【玉井詩織さんの舞台】熱海五郎一座「幕末ドラゴン」感想ノート〈番外編〉とにかく明るい前説
ももいろクローバーZの玉井詩織さんが見事な客演を果たした、熱海五郎一座「幕末ドラゴン~クセ強オンナと時をかけない男たち~」の千秋楽から早1か月。玉井さんは髪をバッサリ切って、ももクロ本体に戻り、結成15周年ツアーのセルフプロデュースという新たな挑戦に漕ぎ出した。「ももクロは今が一番面白い」。過去を振り返るのは無粋なことかもしれない。だけど最後にちょっとだけ付け足したい。抱腹絶倒の東京喜劇は前説からぶっ飛んでいた!ということを。
龍馬役と前説
「前説」とは、本番前に出てきて座を温める、客席を盛り上げるもののことらしい。これまであまり見たことがなかった。開演前から舞台に役者が出てる「0場」は見たことある。あれは初めて見たら焦る。「え?!もう始まってんの?!」って。早く席に着かせるためのものなのかな。
今回の前説担当は、お笑いコンビ「Take 2」のお二人。東MAXこと東貴博さんと深沢邦之さん。二人は交代制で坂本龍馬を演じると同時に、その日の前説も担当する。実は4回観劇したうち、たまたま4回とも東MAXだった。深沢さんの回は観れずじまい。
「とにかく明るい」前説
そう。思い返せば、初日、これをまず見させられたんだった。玉井詩織さんの舞台を観るために初めて熱海五郎一座を観に来て、なんなら新橋演舞場も初めて来て、仕事もサボって来て、完全アウェイの敵陣で心臓バグバクの中、まず見させられたのがコレ!
法学部で刑法を学ぶ「学生」こと東MAXが、舞台に出ては裸身を晒すという趣向。元ネタの「とにかく明るい安村」はそれほど知らなかったけど、とにかく、めちゃくちゃ笑った。見てるこっち側が恥ずかしくなるのがまた絶妙で、声を出して笑い飛ばすしかない作りになっている。忘れもしない、3回目を観に行った時。裸に見えるポーズのとこで、隣の人から「いや〜ん」という声が漏れた。生いや〜ん聞いたの、初めてかもしれない。
言ってみれば、パクリなわけだけど、言葉のアレンジが面白かった。
「安心して下さい。5分前です」
(背中にデカデカと「5」の文字。実は職人さんが毎回「薄くて破れにくいゴム」を素材にしたペイントを塗ってくれてたという後日談)
「安心して下さい。松竹の許諾は得ています」
(なぜかホッとする)
「安心して下さい。恥ずかしいのはこっちです」
(やっぱそうかと妙に納得)
ちょうど初日の直後くらいに、元ネタの安村がイギリスのテレビに出てバズったのはすごくタイムリーだった。熱海五郎一座、持ってるなと。「前説のことは決してSNSで呟かないで下さい」とおっしゃってた当のご本人がリツイートしていて、ズッコケた記憶。
速攻の伏線回収
このある種ぶっ飛んだ前説。本編にもガッツリ食い込んでくる。観劇ごとに気づいて、変に感心することになった。
東MAX/深沢は、本編では坂本龍馬を演じる。パンイチの人間が龍馬を演じるなど言語道断。ということで、「この前説のことは忘れて下さい。腹が立ちます」と予防線を張るのがまた面白い。でも、そんな舌の根も乾かぬうちに、幕が上がって直後すぐに龍馬が出てきてしまうため、前説を忘れるヒマがない!
〈1幕1場〉
本田屋で龍馬が妻のお龍に助けられ、暗殺を逃れるというシーン。お龍が風呂上がりに助けたというエピソードをもじって、龍馬が「裸?!」と驚くという。伏線回収、はやっ!
「安心して下さい」の罠
その後、たたみかけるように、「忘れて下さい」を忘れさせない仕掛けが続いていくのである。
〈1幕2場〉
公演前に五反田が辞めると困ると言うシルバーガイズに向けて
ーー土岐架のセリフ
「安心して下さい。公演はありません」
〈1幕3場〉
タイムスリップしてきた架とシルバーガイズに疑惑の目を向ける龍馬たちに向かって
ーー隣理のセリフ
「安心して下さい。われわれは敵ではありません」
〈1幕4場〉
ニセ新撰組に助けを求める幕末の町娘たちに向かって
ーー土岐架のセリフ
「お嬢さんたち、安心して下さい。彼ら新撰組はとっても強いですから」
忘れさせる気、全然ない。玉井詩織さんもお得意のテクニック「天丼」ってやつだな。本編あっての前説。Take2が勝手にパクったんじゃなく、ちゃんと脚本家が絡んで、計算して作ってると見てた。
前説を作ったのは誰?!
と感心してたところ、千秋楽の翌々日、この見立てが覆ってしまった。
東さん曰く、
って、東MAXが作ったんかーい?!笑
それにしてもよく出来てて面白かったな。毎回、周りのお客の反応も込みで笑わせてもらった。座を温める以上に本編にまで浸み出して、前座の域を超えていた。これこそ〈裸形の劇場〉だ!(わかる人にはわかる。というか、これ言いたかっただけ。笑)
最後に。息を飲むカーテンコールの玉井詩織さんの秀麗なドレスアップ姿を拝めるのは、ももクロのファンクラブサイトでもどこでもない、唯一、東さんのブログだけ。ありがとう東MAX!
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