🐤感想文
先日(3/23)新国立劇場で鑑賞したヴァーグナーオペラ:トリスタンとイゾルデのメモ
言い訳:
(予習とかもせず、鑑賞とプログラムに書いてある簡単な解説程度の知識をもとにしたフリーダム感想文です。またオペラグラスを所有していましたが、目が悪すぎて字幕が読めない時もありセリフもうろ覚えです。そもそも物語に複数のバリエーションがある上に原文ドイツ語も知らない人間の落とすメモだってことをご了承願いますよほんと)
印象的だった部分を幕ごとに
1)
-満月と水平線というなんとシンプルな背景。全体的に暗く単色ライトの変化で舞台の印象を変えるというコンテンポラリーな演出。ドキドキ
-死の薬と惚れ薬がすり替わっていて死の計画が失敗した時に最初にでたイゾルデ言葉が「生きなければいけないの?」と生に絶望するものだった。その後で二人でアツアツの愛言葉を投げ交わすお決まりの惚れ薬効果が表現されていた(気がする)。薬などなくとも両思いだったけれど、死の覚悟と薬の効果の相乗効果か、好きな気持ちが強すぎて自殺し直すどころではない雰囲気でしょう。苦しい一幕だった。
2)
-夜な夜な密会を繰り返す2人が星空の下で愛を交わす第二幕。円状に作られた星々(のライティング)を貫き、暗い天まで続いていく一本の高い塔。ロマンチック、そうそうこういうのがロマンチックってやつだよねってなる。しかし2人はひたすら死の世界への憧ればかり歌っている。ここで気に入ったのは太陽と光は憎たらしい生の象徴で、夜の闇が魅惑的な死の象徴として扱われてる点。(ちなみに私はつい最近まで太陽が鬱になってたり象徴的なエネルギーを失った様子を美術で表現していた)。目覚めたくない、そのためには生命の炎すら消す必要がある。まだ2人はラブラブタイムに夢中で第二幕では死なないが、死にたいのに抱き合ってたくてその溢れ出る気持ちがまた死に誘う、みたいな感じだろうか。やはりだんだんただのロマンチックなシーンというより、延々と自傷を見せられてうような気分にもなる。
-イゾルデ「わたしはトリスタンに」トリスタン「わたしはイゾルデに」
というようなシーンがあったと思う。そしてもう名前すらも捨てる。名付けると存在してしまうものね。世界と一体化するしそうすれば貴方とも一体化しますよね。こんな愛の歌あるんだ...
3)回帰
「母の故郷へ」いくことで生前=生の否定=死の世界へ帰ろうとしているという暗喩にしか思えなかった。
イゾルデが後を追うシーンでは、トリスタンの元へ倒れ込むのではなく、月と同じ色の真っ赤なドレスをひいて、舞台に浮かんだ真っ赤な月と並んで幕が降りる。なんかここでイゾルデの決意の高さが最初からトリスタンとは全然違かったよなあと思い出した。
トリスタン、最初は気持ちを隠して王にイゾルデを渡そうとすらしてたじゃないか。目も合わせずに。それに引き換えイゾルデは最初から死を覚悟し最初から自分の気持ちと向き合って彼を憎み愛してた。(なんかちょい優柔不断というか八方美人というか、彼みたいな主人公気質の人苦手だわ〜とか思ってしまった。)きっと恋が始まる前から彼女は強くて、故に女1人で元婚約者の仇を打とうと剣を振り上げることができたのだと思う。
(そんなに愛していた人を殺したっていうトリスタンを一瞬で愛しちゃうくらいの彼の眼差しってどんだけ魔力あったの?!?!とも思いました。)
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🎵
ヴァーグナーの音楽は、Appleミュージックで何回か‘教養’として聴いたけれど正直パッとしなくて好きじゃなかった。モーツァルトみたいな音のポロポロや、ラヴェル、プロコフィエフみたいなのが好みなので。
でもそういう音のポロポロじゃ世界に溶けるような愛はここまで描けないのかもしれない。生演奏で、トリスタンとイゾルデのストーリーと共に鑑賞できて、そう思った。
ここからは個人的な話になるが、恋人に殺されたいっていう発言をメンヘラとかいう人、恋したことないのかなって思う。恋人こそ自分の目の前で自分を想いながら死んで欲しいと思う。
自分は恋愛に関して、下手すると一生消えないトラウマがある。(皆さんのおかげでネタに昇華されつつあり、フラッシュバックのように思い返して泣くことは激減しました⭐︎)
自分の手で相手を殺すか、目の前で自殺して欲しいと思った。憎しみと愛は同じ色をしている。2つが核融合して太陽のように燃えるのが苦しい、いたい、殺してくれと思う。
...舞台演出と自分の経験を重ねてしまった。もちろんトリスタンとイゾルデのそれとは状況が違うからあくまで感想文の延長で妄想してみただけ。
(上記の欲求は今も少しだけ残っているが「まあ現実そんなの無理っしょ、どうせ相手はもう忘れてるゥ!」と冷静になれる。メンヘラを舐めるな)
ほぼ編集なし一気書きの感想文でした。
追記:最後のシーン、赤い月(太陽?)に真っ青なライトが当たってて、女王蜂『夜天』のジャケットを思わずにはいられなかった。
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