「この子は吸える」息子に学んだ、1年2カ月の授乳生活~お母さんバトン 松田ゆかりさん執筆~
赤ちゃんの母乳吸啜メカニズムに倣う乳房ケア「BSケア®」に出会ってくれたお母さんたちの、出産と母乳育児の物語。お母さんの言葉で、綴っていただきます。
今回ご紹介するのは、助産師でもある松田ゆかりさんです。
待望の第1子!母乳育児への憧れ
令和4年6月29日。息子は元気よく生まれてきました。
待ちに待った息子の誕生!BSケアを学んできて、母乳育児への憧れ、母乳で育てたい気持ちを膨らませて始まった母乳育児。
「一番最初は私のおっぱいを吸わせて、何回も吸わせていって、できるだけ長く吸わせていけば母乳は出るようになる」その思いで始まった母乳育児でした。
頭でっかちの私。陥没乳頭もありましたが、息子は出産後から両方とも上手に吸ってくれました。しかし喜びは束の間。たった5㏄でしたが、哺乳瓶を使い始めたら左側の乳首に吸着することが難しくなりました。
思うようにいかない。でも、できることもあった
オープンシステムを利用していたので産後1日目に助産院に移動。
次の日、息子は尿回数が減り、体重減少も7%を超えてきたので、
ミルクをしっかり足すことになりました。
そうすると今度はミルクを20-30㏄飲むのに30分以上かかる息子。
思い描いていた母乳育児からかけ離れていき、ミルクの増加と共に遂には右の乳首にさえも吸い着かなくなりました。
次の朝、寺田先生からLINEが届きました。藁にもすがる思いでした。
3日間のことを先生に伝え、先生だけが頼りでした。
乳房は張らないし、分泌もにじむ程度。泣き叫ぶ状況は続き、吸う前には魔法のクチュクチュ(BSケア®のセルフケア)。とにかく少量でも搾乳をし、このような状況でできることを知っていた事は、私にとって救いでした。
ミルクはノルマのように増えていき、息子は1時間かけて哺乳。
合間で搾乳の繰り返し。哺乳瓶で飲ませる練習をしている自分に、息子の健康のためと言い聞かせましたが、「何をやっているんだろう」と現実を受け入れられませんでした。
「この子は吸える」という息子への信頼
持っている知識を総動員し、退院する頃にはミルクを飲んでから、
かろうじて右を吸ってくれるようになりました。
「退院してから自由にやってみていいよ」という助産師さんの言葉に、まずはミルクを減らすと息子はスムーズに母乳を飲むようになりました。
退院の日。寺田先生から連絡があり、オンラインで授乳の様子を見て下さいました。そして、その夜から遂に左右共に吸わせることができるようになりました。
先生の支えがなかったら私の母乳育児の始まりはどうなっていたんだろうと思います。左はまだ、うまくいったりいかなかったりという状況でした
が、「息子が吸える」ことがわかれば「この子は吸えるんだ」という息子への信頼も高まっていきました。
「飲まない」理由
離乳食が始まるまでは体重増加のプレッシャーもありました。
気持ちは母乳のみにしたかったですが、ミルクを減らすと体重が増えないのも不安で、成長曲線ギリギリのところで補足しました。
3か月目くらいにミルクを飲まないようにならないかと期待もしましたが、それどころか息子はだんだんと授乳を嫌がるようになっていきました。
空腹になるとまずはミルクを求める息子。そうなる前に授乳をするようにしましたが、遂にはのけぞって泣き始めました。ショックで涙が溢れました。
また出産直後の思いがこみ上げ、こうならないようにやってきたはずなのに・・・。搾乳しようと始めると、「なんか詰まってる?」。そのまま魔法のクチュクチュをしていると、乳栓が出てきました。そしたら、息子はまた飲んでくれるようになりました。
「命がけで教えてくれてるよ」私が以前先生から教えていただいたことを、今度は息子が私に教えてくれました。産後3カ月くらいにようやく左も吸えるようになっていき、授乳が落ち着いてできるようになりました。息子との授乳時間は楽しくて、幸せな時間となっていきました。
断乳の決断
そしたら今度は詰まり始めるおっぱい。ここから3か月くらいは数週間から毎日詰まる時期もありました。乳栓が詰まることがほとんどだったので、魔法のクチュクチュで何とか対応できましたが、ちょっと疲れてくる時もありました。でもそれも、仕事復帰をする1月頃にはだんだんと落ち着いていきました。
離乳食もよく食べて、9カ月には念願のミルクも卒業。
1歳が近づいてくると、寝てても服さえめくれば自分で吸って、アクロバティックに吸っている息子。かわいくて仕方なかったですが、今度は断乳との葛藤。
ギリギリまで悩みましたが私の年齢と第2子を考え、9月9日に断乳を迎えました。泣き叫ぶ息子に授乳の再開も考えましたが、凍結してあるいのちを破棄することも私にはできませんでした。
困った時に支えになる環境
今、授乳を終えて3週間経ちましたが、思い残すことはなく、楽しくて幸せな時間をくれた息子に感謝しかありません。
そして私の母乳育児生活の中にはいつもBSケアがあり、妊娠前から参加していた「母乳育児なんでも相談会」では心配なことを何度も相談することもできました。
寺田先生には本当に必要な時に助けていただいて、そしてBSの仲間も支えてくれました。BSケアに出会っていてよかった!!そして、もう1つ憧れていた寺田先生のBSケアを受けることもできました♡
実際詰まっていた時もありましたが、くすぐったいくらいでどこに触れているのか分からないくらい優しい。「これがBSケアか~。」「こんなに優しいタッチなんだ」と改めて実感しました。
1年2カ月色々教えてくれた息子、共に歩んでいただいたBSケア。
ほんとに私にとって大事な時間をいただいたなぁと思います。
★★2023年10月執筆★★
広報担当のコメント
BSケアを受けたお母さんの、出産と母乳育児の物語でした。
松田ゆかりさん、濃い体験を共有いただきありがとうございました。
どんな出産もどんな育児も、それはお母さんと赤ちゃん2人の特別な物語。
うまくいくことも、いかないことも、いつかは2人の大切な思い出になります。
でも、もし悩むときには、適切な支援を受けられるかどうかで、その後の選択が変わることがあります。今、母乳育児がうまくいっているお母さんも、難しさを感じているお母さんも、お母さんと赤ちゃん2人にとって良い選択ができるよう、赤ちゃんの母乳吸啜メカニズムに倣う乳房ケア「BSケア®」を行う助産師が寄り添えたら嬉しいです。
NPO法人BSケアは、育児の始まりが”幸せな思い”であることを願い、母乳育児支援者の育成と、BSケア®をお母さんに届ける活動をしています。
赤ちゃんの母乳吸啜に倣う乳房ケア「BSケア®」を学ぶ信頼できる助産師「BSケアプレゼンター®」が全国に100人以上います。困ったときには、お気軽に相談してみてくださいね。
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