御伽噺?

 可愛らしい表紙を開けば別世界。色んな女の子の物語が綴られている絵本。最初、どれだけ不幸でも最後には幸せになるそんな世界。ずっとずっと憧れていた私の夢はお姫様になる事だった。綺麗な服を着て好きな人と結ばれて、死ぬまで幸せに満ち溢れている生活に憧れていた。ところがどうだ、現実は。魔法も魔女も、王子様もいない。それ以前に可愛らしいお姫様とは程遠い醜い見た目と中身。白いドレスも宝石を散りばめたティアラも、花冠もガラスの靴もかぼちゃの馬車も。綺麗な声も雪のような肌もない。ない。どこにもない。だからきっと、毒林檎で死ぬ事はないし糸巻きの針に刺されて眠ることもない。塔の上に閉じ込められて髪の毛を手綱替わりにされたりもしない。空飛ぶ絨毯に乗って旅をすることだって出来ない。なんなら才能もセンスも何もかも、人が人として生きていく上で最低限のものだってなんもない。こんな世界で生きていくなんて到底出来るわけない。だから、早く死なせて欲しかった。あの雨の日、車に轢かれて死んだら良かったのに。ああ、でもさ、もしも死ぬ前に願いをなんでも叶えてくれるんだったらさ、薄桃色のドレスに身を包みたい。好きな人と遊園地でデートがしたい。人並みに恋をして、愛して、愛されて、普通に幸せになりたかったな。文字で人を魅了したかったし、音楽でご飯を食べていきたかった。写真も絵も、全部全部、好きなもの上手になって褒められたかったな。胸、張って生きていきたかったな。出来損ないの欠陥品が幸せを望んで生きていてごめんなさい。早めに死ぬからもう少しだけ待っていてね。

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