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結論:ブリティッシュな馬とのつきあい方とは
1年半、イギリスで62レッスン、スペインを含め10ヶ所で外乗をしてきました。
そして、イギリスでの馬との付き合い方が、日本のものと何が違うのかをテーマにここまで過ごしてきました。
そこで、私の中では、「とにかく褒める。罰しない。」と「できるだけ1日中食べていられるように」という2つが、日本とイギリスの馬とのつきあい方や、馬の様子の違いを決定づけているのではないかと考えました。
とにかく褒める。罰しない。
これは、大規模クラブのオンラインセミナーでもはっきりと聞きましたが、全体を通して徹底されているように感じました。
とにかくこちらの要求に応えてくれる度に、”Good boy/girl!”と言ったり肩を愛撫したりして馬を褒めます。
停止した時に褒めないと、「なんで褒めないの!?馬は機械じゃないのよ!」と注意する先生もいるくらいです。
犬のしつけ方の本にも書かれていましたが、何より人間への信頼が一番。
人間といることが楽しいと思える馬に育てていきます。
乗られる度に怒られたり痛い思いをしていては、乗られることが嫌になりますよね。
もっと言えば、例えば、初めて馬運車に乗る時に怒鳴られ、鞭で叩かれたら、馬は馬運車には絶対近づきたくない!と思うでしょう。
一方、馬運車に一歩近づく度に褒められた馬は、馬運車に乗るのは楽しいこととして認識するはずです。
そして、人間は叩いたり蹴ったり怒鳴ったりする存在だと思っていないので、根本的に人間に恐怖心や猜疑心を持っていないということは、反抗やキレるといったことをする必要がなくなるので、より安全な馬になるとも考えられます。
もちろん、子どもに「ほら!次は右だよ!」と大きくはっきりと声を掛けるように、強めに脚を使ったり鞭を使ったり、No!と言ったりすることはあります。
でも、痛みや恐怖、威圧感で言うことを聞かせようとする訳では決してありません。
馬の世話をしているのも女性がメインで、クラブによっては小学生から高校生くらいまでの女の子が主力となっています。
もし馬が力で押さえつけなければいけないものなのであれば、女の子じゃ無理で、男手が必要、ということになるでしょう。
もちろん噛み癖のある馬がいない訳ではないですが、その度ごとに叩いて怒ることはなく、女の子たちはみんな上手くいなしています。
ナチュラルホースマンシップなどでは、よくプレッシャー&リリースという言葉が使われますが、それよりは、アスク&リワード、つまり、「こうやってみたら?」と提案し、やってくれたら褒める、という繰り返しのように見えます。
また、馬のボスの話を聞いたとき、人間は馬の群れのボスにならなくてもいいのか?と聞いたところ、それはしなくていいと言われました。
人間の社会に例えると、ボスタイプの上司が好きな人もいれば、優しく寄り添ってくれる上司の方がやりやすい人もいて、ボスタイプでなければ上司になれないという訳ではないと思うのです。
ただ、このやり方について、今あなたが乗っている馬にこのようにすればいい、という訳ではないと思います。
生まれた時から常にプレッシャーを与えられたり怒られて育ってきていたら、そんなにすぐに人間っていい奴だとは思えないし、急に止めても、逆に危険になってしまうこともあるかもしれません。
その点は馬の様子を見ながら試してみていただくよう、お願いします。
そしてもう1つは、
できるだけ1日中食べていられるように。
馬たちが馬房の中でおとなしく過ごしていて、中に馬着がかけられていても、扉に鞍が掛けてあってもいたずらすることはあまりありません。
BHSのコースでは、最初に野生の馬は1日14~16時間食べているということを学びます。
そして、それと同じようになるべく1日中食べられるようにすることで、ストレスが減るということも教えられます。
そのために、なるべく長時間かけて食べられるように、ヘイネットを使ったり、飼い桶に網をかけたりします。
こうすることで馬房の中では食べていられる時間が長くなるので、暇な時間が少なくなり、いたずらしたりさく癖などといったストレスによる反応を起こさずに、落ち着いて過ごせるのだと思います。
私がこの1年半で、特に日英の違いに影響していると感じたのは、この2つですが、その他にも細かい気づきはたくさん。
例えば、反抗、重くなった、などはといった馬の異変を感じたら。まず体調不良、ケガを疑うこと。
脚への反抗は、胃潰瘍では?跳ねるのは、背中が痛いのでは?などと考え、獣医や装蹄師、馬の整体師などのアドバイスを仰ごう、ということです。
そこで無理やり言うことを聞かせようとしてしまうと、馬からしてみれば、人間は体調を気遣ってくれずに痛めつける恨むべき存在になってしまいます。
また、レッスン用の馬は、乗りながら育てていくという姿勢も感じました。
出来上がった馬にお客さんが乗って壊し、スタッフが再調教する、というのではなく、コーチが、馬が良くなるようにライダーに指導します。
この他にもロングレーンを使うなどといった方法もあるのだと思いますが、このようなやり方だから小さなポニーも大人が乗らなくてもお仕事ができるのではないかなと思いました。
こういった様子を見てきた今、スペインの馬術学校で見た馬たちが、なぜ苦しそうじゃなかったのか、わかった気がします。
あの子たちも、褒めて育てられているから、人と運動することが嫌いじゃないし、人のことを怖がったりしていなくて、上手くいって褒められたらうれしいと思っているのでしょう。
普段乗馬クラブの馬と接するだけでは、また、自馬を持っていたとしても、これらの実践はなかなか難しいのではないかと思います。
その馬に関わる誰かが威圧的な態度を取れば全て台無しになってしまいますし、乾草のあげ方も、なかなか個人の好きなようにはできない。。
究極的には、自分で馬を飼わないと、この方法を試してみるのは難しいなというのが、正直なところです。
このブリティッシュな馬とのつきあい方は、馬も人もハッピーになれる方法なのではないかと思います。
馬と人がより楽しく暮らしていくために、このようなつきあい方を目指す人が、1人でも増えてくれるといいなと思います。
読んでいただいた皆さん、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
これからは、この記事に思い出したことを加えたり、修正したりすることはあっても、今までのような騎乗日記のような書き方はしないつもりです。
もしまた、イギリスの乗馬に関する情報があれば、更新させていただきます。
この1年半、イギリスの様々なところで馬と、馬に関わる人達と出会うことができ、本当に多くのことを学ぶとともに、この馬とのつきあい方、根本的な、本当に大切なことを学ぶことができました。
馬だけでなく、他の動物や人とのつきあい方においても、きっと役立つことと思っています。
イギリスの馬たち、関わってくれた人たち、本当に、ありがとう!!