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【病院事務長の本音】病院経営コンサルに思うこと

 この記事は、決して病院経営コンサルタント(以下、コンサル)のすべてに対して、決めつけで苦言を呈しているわけではありません。しかし、どうも病院とミスマッチであることを自覚していない質の低いコンサルが存在することも事実です。ですから、コンサルの皆様は、以下の記事をわざわざお忙しい時間を割いてまで読む必要はありません。コンサル以外の読者さま(特に医療機関関係者の皆様)は、この記事に該当しない優良なコンサルもいるという認識と、質の低いコンサルとは付き合わないという覚悟を持っていただきたいと思います。

1.病院がコンサルに”求めること”はなにか

 病院がコンサルに求めるのは課題解決です。つまり、多数の課題の中から、優先順位の高い課題を的確に抽出し、課題解決の糸口を発見し、課題解決への道筋をつけて、病院運営を良い方向(増収・増益・体制確保・継続性確保等)へ向けてほしい、と期待します。

2.コンサルの”できること”とはなにか

 コンサルの”できること”は、病院の課題に適した解決手法の選択と導入および定着支援を行うことです。端的に言うと、コンサルは、病院運営の課題解決手法を商品としており、ビジネススキームは、課題解決手法の売りこみです。

3.病院が理解しておかなければいけないこと

 病院がコンサルに依頼する際に、知っておくべき基本的なことは・・・
① 課題解決手法を実践するのは、コンサルではなく病院スタッフである
② 課題解決手法を選択するのは病院になるが、選択までのプロセスはコンサルが有料で行う
(経営者・管理者・スタッフへのヒアリングや財務・業務等の実地調査等)
③ 課題解決手法は多数あるが、コンサルによって得手不得手があり、得意分野に誘導する傾向がある
④ 課題解決手法の導入と定着には時間と手間がかかるが、判走支援するコンサルは少ないか、あっても別サービスになる(プロジェクト管理支援という別のスキルが必要なため)

4.病院が注意しなければいけない点

 前述のように、合理的な解決の実現と継続を求める病院と、解決手法を売り込むコンサルの間ではギャップがあります。スタッフの体制づくりと目的的な推進が非常に重要であり、失敗の主たる原因になります。なので、(質の低い)コンサルは滞りや期待する効果が出ないことを院内体制のせいにしがちです。さらに、それを正すまたは避けるという名目で、管理者教育等の研修(当然、有料)を勧めてきます。囲い込んでがんじがらめにして、しっかり絞りとろうという魂胆です。

 また、解決手法の選択は、神の啓示ではありませんので、コンサルは病院が納得いくように、合理的な演繹的なプロセス(ヒアリング・調査)をもって、解決手法の提案を行います。が、全ての解決手法を合理的に正当な対価で提供できるコンサルはそうそういないので、提案される手法がコンサルの得意分野に、恣意的・帰納法的に選ばれている可能性も大いにあります。合理的・演繹的な手法とみせかけて、恣意的・帰納法的な結論に導く手法は(質の低い)コンサルの専売特許かもしれません。

5.では、コンサルを使わなければいいのか

 使わずにすめば、それに越したことはありませんが、目的的にコンサルを利用することで、首尾良く課題解決の道筋がつくこともあります。
 コンサルの活動範囲をコンサルの得意分野である経営戦略構築支援や経営者の意思決定支援に限って、あまり具体的な課題抽出や部署間・職種関間の調整には深く関わらせないことです。現場の業務ヒアリングや調査は報告書作成も含めてたんまり工数が稼げるのでコンサルはやりたがりますが、業務を理解している自分たちでやった方がはるかに正確に早くできます。せいぜい、結果から提案書と実行計画案を作成するところのみを、コンサルに依頼するのが合理的です。

 意識改革や課題解決の管理者向け研修も盛んに売り込んで来るでしょう。しかし、受けなくてもまったく大丈夫です。カリキュラム概要や報告書事例を採用を検討する名目で、コンサルに依頼してサービスで入手しましよう。該当する課題解決手法に関する書籍が大きな書店にたくさんならんでいますから、実際手にとってわかりやすいと思うものを購入してまわし読みしてください。それで事足ります。くれぐれも、お試しとか初期研修という言葉にのってはいけません。言葉巧みに、「ステップアップ」「エスカレーション」という名目で中長期カリキュラムに絡めとられまたもや絞りとられます。

 コンサルの専門性は上流にあります。病院経営の特性を理解していれば、そこそこ有効です、しかし、現場ヒアリングや調査及び管理者研修は一般的な企業向けメニューを医療現場に適用しているので、なぜ病院ではその課題が生じがちなのかを理解していないため、的外れになりがちです。
 結果、方向性はよいが、現場課題とはずれた進め方になり、しばらくすると現場が疲弊して立ち行かなくなります。その時点で引き受けざるを得ない事務長はたまったもんではありません。

 言い方を変えると、経営者をその気にさせるところまでだけ、コンサルの力を借ります。軒先までだけで、玄関から中には信頼できるようになるまでは入れないのが得策でしょう。

 ただし、(質の低い)コンサルに上流を任せると、経営陣に取り入りいろいろな手段で利を得ようとするリスクが生じます。医療法人は理事会や社員総会が名ばかりのワンマン体制が多いため、
(質の低い)コンサルの恰好の餌食です。文字通り「庇を貸して母屋をとられる」ことがないように慎重に行いましょう。



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