ムカデの標本を作ろう

飼育していたトビズムカデが死んでしまったので、標本にしてみました。
ムカデの標本を作るのは初めてなので、まだまだ試行錯誤の段階ですが、作る上でのポイントを自分なりにまとめます。


死んでいるので、こんなふうに毒牙を観察することも余裕です。でも、小学生の頃、死んでいると思って手のひらに載せて遊んでいたミツバチが急に生き返って刺されるという、パニック映画に出てくる油断してたら怪物に食べられた人みたいにな目にあったことがあるので、こういうことはあまりしない方がいいかもしれません(その後、ミツバチが持つ優しいイメージからは想像もつかないほどの激痛に苦しみながら駆け込んだ保健室で、ガーゼみたいなものをあてがってもらった記憶があるのですが、あの処置は果たして意味があったのでしょうか)。

ムカデは内臓が腐りやすいので、ある程度内臓を取り除く必要があります。

今回はハサミで、ムカデの腹を切開し(腹をジョキジョキと切ってなんだか赤ずきんみたいですね。赤ずきんと言えば、赤ずきんとおばあちゃんを助けた猟師は、あらゆる御伽噺の登場人物の中で最もファインプレーをしていると言っても過言ではありません。卓越した解剖スキルで赤ずきん、およびおばあちゃんを救出したことがでしょうか?それもありますが、最大の功績は、少女に、狼が死ぬ場面を見せなかったということです。いくらおばあちゃんや自分を食べてしまった憎き狼といえど、年端も行かない女の子に、狼を殺す場面を見せるのは流石にショックが大きいはずです。一生消えないトラウマになってしまう可能性すらあるでしょう(ジョジョ5部のトリッシュのように、宿敵の死を自分の目で確認しなければ気が済まないというタイプなら話は別ですが、彼女の場合は戦闘慣れしていたので・・・)。猟師は、狼の腹に石をつめるわけですが、このあと喉が渇いた狼は井戸に水を飲みに行こうとした際に石のせいでバランスを崩し転落死します。この時間差攻撃により、赤ずきんは、この狼が死んだという事実さえ知ることはありません。猟師は最初からこんなコンボ発動を狙って石を詰めたのでしょうか?いずれにせよ、人命救助に加え、少女の無垢な精神を守ったという点において、この名もなき猟師に最大の称賛を送るべきです。)内臓を取り出しました。

さて、腹部を切り開いたら、内臓をピンセットや耳かきでかき出していきますが、あまりに徹底的に取り出そうとすると、体がペロンペロンになり台無しになるので、ある程度でいいと思います。

内臓を取り出したら、中に、脱脂綿を詰めていきます。ここで、脱脂綿をこよりのようにすると、ムカデの体に芯が通る感じになり安定するので良いです。

傷口?に、ボンドを塗って乾くまで待ちます。巨大なムカデ の画像とかを検索しながら待っていると、あまり待っている気がしないので良いです。乾かないうちにお腹を台につけてしまうと、傷口が開いてそこから綿が出てしまい、体がプリッとしないので、しっかり乾かしましょう。
プリッと感は重要ですよね。これは人間においてもそうで、同じ太っている人でも、たるんったるんっの人と、プリっプリっの人では、好感度がぜんぜん違うように感じます(もちろん標本ではなく生きている人間の話ですよ)。


さて、ムカデは、その龍のような姿が印象的。しなやかな体から繰り出される予測不能な動きも、見るものの恐怖を倍増させます。
しかし、そんな禍々しいオーラを放っているのも魂が宿っているからこそ。死ねば情けない紐きれに成り果ててしまいます。ですので、せっかく標本にするからには生前のかっこいい姿を可能な限り再現したいですね。

ムカデの標本の形成には、大きく分けて2つのやり方があります。一つは、シンプルに真っ直ぐに形成するやり方(図1)。これは複数並べた時に統一感が出やすく、また個体間の比較がしやすいという点が大きな利点ですが、いまひとつ迫力がありません。もう一つは、s字型に体を曲げるやり方(図2)で、こうすると、躍動感が生まれますが、どうしても曲がり方にバラつきが生じてしまい、複数並べた際に統一感が出にくいです。


そこで今回は、まっすぐと、s字の両方の良いところを兼ね備えた新しいスタイルを思いつきました。縦s字です(既にやってる人がいるかもしれませんが・・・)

緩やかなカーブを、横では無く縦につけることで真上から見た時に統一感を生み出しつつ、立体的な躍動感も失わないようにするという狙いです。

姿勢が決まったら次は顔まわりの調整です。


完全に個人の好みの問題ですが、大顎は極端に広げすぎると田舎臭いのでほどほどに広げておきます。


また触角は魔王の角のようなイメージでややカーブさせて形成、固定しました。

微調整を加えて、完成です。このまましばらく乾燥させましょう。


このトビズムカデの体長は90mm。並べてある金田のバイクが85mmです。




余談ですが、私は高校生くらいまではムカデなどの多脚類は実は苦手でした。でも今となってはムカデを発見するとつい捕獲を試みてしまうくらいにはムカデが好きになっています。若い頃、苦くて嫌いだったビールが年をとってから好きになる人がいるように、これも好みの変遷なのかもしれませんね。



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