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kawaii高密度アクションパズル『スズとマリの冒険2』の感想

◆ 基本情報

タイトル:スズとマリの冒険2~lost colors and golden bells~
サークル:しあわせの国(Twitter
ジャンル:ステージクリア型アクションパズル
入手時期:2022/6/26 インディーゲームコネクト
バージョン:体験版

ゲーム画面①

◆ 概要

本作はサイドビューアクションパズルで、タイトルの通り『スズとマリの冒険』の続編となっている。
ゲームとしては極めてシンプルなジャンプアクションゲームであり、ステージ内の金色の鈴を取ればゴール。
最大の特徴は『憑依』のシステムで、これはステージ内で灰色になっているキャラクターに憑依することで、多用な能力を獲得でき、それらを駆使ししてステージのギミックを解いていく。

ゲーム画面②

◆ 良かった点

・明快なルール

「女の子を操作して鈴を取ったらクリア」
これだけにこのゲームルールが集約しているため、とてもわかりやすい。

・すぐにわかる操作性

ジャンプと憑依(解除)の2ボタンしか用いない構成のため、前作に比べる格段に遊びやすくなった。
前作は、憑依・能力・解除など行動の幅は広いものの操作体系に煩雑さが残ってしまい、誤入力が少なくなかった。
また、操作系を制限することで、できることも狭まり、パズルとしてもまとまりが出た。

・前作以上に丁寧なこだわりのパズル要素

本シリーズは丁寧なパズルデザインが非常に魅力の作品だ。
本作は前作以上に、このデザインが徹底され”なんとなく”では解けないパズルらしいパズルへと進化している。
体験版ではステージ1のみのため、比較的単純なスイッチングしかギミックがないため、淡泊にみえるが前作のバリエーションを考えると、これだけに収まらないことは容易に想像できる。
パズルを解くことが好きな人は十分に期待できるだろう。

・やりこみ要素と報酬

本作ではステージ中に銀のメダルが落ちており、これを全てのステージで収拾することで隠しステージを解放することができる。
この隠しステージがさらに一段上の難しさのパズルになっており、ちょっとやそっとでは攻略できない難解なものになっていて、パズル好きにはたまらないだろう。
前作にもこの要素はあったが、収拾してもこれといって追加要素がなく寂しい思いをしたが、今作ではしっかりと報酬が用意されており作品の全体のクオリティを向上させている。

ゲーム画面③

◆ 惜しかった点

・難しすぎるパズル

個人の所感としては、前作のラストステージのつづきかな?と思うほどにエリア1にしてはパズルの難度が高い。
基本的に1画面強で収まるサイズ感のステージだが、その密度・濃度がえげつないほどに高い。
アクションパズルだと思って、安易に挑むと1-3あたりからその洗礼を受けることは間違いないだろう。
そういう点では難易度曲線がとても急で、わかっている人、パズルが好きでリテラシーがある人向けのように思う。

・没個性になった憑依能力

これも前作との比較になるが、前作がアクションゲームに寄っていたのもありカービィのように多岐に富んでいた能力が非常にあっさりしたものになっていた。
現状は、
「足場になるヤツ」
「ジャンプ台になるヤツ」
「ハイジャンプできるヤツ」の3種類。
前作は、
「爆弾を出す」
「炎を吐く」
「滑空する」などなど
新しい敵が出るたびにワクワクできたのにたいして、こちらは淡泊さが際立ってしまっていた。
しかし、パズルギミックとして見た場合、無駄なくギミックとして存在価値のある手堅い仕様になっており、本作が何を重視して本作が作られているのかを考えると、プレイヤーが求めていたものとの食い違いに収まるだろう。

・アクション性の減少

何度か述べているが、本作は前作に比べるとパズル要素が突出しており、アクション要素はかなり抑えられている。
こうなると、アクション性はどこに必要だったのか?というアクションパズルによくある矛盾に発展しやすい。
本作も例にもれずその矛盾が内在しており、具体的に2つの要素が気になった。

① 本当にこれでよかったのか?という疑惑
パズルとしての設計レベルが高いため、アクション性のある解法によってクリアしてしまうと、それが正解だったのか?という疑惑がぬぐえなくなってしまうことがあった。
もしくは意図的に半ブロックずらしによる押し出しなどを使ってクリアできる場合もあり、こちらは意図的とはいえ、不完全燃焼感がかなり残る。
いずれも、アクション性よりもパズル性が強く押し出されている本作の傾向によるもので、アクション性、この場合はある程度のごり押しが利く場合には、そこまでこの違和感は強くは出なかったように思う。

② 手続き感
本作は操作しながら解法を見つけていくというよりは、解法を考えてから実践するというスタイルになりがちだ。となると、操作はすべて解法に至る手続きとなってしまい、作業感がとても強くなる。
このとき、ギリジャンプなどで足場を乗り越えられずにリセットなどが頻発するようなとき、かえってアクション性そのものがストレスになった。

・詰み状況の多さ

前作で私がとても評価してた部分として、そのステージ設計の妙があげられる。前作ではパズルながら、他の作品でよくある「リセット」がほぼ使う必要がないステージ設計になっていた。
詰みになる状況を徹底的に排除し、何度でもやり直せる、アクションゲームとの親和性の高いデザインが光り、本シリーズが他のパズルゲームにはない特に優れた部分としてとても評価していた。
しかし、続編である本作ではあっさりとその部分がなくなり、容易に詰み状況が発生するようになっていた。
むしろ、リセットすることありきの設計になっているため、その他多くのパズルゲームとなんら変わらないものになってしまっていた。

ゲーム画面④

◆ 総評

私自身の感想としては、残念ながら期待外れだったと言わざるを得ない。

この手のステージクリア型のアクションパズルゲームは多くの場合「逆算のレベルデザイン」を採用していると考える。
多くのユーザは問題に挑むとき、ゴールからの逆算によって、その解法を導き出すことになる。
そして多くの場合「詰み」という状況が発生し、ギミックをリセットすることで何度も挑戦するという構造だ。
前述のとおり、このスタイルのゲームではリセットを多用することで、揺らぎの多いアクション性が解決手続きの足を引っ張り、不要なストレスを生むことがある。

本作の前身である『スズとマリの冒険~the ghost of friend~』では、いわば「順算のレベルデザイン」といえるものであった。
目の前にある小さなパズル的課題に取り組み、それを積み重ねることで最終的にゴールにたどり着くというものだ。
これはステージクリア型のよくあるアクションゲームと同じ構造になっている。
前述の逆算式に比べると、1つ1つのパズルとしての規模は必然的に小粒になりがちで、全体のパズルとしてのまとまりも乏しくなるが、
詰みを排除したステージ設計も相乗的に作用してアクション要素が、大きな利点となる素晴らしいアクションパズルゲームとなっていた。

本作は順算から逆算に舵を切ったことで、ステージ全体で1つの問題とするパズルゲームとしてのまとまりが強くなったが、順算的アクション要素がそれに伴っておらず手間だけがかかる作業と化している。
たしかに、パズルとしての質は高く、私が見た中では屈指の難解さを小さなステージに凝縮しており、その点においては他を寄せ付けない個性かもしれない。
しかし言い方が悪いが、1つの作品としてみれば、その他多くのよくあるパズルゲームとなんら変わらない凡作という評価になった。

私にとっては、2と銘打っているが前作のほうが2と言われても遜色ないほどに、こじんまりとしており没個性的だった。
本作に対して何を求めていたのか、これが評価の分かれ目だろう。
決して駄作ではないことは自分もわかっているし、レベルの高いパズル性はそれを求めている人には正しく評価されるだろう。
しかし、スズマリシリーズとしてナンバリングされているものとして見ると、方向性に違いに落胆してしまう。
望むならこれは別のシリーズとして展開し、スズマリは前作の方針で続編が作られることを願ってやまない。

タイトル

◆ 体験版(Booth)

https://syawasekingdom.booth.pm/

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