見出し画像

「2020年6月30日にまたここで会おう」要約 (※2020年4月27日発売/ネタバレ注意)5700字


この本は、2012年6月30日、瀧本哲史が東京大学・伊藤謝恩ホールにて行った伝説の講義内容を記した一冊である。

この講義は、参加資格29歳以下と限定され、全国から約300人の10代・20代が集結した。

瀧本哲史は、病のため2019年8月、天国へと旅立った。彼は生前、日本の若者に向けてメッセージを送り続けた。その内容がこの一冊に凝縮されている。

瀧本哲史

◆プロフィール 
[氏名] 瀧本哲史(たきもとてつふみ)
[経歴] 東京大学法学部卒業後に助手に採用される。助手の任期終了後は学界には残らず、1997年、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社、その後エンジェル投資家として活躍する一方、2007年より京都大学産官学連携センターの客員准教授を務めた。


◆人のふりした猿にはなるな

画像2

強いメッセージで始まるこの講義、ここでは「猿=思考しない人」という意味で、厳しいことを言うと「自分で考えてない人は、人じゃない」とハッキリ断言されている。

「カリスマ」と呼ばれる言葉が、近年出てきた。「この人なら我々を良い方向へ導いてくれるかもしれない!!」と、多くの期待を背負い「カリスマ」と呼ばれる人がたびたび登場する。しかし、その「カリスマ」が果たして本当に社会を変えたのだろうか? アメリカならオバマ大統領、大阪なら橋本前知事などがそういう「カリスマ」的ポジションだった。

オバマ、橋本

しかし、蓋を開けてみれば、「あれ?結局良い方向に進んだか?」という結果だった。

「カリスマ」を育ててもダメ。

「誰かすごい人が、すべてを決めてくれれば上手くいく!」というのは、たぶん嘘なんだと。「みんなが自分で考えて自分で決めていく世界」、それこそが目指すべき世界だ。


「自燈明(じとうみょう)」という言葉がある。
これは開祖のブッタが亡くなる時に、「私たちはいったいこれから何を頼って生きていけば良いのでしょうか?」という弟子たちに対して、ブッタは、

ブッタ

「わしが死んだら、自分で考え自分で決めろ。必要なことは全て教えた」
自ら明かりを燈して生きろ。誰かがつけた明かりに従って生きるのではなく、自らが明かりになれ。
これが極めて重要なことだと、瀧本先生は言う。


◆最重要の学問は「言葉」である

画像5

「次世代の君たちはどう生きたらいいのか?」そんな漠然とした問いに、瀧本先生は2つの見解を示した。
・教養を身に付けろ
・バイブルを否定しろ

そもそも教養の役割とは何か?

教養

教養の役割とは「他の見方・考え方があり得ることを示すことだ」
これは一体どういうことなのか。 例えば経済学を学ぶ人にとって、文学は正直役に立たないと思われる。しかし、経済しか学ばなかったとしたら?
経済学の法則でしか物事の枠組みを捉えることしかできない。そうなると、経済学の新しい法則やジャンルを切り拓くことができなくなるだろう。
それを防ぐための教養なのだと。答えを教えるのではなく、教養を通して、先人たちの思想や研究を通して「新しい視点を手に入れる」。これが教養を身につけるべき理由だ。


なぜバイブルを否定するのか?

バイブル

人は正解を求める生き物だ。義務教育では正解のある教育ばかりを受けてきた。だから「わかりやすい答え」を人々は求める。
その良い例が「バイブル」、つまり聖書。これにはどう生きたら良いか、ある種「正解」が書いてある。その通りに行けば迷わず済むから安心、とおいうことだ。
だが、その教えに従って生きて、何かが変わるのか? 今、この衰退している日本を救うような社会変革をもたらす、そんな人物が生まれるのか?と言われれば、答えはNOだ。
ハッキリ言って、「真の教え」とか「法則」だとか言う人は全員インチキだ。

「自分の人生は自分で決めてください」、これに尽きる。
「誰か」や「何か」に頼りたくなる気持ちは同じ人間だから分かるが、自分自身を拠り所にするためにも、真に「学ぶ」必要があるのだ。


「右手にロジック、左手にレトリック」

ロジックレトリック


これは、この世は完全に正しいロジック(=理論)だけをもっていても、レトリック(=言葉を如何に魅力的に伝えるか)が伴っていなければ、聞く人のこころに届くことはない。ましてや行動を変えさせることなどできないのだ。このレトリックがとても巧みだった例として、オバマ大統領はそのうちの1人と言えるだろう。「言葉の力」はアメリカ大統領になるまでの力をも持っているのだ。
日本でも「言葉の力」を示す好例として、明治維新も挙げられる。

明治維新

あれだけの大きな社会変革にも関わらず、死者をほとんど出すことはなかった。それは薩長ら倒幕派の人々が武器よりも言語を使って、積極的に仲間を増やしていったからだ。明治維新は際立って「言葉」を武器にして行われた革命と言える。

現在の民主主義の時代において、この「言葉」は大きな武器となりえる。
言葉によって人の行動を変え、仲間を増やし、世の中のルールや空気を変えてくことが可能なのだ。


◆世界を変える「学派」をつくれ

パラダイムシフト

そもそも前提として、「パラダイムシフト」とは何か?

パラダイムシフトとは、それまでの常識が大きく覆って、まったく新しい常識に切り替わること。実はこのパラダイムシフト、どうやって実現されていくかと言うと、それは単に古い考え方の人々が老いて死んでゆき、新しい考え方の人々が多数派になる、いわば世代交代によって起こる。

天動説、地動説がその良い例である。

天動

地動説が出てきても、世の中は依然として天動説であった。しかし、それから50年が経ったとき、天動説を唱える学者が老いて死んでゆき、気づいたら地動説が多数派になった結果、パラダイムシフトが起こったのだ。
残念なことに、パラダイムシフトの正体はただの世代交代であった。

しかし、これは逆に考えれば「希望」なのだ。
最初は「やっぱり世の中は変わらない」と諦めてしまう若い人もいると思うが、若者が新しくて、正しい考え方を選択すれば、最初は少数派だが、何十年も経って世代が交代さえすれば、パラダイムシフトは「確実」に起こすことができる。

世の中が変わるかどうかというのは、みなさんの若者に続く世代が、これからどういう選択をするか、すなわちどういう「学派」をつくるかで決まってくるのだ。

大きな変化をもたらすのはいつの時代も「若者」だ。

画像12

今、日本を代表する大企業の経営者の多くも、若いうちに企業や業界の常識に挑戦することで大成功している。世界でも同じように、挑戦した「若者」が大きな成功をあげている。
君と君たちが正しい判断をし、新しい「学派」を作れば、いつか世界を動かせる、世界は必ず良くなるのだ。


◆交渉は情報戦

交渉

時代は、トップダウン的な「支配的な時代」から「相互依存の時代」へと完全に変化してきている。この「相互依存の時代」で超重要になってくるのが

「交渉の力」

そもそもなぜ交渉をするのか?
交渉の目的は、単に自分の一方的な意見を相手に説得させることではなく、「相手に合意を得ること」である。
「相互依存の時代」だからこそ、対等な人間同士が違う立場で集まって、共通の目的のためにプロジェクトを遂行したり、フラットな組織や共同体を立ち上げる動きが盛んに行われている。ましてや、新しい「学派」を作り上げるには、そこにはまぎれもなく、互いが合意にいたるための「交渉の力」が必要なのだ。

握手

前述の通りこれからの時代、生きていくためには「武器としての交渉思考」を身につけることが必須になってくる。
交渉とは、単に相手を説得するのではなく、相手の利害を聞くことが一番重要となる。つまり交渉とは、「話す」のでなく「聞き出した」方が有利であり、情報を多く引き出した方が勝つゲームとも言える。

合理的な相手にはこの方法が効くが、世の中には合理的に話をしても伝わらない「非合理」な人間がわんさかいる。

そんな相手に出会ったら、「あいつは人間ではなく猿だ」(※猿再び登場)

猿その2

と思って、猿が求めていることを分析するしか方法はない(もちろん、ある程度猿を分類することはできる)

これらの交渉の力は瀧本哲史の著書、

「武器としての交渉思考」

に全てまとめられている。この「相互依存の時代」で生き抜くための交渉という武器が手に入るので、気になった方はぜひ読むことをオススメする。


◆人生は「3勝97敗」のゲームだ

リーダー


「なぜ日本
はリーダーが育たないのか?」

そもそもこの問いは間違ってる。なぜなら、この問いはただ「カリスマ」を求めているにすぎない。今、日本が考えるべきは「どうしたら「小さなリーダー」が日本に育つのか?」という問いだ。

現在日本は、地縁や血縁、会社の社縁でつながった古いタイプの組織が瓦解し、新たな組織やルールを自分たちでつくっていく社会に変化してる、丁度入口の段階にいる。
そこで注目すべきは、「カリスマモデル」ではなく、志と小さな熱を持った「小さなリーダー」たちが日本で次々に誕生し、そこで生き残ったリーダー達が社会で重要な役割を果たすモデルの方が充分健全だと考えられる。


大きな場所から始めなくていい、最初はショボくていいんだ。
あのクリントンだって、オバマだって最初は辺境の悲惨な場所で頑張っている小さなリーダーに過ぎなかった。

オバマクリントン


「人生は3勝97敗のゲームだ」

とにかく自分が正しいと思ったことをやって、まわりに自分が正しいと思うことをやってる人がいれば、それに合意したり支援すればいい。
ベンチャー企業は100社あったら97社は潰れる。失敗は織り込む済みだで、それでも悲観的にならず、負けたらまたチャレンジすればいい。

デモ

もし政治家に反対でデモを起こすぐらいなら「自分が政治家になれば良い」または、自分の近い意見の人を応援すればいい。

また、社会を変えるための戦いを制するためは、ファイトクラブ戦略が有利だ。

ファイトクラブ

ファイトクラブという映画をご存じだろうか? ごく普通のサラーマン達が週末に集まってボクシングを行う秘密クラブに入り、それがきっかけで世の中の矛盾に気づき始め、平日の昼にいたずらをし開始、それがどんどん大きくなり、最終的には革命を起こす話。
今この日本に必要なのは、そういったファイトクラブ戦略のような、いろんな人があちこちでちょっとづつ変化を起こすと、いつの間にか世の中が変わってるという戦略だ。つまりは「小さなリーダー達」が必要なのである。

弱いつながり

最近出てきた言葉で「弱いつながり」というのが今の時代、かなり重要になっている。「弱いつながり」とは、要はバックグラウンドが違う人との繋がりがのことで、価値観の違いが新たなイノベーションを生む出すのだ。自分とは違う属性の人間を探しに行くことは、社会変革の大きな一歩となりうる可能性がある。ぜひとも、若者は「仲間」を探しに行って欲しい、必ず仲間はどこかにいる。


◆よき航海をゆけ


航海

いよいよ最後のスライド。
しつこく言うようだが、この世には「こうやれば上手くいく」なんてバイブルのような物は存在しない。ただ、みなさん自身が今いる場所で、ちょっとだけでも変えれることがあるんじゃないかと。自分が興味あることをトライ&エラーでやってみたり、自分が正しいと思うことを選択して見たり。それをネットワークで広げていけば、少し長い時間はかかるかもしれないが、社会を変えることは間違いなくできる。

この日本はまだ捨てたもんじゃない。アメリカもイギリスも落ちた帝国だったが、いまでは復活している。日本もそうなると信じている。だからとりあえず、2020年までこの日本にチップを張ってみる。

8年後の今日、2020年6月30日の火曜日に再びこの場に集まって、みんなで「宿題」の答え合わせをしよう。

あの講義がきっかけで、あの日隣にいた人がきっかけで、自分はこんな挑戦をしてきた、こんな選択肢をとってきた。そんな答え合わせをしよう。

ヴォンヴォヤージュ


「ヴォン・ヴォヤージュ」
 

この言葉はフランス語で「良き航海を行け」という意味で、船長が船長に向ける言葉である。
お互いの船がすれ違ったとき、「そっちは嵐が起こるよ!」とか余計なことは決していわない、言うのはただ「ヴォン・ヴォヤージュ」のみ。
「船長は、船における全ての意思決定をし、全てのリスクを背負っている」
そのことに対しての尊敬の意である。

人生はみんながみんな、自分の人生の船長だ。
この人生という大きな海には、導いてくれる灯台や、バイブルのような地図は決して存在しない。
答えはただ一つ、それは自分で考え、思考し、決断した道のみだ。


2020年6月30日にまたここで会おう。




ヴォン・ヴォヤージュ!!




瀧本哲史先生は、2019年8月病のため47歳の若さで天国へと旅立った。2020年6月30日に再び東大・伊藤謝恩ホールに立つという約束は果たすことはできないが、この本の出版社である星海社新書の初代編集長、柿内芳文さんの指揮のもと、2020年6月30日に再決起集会が行われる。決して、瀧本先生の追悼ではないだろう、そんなことしたら檄が飛んでくるのが見え見えだ。生前、瀧本先生が残した若者へのメッセージを受け、新たな自分の決断による行動として、自分もこの決起集会に参加しようと思う。新たな仲間を探しに、新たな考えを見つけに。そして将来をどう生き抜くかを決断するために。


本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
本書が気になった方、また瀧本先生の別の著書にも興味ある方は、下記一覧より是非チェックしてみてください!
(自分がこれまで読んで感銘を受けたものをピックアップしてみました。)

本書が気になった方はこちら↓↓



瀧本哲史第1弾、京大での超人気講義がこの1冊に。
決断によって迷いを捨て人生を切り開く、「武器としての決断思考」
(※武器としての交渉思考とセットで読むことをオススメします)



これから社会に旅立つ、あるいは立ったばかりの若者に送る、非情で残酷な日本社会を生き抜く「ゲリラ」のすすめ。
瀧本哲史超大作、「僕は君たちに武器を配りたい」


かつて14歳だった君に向けた、新しい生き方、働き方を模索する全ての大人の必読書。圧倒的人気No.1作品、「ミライの授業」


個人紹介


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?