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2023/03 奈留島

久賀島の続き。

12:50に福江港に到着、レンタサイクルの返却と乗船券の購入を済ませて福江港13:00発の船に乗るという際どい乗り継ぎを決行。
この日2番目の目的地・奈留島へ向かう。


乗るのは五島旅客船のカーフェリー「OCEAN」。
この日の朝に「太古」と反航した船であり、会うのは2回目。

出港準備が始まって外されかけていたギャングウェイをかけ直してもらい、慌ただしく乗船。


出港。
すっかり穏やかになった五島灘を進む。


2021年竣工の新しい船であり、船内はまだピカピカに輝いている。
椅子席や座敷席に加えてボックス席、カウンター席など多彩な客席を用意。
どの区画もあらかた埋まる程度には混雑していた。


階段部分には先代の「フェリーオーシャン」が鎮座。


九商マリンエクスプレス「マリンライナー」

福江から約45分で奈留島・奈留港に入港。
入港時に九商グループのRORO船「マリンライナー」の鼻先を掠める。
これもまたスタイリッシュな船影。


奈留島に上陸。

この島は半日で自転車で巡るには些か時間が足りないので、ターミナル内のレンタカー店でEVを借りることに。
EVの運転は初めてだったが、操作性はガソリン車と何ら変わらない。

三菱自動車「i-MiEV」

まずは、世界遺産の構成資産である江上集落を目指す。


江上集落の手前で、島で唯一のトンネルである遠命寺トンネルを通る。
平成に入ってから竣工したトンネルで、内部は2車線でほぼ直線。島内で最もスピードを出せる道はこのトンネル内ではないだろうか。
ちなみに、このトンネル工事で発生した大量の残土は、港の埋立てに加えてこの後登場するとある構造物に利用されている。


トンネルを出て坂を下ると左手に広場があり、その一角の駐車場に車を停める。この広場は江上小学校の跡地のようだ。
遠命寺トンネルが貫く尾根が背後に立ちはだかる。江上集落はこの尾根によって奈留島の中心部から隔絶された立地であり、潜伏キリシタンが移住先としてこの場所を選んだのも頷ける。


風除けの役割を果たすタブノキの隙間から姿を覗かせる教会。
この地域の生活と自然的特徴がよく反映された一枚だと個人的に感じている。


江上天主堂。
「日本教会建築の父」と呼ばれ五島列島でも数多くの教会を手掛けた鉄川與助による設計で、1918年に完成。国の重要文化財にも指定されている。
水色に塗られた窓枠が淡いクリーム色の板張り壁に映える。

訪問日は月曜だったため見学は外観のみで、内部は見られなかったのが残念と言えば残念。


軒裏の細かい意匠も見逃せない。


通気性向上のため高床式になっているのが外観の写真からも見てとれるが、その床下はこのようになっている。


江上集落を後にして、北隣の大串集落へ。

その道中、江上集落から海(奈留瀬戸)を介して久賀島を望む。

奈留島の北西部に位置する江上・大串集落は対岸の久賀島との間で古くから交流が盛んに行われていた歴史があり、「五島列島における瀬戸を介した久賀島及び奈留島の集落景観」として国の重要文化的景観に指定されている。


大串集落に到着。

集落の背後に巨大なロックフィルダムのようなものが見える。
あれは先述の遠命寺トンネル工事の残土を積み上げて作られた「ノコビ浦の防風堤」と呼ばれる構造物。大串集落付近は南側の大串湾と北側のノコビ(野首)浦に挟まれた地形でトンボロのように陸地が狭まっており、風が集まりやすいこの部分の谷を埋めることで北からの強風が大串集落を直撃するのを防いでいる。
接近して防風堤の上に登ることもできるようだが、時間の関係もあり今回はここからの観察にとどめておく。


ここまで来たらせっかくなので、奈留港から辿ってきた県道168号線の末端まで行ってみることに。

県道のどん詰まりには小さな集落があり、ここまでバスが来ている(訪問時にもハイエースのバスとすれ違った)ほか小規模な港も整備されている。
アスファルトの舗装路はこの港の防波堤に突き当たる形で途切れるため、そこに車を停めて少し歩くと、明らかに浜辺の色が異なる場所が現れた。

この海岸には砂礫や石どうしがケイ酸・石灰質・鉄分などの作用で固結した「ビーチロック」と呼ばれる層が広がっており、「池塚礫岩層」と命名されている。一般的には熱帯地域で見られる現象だそうだ。
上の画像で濃い茶色の部分がそれ。


遠目では岩礁が露出しているだけにも見えるが、近づいて見ると丸い砂礫の集まりで、その隙間はセメントのようなもので埋まっているのが分かる。
集合体恐怖症の人にはやや厳しい風景かもしれない。


また、ビーチロックのすぐ近くには海跡湖があり、その湖岸には熱帯性の常緑低木である「ハマジンチョウ」が群生している。訪問時には薄紫色の花がちらほら咲いていた。
このハマジンチョウ群生地は日本でも有数のものらしく、長崎県の天然記念物にもなっている。


そろそろいい時間になってきたので奈留港へ戻る。

それにしても海が蒼い…


そういえば五島に来てから、立派な石積みに出会う機会が多い気がする。
奈留島でも随所で新旧交々の石積みを見かけた。


港に戻る途中、郵便局を巡る同行者のために船廻地区に立ち寄った。
船廻簡易郵便局の向かいには船廻八幡神社がある。この社叢はほとんど人の手が加えられておらず五島列島の典型的な植生が保存されていることから、県の天然記念物に指定されている。


ここで一旦奈留港に戻り、福江島に向かう同行者を下ろして見送る。

五島旅客船のフェリー「OCEAN」が入港。


乗下船と荷役作業を手早く終えて、そそくさと出港していく。
家族だろうか、出港時には感動のお手振りシーンが見られた。


さよーならー。


さて、自分が乗る船の時間まではまだ少し時間があるので、もう少し島内を巡る。
今度は港の南側へ。

ここにも立派な石積み。


最後に見に来たのは「千畳敷」。
奥に見える小島まで平坦な岩礁が連なっており、その上に階段などが整備されている様子も見える。
訪問時は潮が引いており、海も穏やかだったので時間が許せば小島まで渡ってみたかったが、さすがにそこまでの時間的余裕は無く断念。


どこまでも蒼い海、蒼い空…
五島の自然を全身で感じられる素晴らしい風景だった。


今度こそ奈留港のターミナルに戻り、レンタカーを返却。


間もなくして中通島に向かう最終の高速船「ニューたいよう」が奈留港に到着。

…と思ったら、先ほどフェリー「OCEAN」が発着した岸壁で待っていた自分の前を華麗にスルーしてターミナルの陰に消えていく船。
一瞬嫌な汗が浮かんだが、高速船はフェリー用の岸壁ではなくターミナル建屋の裏側にある桟橋から発着するらしい。おそらく案内があったと思うが見落としていたようだ。急いで桟橋へ。


桟橋には10人ほどが乗船を待っていた。
平日の夕方とは言えこんなものか…と思ったのも束の間、福江から奈留までの利用者が何十人も下船してきた。人口規模や距離を考えれば当たり前かもしれないが、福江〜奈留の需要が突出して旺盛のようだ。


というわけで無事に乗船。
奈留島を離れ、次なる島・中通島へと向かう。


続く。

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