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#日記

日の目をみない手記

                                                               姫都 九一  三月十二日  紙に文字を書くこと事態が久しぶりな気がする。左の一文書くのにも、かれこれ一時間ぐらいは脳んで脳んで脳み抜いた結果、何の面白みもないありふれた一文しか書けなかった。分かっているとは思うけど、俺は文章を書くのが苦手だ。最後に日記って名の付く物を書いたのは確か、中学校の学級日誌だった気がする。日直に担当された生徒が、今日一日の

選択に惑え、原生生命

                                鏡遊    20××年 ×月××日  これより最優先研究対象、仮称名、フォーリナー・タイプサード(以降、タイプサードと呼称)の発見経緯及び、それに伴った特記事項の機関本部への報告を行う。尚、この報告書が今後公に出る可能性を踏まえ、セキュリティクリアランスレベル4情報管理規定に則り、対象の現在位置を特定させる情報、年月日、主要参加研究員名、セクター名は伏せるものとする。  発見経緯  20××年、×月××日、××

うっけつだいありー その二

 唸る空調の音でロビーは満たされています。外気の寒さを駆逐しようと躍起なのでしょう。とはいえ春の足音が近づくのは事実ですので、外の気温は10℃手前と言ったところでしょうか。東京では寒い日になるのでしょうが、ここでは、そうでもない日になるでしょうね。  空気が淀むように感じたので、私は他の部員に荷物番を任せて席を立ちました。立ち上がった私にビバレッジコーナーの店員さんが軽く会釈してきます。まるで「お疲れ様」と言ってくださっているようでしたので、私は開いていたテクストを閉じ、シャ