさが実感できると思います。

自分は東北の田舎に生れましたので汽車をはじめて見たのはよほど大きくなってからでした。

>自分は東北の田舎に生れましたので
は、一息で言ったほうが意味が通りますし、ここの読点があることでいきつぎができます。
>汽車をはじめて見たのはよほど大きくなってから
「は」と「よ」の間に読点が無いと、切りどころがわからず読みづらいですね。

自分は停車場のブリッジを、

自分は、停車場のブリッジを…
とすると、主語が「自分」になるのですが、
>自分は停車場のブリッジを、
とすることで、「停車場のブリッジ」が主語になります。


ポイントは、

  • 意味の切れ目

  • 誤読されそうなところ(漢字やひらがなが続くところなども)

  • 「間」をとりたいところ

に読点を打つ、と覚えておくと良いと思います。


ポイントはまだまだありますが、今日のところはこのへんで!

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