シェア
食用コカトリス 「地縛霊ですね」 現場を見渡し、依頼人に告げる。 視界の端ではヒトのような何かがふらりふらりと歩みを進め、屋上のへりへと向かっていくのが見える。ヒトのような何か、その、猫背の人のように見える黒いモヤは、フェンスの前にまでたどり着くとそこで一旦歩みを止めた。 新しいフェンスだ。針金がよれている様子もなく、塗られているライトグリーンの塗料も真新しい鮮やかな発色を見せていた。何の変哲もない綺麗なフェンス
鏡遊 20××年 ×月××日 これより最優先研究対象、仮称名、フォーリナー・タイプサード(以降、タイプサードと呼称)の発見経緯及び、それに伴った特記事項の機関本部への報告を行う。尚、この報告書が今後公に出る可能性を踏まえ、セキュリティクリアランスレベル4情報管理規定に則り、対象の現在位置を特定させる情報、年月日、主要参加研究員名、セクター名は伏せるものとする。 発見経緯 20××年、×月××日、××
烏兎 巴深 01 Case.未だ来ず ――結論から言ってしまえば、過去なんていうのは無駄。いくら追い求めても、未来みたいな無限の可能性なんて秘めていない。 丁度朝から昼になるその間に、一人の少女はベッドの上で目を覚ます。 高機能な電子機器の表面を、薄目を開けながら覗き込み、上へ下へとせわしなくスライドさせる。 一通り覗き込み、満足な情報を得られなかったのか。はあとため息をつきながら、彼女は――リーカ・ジートは――大きな伸