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備忘録 22-10-15

恩もし己より出でなば、怨みはただ誰にか帰せん

――恩若己出、怨将誰帰

『宋名臣言行録』

 宋(そう)代の名宰相に王曾(おうそう)という人物がいる。この人は宰相のポストにありながら、自分の息のかかった部下を一人も要職に抜擢しなかった。それを見て、ある人物が、
「人材の登用をはかるのは宰相たる者の責任です。あなたは、他の点では非の打ちどころのない宰相ぶりですが、こと人材の登用にかけては、いささか問題があると言わざるを得ません」
と皮肉ったところ、王曾は静かに答えたという。

「恩もし己より出でなば、怨みはただ誰にか帰せん」

人に恩を着せるのはいいが、では左遷される者の怨みは誰が引き受けてくれるのか、 といった意味であろう。

抜擢されて喜ぶ者が出れば、左遷、降格されて悲しむ者も出る。そこに私情がからめば、怨みの気持も生じてこよう。王曾のやり方も一つの見識であるかもしれない。

以上、「中国古典一日一言」(守屋洋)より

今日も一日がんばりましょう。

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