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名づけと画数について

「画数、気にしてあげて。」

 5月の末、妻の里帰りに際して久々に実家に帰ったとき、母に、赤ちゃんの名前はもう決めているのかと問われた。
 妻との間では、女の子だったらこれと当たりを付けている名前があった。響きと意味合い(意味合いは半ば後付け)で、直感的に決めた名前だった。画数はもともとこだわりはなかったが、一応ネットで調べてみた。あまり良くはなさそうだった。
「まあなんとなく。画数とかより、意味合いとか響きとかで決めたいなと思ってて。」
 返事の後半は蛇足なのだが、かねて妻と、両親が画数を気にしたらどうしようかと話していた経緯もあり、探りを入れる意味で言ってみた。返ってきたのが冒頭の台詞だった。

 やっぱりか、と思った。自分の名前は画数ありきで付けられたことを知っていたので、もしかしたら、とは思っていた。(けど、孫の名前には口を出さないかも、という期待もあった。)

姓名判断とはなにか

 ネットで調べてみると、画数による姓名判断にはいくつか流派があるらしく、妻が見つけてきたサイト(多分すごくマイナー)では、良い結果が出ているものもあった。(姓名判断自体が)なんとも胡散臭いと思いつつ、じゃあその結果を使おうか、と言ってみたりもした。

 ところが先日母と電話した際、改めて「名前はどう?画数は?」と尋ねられることがあった。まさか念押しまでされるとは…!その場はうやむやにしたが、流石に無碍にするのもな、という気になってきた。

 姓名判断に限らず、占いの類は正直あまり信じていない。
 でも、せっかくなら画数の面でもいい名前を付けてあげたい、せめて凶のないようにしてあげたい、という気持ちは分かる。姓名判断の結果は信じていないけれど、信じている人がいる人が沢山いるのも事実。そんな世の中に送り出すのに、占いは信じてないから、と言って割り切るのも生まれてくる我が子に気の毒な思いがする。気もする。

 ということで、名付けの本は妻が実家に持って帰っていることもあり、週末に図書館に行ってきたのだった。

 画数のことを考えるなら、画数による吉凶がいかなる思想によって導かれるのかを知っておかなければと思い、まずは、日本の占術大全、みたいないかにもな本を開いてみた。
 結果、よく言われる姓名判断について、
・「五格剖象法」と呼ばれ、天格(祖先の運:姓の合計)、人格(中年以降の運:姓の下と名の上の合計)、地格(成人までの運:名の合計)、外格(人間関係や家庭の運:姓の上と名の下の合計)、総格(生涯通じての運:総画数の合計)を使うこと。
・数字には1~80くらいまでそれぞれに吉凶と意味が振られており、それに五格のそれぞれの画数を当てはめて吉凶を占うこと。
・画数に基づく吉凶に加えて、数字に割り振られた五行(木→火→土→金→水)の相性や陰陽を組み合わせて総合的な吉凶を占うこと。
・そして、この手法は、昭和初期頃に日本人によって(!!)確立され、普及していったこと。
が分かった。

 なんてことをしてくれたのだろうと思った。てっきり、「中国四千年の歴史」とまで言わなくても、もう少し歴史の長い占術なのかと思っていたが、思っていたよりもミーハーな感じだった。どうやら、表意文字を使う漢字文化圏の中でも、日本人の命名の自由度(姓・名のバリエーション)が高いがゆえに、日本において定着したらしい。
 十分由緒があるのかもしれないし、生み出すのに相当の苦労をされたのだろうと思う。実際、それなりの効果を上げているのかもしれないけれど、良い画数に躍起になる人を生み出し、名前の自由度に画数というタガをかけている現実は、まるで呪いのようだとも思う。占術を作るのはいいけど、わざわざ凶とか作らなくてもいいのに。本来気にしたくないのに、「画数の悪い名前にはしたくない」という消極的な理由で、付けたい名前を諦める親がどれほどいるだろうか。

最高の名前を

 占術の成り立ちについて知って多少の憤りを覚えた僕は、とはいえ本来の目的を達成するため、女の子のための名付けの本をいくつか手に取って読んでみた。姓名判断の法則に従えば、どのような画数の組み合わせの名前が候補になるか、それぞれの画数に当てはまる漢字のうち名前に使えそうなものがどれくらいあるかを書き出してみたりした。結局、3時間くらい滞在したところで疲れてしまって、機械的なリストアップ作業でその日は終わってしまった。(図書館からの帰りに妊娠31週記念のサーティワンアイスクリームを買って食べた。)

 やはり絶対画数が良い名前にしたい、とまでは思えないけれど、画数が良いに越したことはない、とも思う。いずれにしても、もうちょっと、じっくり考えてみて、夫婦二人の納得のいく素敵な名前を、生まれてくる子にプレゼントしてあげたいと思う。

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