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で、結局ビットコインはなんで価値があったの?(無料note)

2017年から続いていた仮想通貨バブルが本格的に収束に向かい、アルトコインが軒並み大きく下落する中、現在ビットコインも最高値の240万円から86%安となる37万円台で推移しています。
一世を風靡した今回の仮想通貨バブルでしたが、そもそもなぜビットコインに価値があるのか?ただの電子データなんじゃないの?と思っている方も多いはず。この記事では仮想通貨に詳しくない方、仮想通貨は知っているけどなぜビットコインがもてはやされるのか知らない方向けに、なるべく中立的にビットコインの存在意義を考えていきます。

また、この記事を読んでご質問・ご指摘などあればぜひ下記のツイッターまでご連絡ください。簡単なものでも、良い質問だなと思ったものは積極的に追記させていただきます。

ビットコインとはなにか

「仮想通貨」「ビットコイン」…これらの言葉は同列に並べられることが多いです。でも、多くの人は漠然とデジタルでインターネッツなマネー…よくわかんないけどお金みたいなものじゃん?というふうに思っているのではないでしょうか。もしくは、送金手段としてのイメージ、詐欺や犯罪のイメージが強い方もいるかもしれません。

この記事では、ビットコインはユーザーすべてが合意した通貨のルールの集合という視点で話を勧めたいと思います。ビットコインの仕組みは知っている!という方も、これは新鮮な切り口に思えるかも知れません。詳しく見ていきましょう。

ビットコインというのは特別なプロトコル(ルール)を共有する人たちがソフトウェアを動かし、互いに情報を共有してチェックし合うことによって成り立っています。「田中さんが伊藤さんに3000円あげた」のような情報をみんなで確認しあって記録していくことで、誤って田中さんが同じ3000円を和田さんに支払うことや、そもそも支払いがなかったことにされることを防いだりします。

ここで重要なのは、参加者全員が同じルールに基づいてチェックし合うことです。ルールが違う参加者は、このプロセスに正常に参加できないので、フォークという方法で互換性のない独自の通貨に乗り換えることになります。赤信号で前進、青信号で停止、をしていたら総スカンを食らって、そういう人たちだけが住む街・あべこべタウンに移住するようなイメージです。

そしてこのルールには技術的なもの、たとえば通信するデータの構造に関わるものなどもありますが、通貨としてのルールも一定数存在するのです。

通貨のルール

そう、実は日本円や、それ以外の法定通貨にもルールが存在するのです。ルールなんかに合意した覚えはないけど?と思うのも無理はありません。なぜなら、法定通貨は基本的に住んでいる国のものを使いますし、保有することで暗黙的にそのルールに合意している実態があるからです。

例えば、日本円は正式には日本銀行券と言います。通貨としてのルールは、日銀の金融政策にその価値が影響されること、日本国内では強制通用力があるので支払手段として受け取り拒否することができないこと、などです。

少し難しい話になりましたが、要するに法定通貨は発行する者、管理する者によって定められたルールに影響されるということですね。そのルールも、透明性の高いものから透明性の低い(=柔軟性の高い)ものまであります。もちろん、経済政策をするためには柔軟性が必要ですからね。

ビットコインにもルールはありますが、柔軟性は一切ありません。平均して10分に1回、どこかでマイニングしている人が新しいビットコインを採掘するように自動的に調整されるので、発行ペースは定められています。発行上限も2100万枚と定められています。これらのルールに合意する人たちの間では、柔軟性はないけど透明性は非常に高く、信頼できる資産として見られているのです。

なぜビットコインは破壊的イノベーションなのか

世界にはおよそ200ヶ国あり、その多くが独自の通貨をもって経済政策を行っています。中には、独裁国家や、そうでなくとも無責任な政策が通貨の価値を毀損し、国民にツケがくる国もあります。記憶にはベネズエラなどが新しいですが、発展途上国には特にこのような国が多くあります。

ここに私の考えるビットコインの最大の価値があります。それは、ビットコインが既存の通貨と新しい角度で競争することです。

比較的安定している通貨をビットコインが完全に駆逐することはおそらくないと思います。なぜなら、柔軟性のないビットコインで現在主流の経済政策を行うことはできないからです。またその結果として、市場規模が大きくなれば少しは落ち着くかもしれませんが、柔軟性のなさが法定通貨との価格変動を生み続けるでしょう。

しかし、ルールの悪用がインフレを引き起こしたり、経済政策がうまくいかず通貨の価値が安定しない場合においては、ルールの透明性・確実性に信頼のおけるビットコインが現地の通貨に比べて好まれる場合が考えられると思います。

また、通貨の価値に対するリスクヘッジとして、ある程度のシェアを獲得する可能性もあると考えます。法定通貨と違い、いくつかのリスクがはるかに小さいからです。前述した、将来の金融政策の影響の不確実性などです。ただし、それらと引き換えに価格変動や誤送金・盗難などのリスクもあります。従って金融資産のリスクを分散するのに有効かもしれません。

さらに、通貨のデジタル化が進んだとき、徴税などの都合上、差し押さえ不可能なデジタル法定通貨が生まれるとは考えにくいです。すると、世界一信頼されている米ドルでも、アメリカに強硬派の政治家や大統領がいた場合に、その矛先が向けられた国や企業、富裕層が資産凍結を示唆されたり、実際に凍結されるリスクが生まれます。トランプ大統領のツイートが頻繁に市場を動かすのを見て分かる通り、非常に影響の大きくなる問題です。
そこでも凍結できないビットコインが見直されるのではないでしょうか。

余談ですが、「誰かの金融政策などに影響されない資産」というところに、デジタルゴールドというビットコインの別名がしっくりきます。

長期的にビットコインの価値が上昇を続けると予想する人は、この誰かの思惑に左右されない、透明性のある通貨にニーズがあり、富裕層に好まれたり、企業や国の準備金、金融資産のリスクヘッジなどとして価値の保存に使われる未来を思い描いているのです。また、中央管理者がおらず、技術的にも安定性が非常に高いビットコイン以外の仮想通貨がこの性質を持つことは非常に難しいと考えられます。つまり、ビットコインは送金技術でもありますが、通貨としての安定性・信頼性・独立性が一番の価値なのです。

ベネズエラの仮想通貨への態度について思うところはたくさんありますが、危機感を感じて禁止するか、むしろ積極的に取り入れるか、どっちが有利かゲーム理論で考えるとおもしろいですよ。もしビットコインの使用や保有が拡大したときにそれを禁止する国があれば、そこの法定通貨に対してなにか優位性があると市場も国も認めていることになります。

おわりに

約10年前に誕生したビットコインはまだまだ発展途上です。しかし、既存の通貨と競争しうる唯一無二の価値を提供する、非常に魅力的な可能性を秘めたものだと私は考えています。

ここまで読んでいただいてありがとうございます。この記事を読んで疑問に思ったことや、気になったこと、興味を持ったことなどがあれば是非ツイッターでリプライやDMをください。この記事の最後に編集で付け加えます。

追記(質問とコメントなど)

厳密にはこの記事へのリアクションではないですが、内容が近いので掲載させていただきます。やはり価値を通貨で測る以上、もれなく「価値」は兌換価値で測るものだと思います。ただ、「誰が何を言おうと使えなくならない」「ルールを勝手に変えられない」という2点の性質に価値(需要)があるとすると、その価値は保存されるのではないでしょうか。

批判的な感想ありがとうございます。サトシ・ナカモトがどういう思想でビットコインを提案したかは推測でしかわかりませんが、リーマンショックをもたらした責任の所在が不透明な金融の仕組み、という説もあります。いずれにせよ、世界中の多くの人に取引をチェック・保存してもらうことは非常にコストがかかるので、非中央集権的なブロックチェーンはマイクロペイメント向きではないという考え方が最近広まっています。厳密にはブロックチェーンではないが送金に特化した技術や、ビットコインを高速で決済するためのライトニングネットワークなどが開発されていますね。

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