散歩
日差しに色がついているならば、きっと柔らかい黄色だろうと思わせるような、暖かな風のない午後、二人で散歩に行こうかと、夫が私を誘った。珍しいことだ。これはきっと、何かあるはずだ。
心当たりは、あるのだった。
①上の子に塾通いをさせろ。手続きもやってくれ。早く本人を説得しろ。
②おれのこと、あんまり好きじゃないよね? 気付いていたよ。
③〇(私)はおれのことどう思っているのかわからないけれど、おれは〇のこと、好きだよ。
④〇は何か、おれに隠しているのかもしれない。それは、おれには言いたくないことなのかもしれない。まあ、強く聞き出そうとは思わないけれど、辛いことではあるなあ。
上記のどれかじゃないかと、ふんだ。
①を言われたら
はい、そうだね。まあ本人にまず、言ってみます。でも、行きたがらない人を行かせる労力と、行きたくないのに行く塾の意味を考えたら、微妙だよね。まあ、言うよ。言いまーす。
で、オーケー。
②を言われたら
いやいやいやいや、そんなことはない。そんなふうに思わせるような態度が私にあるのだとしたら、それはごめんなさい。でも、そんなことはないよ。
③を言われたら
あ、どうも、え、ありがとう。いやいや、知ってるよ。すごく知ってる。大丈夫。でもありがとう。
④を言われたら
なんだろ。隠していることはないよ。いや、厳密に言えばあるけれど、知ってもしょうがないような、たとえば、なんだ? まあ、すぐには思いつかないけれど、まあ、大丈夫。あるかなあ、どうだろう。
私は、いくつかの「反応」を携えて、いざ、散歩に外へ出た。
夫「ちょっと、ママと散歩に行ってくるよ」
子ら「はーい」
何を言われるんだろう。
結果は、①~④まで全部外れで、特に何もなかった。ただの散歩でした。たぶん、ただの散歩だったと、思う。
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