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ギターを弾くたび、ギターが嫌いになる(SHISHAMOとメンヘラの話など)

実家に引っ越してきてからはあまり音楽活動をしていない。
そもそも一人だからバンドはしばらくできていない。

だから昨日久しぶりにレゲエマスターを引っ張り出してきた。
この間のシロップのツアーで五十嵐が10年くらいぶりに使っているのを見かけて。

ギターケースから取り出してうっとりした。
いつも五十嵐隆と繋がっているもの。
それを私は手にしている。
悦びに溺れそうだった。

現実に引き戻されたのは一瞬だった。

何これ…なんで私こんなにギターが下手くそなの?
コード押さえてもバラバラの音がぐちゃぐちゃに混ざってるだけで、アルペジオをやろうものならそんな余裕はなくてニュアンスどころじゃない。
私の圧倒的技術不足でレゲエマスターらしい音を出すこともできない。
ストロークはいつもワンパターン。
弾き語りとしてもなんとか聴けるレベルですらない。

私は今年でもうギターを始めてから10年以上が経つ。
この長さでここまで下手くそな人はこの世で私以外にいないんじゃないかと思う。

練習量の問題じゃない。
練習の質の悪さと、そしてセンスがない。
一つ一つの繊細な音動きを「それっぽく」のクオリティーまで下げて怠っている。
だから荒々しい中身スッカスカのギターになる。

こんなことばかり続けてきた10年だったのかもしれない。

だからこそ、ギターを弾くたびにギターを嫌いになるんだ。
完全に宝の持ち腐れ、私よりももっと他の人に渡した方が適切に愛されると思う。

軽音楽部では、今思うとしょうもないし、当時はなんだそれとムカついていた文化があって、
「お前に〜はやれねえよ〜」って。
演奏技術のことじゃない。
その人の声やキャラや愛され方のことを言われている。
だから私は「お前がチャットモンチーを弾くなよ〜」と言われ続け、たった一曲を除いて他は一度も弾かなかった。
悪魔の言葉。
そう言われていると、そのうち自分はチャットモンチーを聴いていい女じゃないと思えてくる。
洗脳。
だから私は「SHISHAMO」の女子スリーピースコピーバンドを4年間やりました。

ところで私は「SHISHAMO」ってサイコーのロックバンドだと思ってるんです。

皆さんはSHISHAMOというとどの曲のイメージが強いですか?
僕に彼女ができたんだ?恋する?君と夏フェス?君とゲレンデ?明日も?サボテン?
メディア露出が強く世間でも比較的聴かれているのはこのあたりでしたよね。

ただ私は、
深夜のラジオ、彼女の日曜日、昼夜逆転、旅がえり、恋、きっとあの漫画のせい、あの娘の城、君の大事にしてるもの、忘れてやるもんか
このあたりが彼女たちの本領発揮が見られる曲だと思うんです。

メンヘラが聴きそうなアーティストと言えば(私はあまり共感してないけど)、椎名林檎、アート、鬼束ちひろ、Chara、ミオヤマザキ、さめざめ、Coccoだと思うんです。

だけど、私はこの実力派アーティストの方々よりも、「メンヘラの表現」に関してはSHISHAMOの一人勝ちだと思うんです。

私今日も思ってるよ あなたのことを あなたからの連絡を
だけど時間がもったいないなんて思えない
あなたを待ってる時間が好きだから
君は全部忘れてしまったの?
私の顔も私の名前も
全て忘れてあなたは毎晩23:00には寝てるの
ほらね私は今日も君のこと 忘れられそうもなくただ独り
朝日が来るのを待った後 夕方まで寝てる一日だよ
今も私があなたを思って泣いてるなんて思うの?
笑わせないでよ

あなたにされたひどいこと そんなの全部忘れたわ
あなたに言われたひどいこと そんなの全部忘れたわ
だけど涙が止まらないのは あの漫画の女の子が惨めで可哀想だから 私に似て可哀想だから
女の子を大切にできない男なんて 全員漏れなく死ねばいいのに
嘘ついたり隠したり 上手いことやろうとすんなよ
あんたの持ち物なんて 本当はこの世に一つもないよ

いや、強い!強過ぎる!

会いたい〜寂しい〜私は壊れた〜みたいなド直球の歌詞もいいんですけど、
女の子の恋愛感情をこんなにも赤裸々に生々しく表現する朝子の歌詞はとても魅力的。

いわゆるメンヘラが好きなアーティストって、ビジュアルやキャラまでちゃんと作り込まれていて、アーティストとしてその姿に憧れる女性が多かったと思うんです。

だけどSHISHAMOは違う。
どちらかと言うと、現代のごく普通の女の子の容姿やファッションをしていて、クラスの友達みたいな印象がある。
そんな彼女たちが、ゴリゴリに日本のオルタナロックに影響を受けたあまりにも尖った演奏に、SNSに書くポエムでも人に話す惚気でもない、誰もが心の中に一人で抱えてる言うのも憚られるような真っ黒な感情を乗せている。あんな可愛らしい朝子の声で歌われている。

一体このバンドはどうなってるんだ…

ちょっと冷めてる感じがするんですよね。
自分の恋愛のことなのに、どこか傍観者みたいに悟っていて、「あーあ、あーあ」ってぼんやり嘆いてる。
普段怒らない子が怒ったらすごく怖い、みたいな。

ちなみに、チャットモンチーはもう少し大人な恋愛を歌ってるイメージがあります。
私が子供だからなのか、音楽としては好きなのに、歌詞にハマりきれなかった。
もっとも、こちらはメンヘラ要素はないのかもしれない。ちゃんと自分のことを見つめているから、相手と向き合う気持ちが見える。

SHISHAMOは?
高校生〜20代前半の女性にはどストライクの等身大の歌詞という印象が強いです。
まだあまり相手と対話してない、向き合ってない。
内省的な恋愛をしているように感じます。
つまり精神的に自立し始めていて、意思が強い。
一度別れると決めたらもう絶対に別れるタイプの。

メンヘラアーティスト売りを一切してないからこそ、そんな可愛くてカッコいい彼女たちが、アルバムでは女の子たちの醜くて汚い感情を歌っている姿がとてもアンバランスで良い。

ちなみに私はaikoもSHISHAMO側だと思います。

さあそこの諸君!SHISHAMOで女の子の泥臭い感情を聴くのだ!

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