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地獄

地獄は、六道の中でもっとも苦しみ多き世界です。

それまでの生においてなした行いによって、極限の熱さ・寒さ、痛みといった激しい苦しみを受け続けなければなりません。

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地獄の様相については諸説ありますが、ここではその一部をご紹介します。

等活地獄
・・ここに落ちた罪人は互いに敵愾心が強く、それぞれ鉄のような爪で互いにひっかき、傷をつけあって、ついに血も肉もむしり取って、骨ばかりになっても争うことをやめない。
また、地獄の獄卒が鉄の杖や棒で罪人を打ったり突いたりして、身体を土塊のように砕いてしまう。
あるいは鋭利な刀で、料理人が魚や肉をさくように、ばらばらに肉をさく。
ところが、涼しい風が吹いてくると、罪人は元のように生き返り、再び前記した苦しみを受ける。
・・この地獄には、生き物を殺した者が堕ちるのである。

(渋澤龍彦・宮次男著『地獄絵をよむ』)

・・第二の熱地獄は「黒縄地獄」と呼ばれる。

閻魔王の獄卒たちが住人を束にして、その身体に四本・八本・十六本・三十二本と線を引き、その線にそって焼けた鉄ののこぎりで身体を刻んでいくのである。

この地獄の住人はこんなふうに切り刻まれても死ねないで、苦しみだけが残っていくのである。

ここの住人は「等活地獄」の住人より長生きする。

三十三天界の神の一日は人間の百年にあたるという。
それが千年集まって「黒縄地獄」の住人の一日に相当する。この地獄の住人はそんな日々を一千年もすごすのである。

第三の熱地獄は「衆合地獄」である。数え切れないくらいたくさんの生き物が、焼けただれた鉄の臼に入れられる。

その臼めがけて、山のように巨大な杵がふりおろされ、みなを押しつぶしてしまう。すると杵がもちあがって、みな生きかえる。

この地獄の住人たちは、このような恐怖と苦しみを気の遠くなるくらい長い間味わいつづけるのである。

夜摩天に住む神々の一日は人間の二百年に相当し、それが二千年も集まって「衆合地獄」の一日をつくる。

この地獄の住人は、そんな日々を二千年もすごさなければならないのである。

・・最も過酷な八番目の地獄は「無間地獄」と呼ばれている。

灼熱の家に押しこまれた生き物たちに、たえずふいごにあおられた火が吹きつけて、火も身体も見分けができないほどになっている。

この地獄の苦しみを、第七地獄の倍も長い間耐えなければならないという。

この地獄に生まれてくるのは、父母を殺すなど恐るべき五つの大罪をおかした者と密教の修行者の師にそむいた者だけである。
(中沢新一『虹の階梯』)

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