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夏小夏のおばあちゃんがお赤飯を持ってくる

夏小夏を送ってくれたおばあちゃんが、お赤飯を作って持ってきてくれた。私がお赤飯を好きだからと言って。

おばあちゃんは家を朝七時に出たらしい。お赤飯は、炊飯器二回分だと教えてくれた。手渡された紙袋は、ずっしりと重い。四角い、半透明の大きなタッパーに、お赤飯がつめられている。自分は朝ご飯として、食べてきたのだとおばあちゃんは言った。

おばあちゃんは、ごま塩もくれる。塩と白ごまを煎り、それをポチ袋に入れて、タッパーに貼り付けてくれる。

おばあちゃんに米寿の会で撮った記念写真を渡した。私が今まで謎だと思っていた、それぞれがどんな血縁関係なのかを、それぞれの人との思い出を添えて、話してくれた。

おばあちゃんは、いくつか洋服も持ってきてくれた。赤の洋服を買ったのだけれど、もう着ないからと。赤はきれいな赤で、私よりもおばあちゃんのほうが似合うと思った。そんなことを考えていたら、その洋服たちは、うちの子どもへのものらしく、勘違いをしていた私は、一人で笑ってしまった。確かにSサイズ。おばあちゃんは小柄だ。

「荷物が軽くていいね」
おばあちゃんはそう言って、帰り支度をした。ナイロンのサブバッグをくるくると丸めて、ショルダーバッグの中にしまった。
「途中で友達と会うの」
夕方までゆっくり遊ぶのだそうだ。

おばあちゃんを駅まで送る。見送る私たちに、おばあちゃんは振り向き、立ち止まり、しっかりと深くお辞儀をした。おばあちゃんは、淡いベージュの、春らしいコートを着ていた。

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