三笘加入で気になり始めたあなたに贈る、ブライトンの説明書 Part1

~はじめに~

note初執筆のじらをと申します。

今期プレミアリーグが開幕し、いつものようにブライトンの試合を中心に追いかけています。
ただ、今年は三笘ファンやブライトンファンの間にいくつか認識の違いや、要らぬ軋轢が生まれているのを目にしました。

・ブライトン決定力なさ過ぎて三笘かわいそう
・ベルギーリーグでちょっと活躍したぐらいの三笘がまだ出られるわけないだろ甘く見るな

といった意見がSNS上で散見され、それぞれ一理あるけどちょっと違うんだよなぁと思う事が増えました。
そこで、ブライトンファン歴4年目、かつONE FOUR KENGO THE MOVIEを劇場で人目を憚らず嗚咽して泣くぐらいにはフロンターレのファンでもある私から、僭越ながらブライトンの教科書として前後編の2パートに分けて整理をさせて頂こうと思いました。

ブライトンファンの三笘選手の理解や、三笘選手ファンのブライトン理解になれたら嬉しいなと思っています。
一応、説得力の役に立つかは分かりませんが、競技経験も都道府県選抜くらいはありますし、皆さんが知っているような代表選手クラスとの対戦経験もある人間です。

色々な批判やお叱りを受けるかもしれませんが、ブライトンのファンとして、一人でもブライトンを知る補助線のようになる記事になってくれたらファンとしてこれ以上の幸せは無いと考えています。
長文にはなりますが、三笘ファンがブライトンをより好きになり、ブライトンファンが更に三笘選手の可能性を信じてくれることを願っています。

1.何でもいいから結論だけ教えてくれ(時短したい人向け)

「ブライトンは世界トップの水準にある、攻撃的で近代戦術を駆使するクラブであり、ほぼ唯一現在の三笘選手がチームの核になり得るクラブである」
というのが、この記事で一番言いたい事です。

僕は三笘選手が持つ最大の特徴は、ドリブルではないと思っています。
彼の最大の特徴は、「どこにいればいいのか、どうプレーしたらいいかを選択し、得点に直結する働きをする能力が高い」事だと思っています。
ドリブルが上手く、決定力も高いと思っていますが、それらは全て武器の一つであり、彼の本質的な強みは、「あり得ないほど多くの首振りから生まれる論理的なプレー選択」だと思っています。

そしてその能力は、個としての打開能力が発揮されるカウンター主体のチームではなく、マイボールを大事にして、三笘選手の周囲に多くの選択肢がある攻撃主体のチームにこそ適していますし、三笘選手本人もそういった希望を持っていると思います。

また、現在のサッカーでは日に日に戦術の重要度は高まっており、試合中のシステム変更や個人タスクの変更は世界トップレベルでは当たり前になってきました。
三笘選手本人にとって最先端の個人戦術と組織戦術を学ぶ時間は必ず三笘選手自身のスケールを高める事になると思います。
また、マンCのウォーカー選手を筆頭に、マッチアップする相手も当然世界最高水準の選手であり、ブライトン内部でレギュラーを争うトロサール選手はプレミアリーグでも引き出しの多いチャンスメーカーとして定評があり、事実ブライトンの攻撃は彼の創造性から多くのものが生み出されています。
つまり、三笘選手が今後成長していく過程で必要なチャレンジ、成長が多く求められる環境と言えると思います。

加えて、ブライトンはいまだ育成重視のクラブです。
選手を買い、活躍させて価値を上げ、メガクラブに高額で売ることで潤沢とは言えませんが安定した収益を生むクラブになっていますし、移籍先を検討する優秀な若手選手にとっては、プレミアリーグでの出場機会とメガクラブ移籍の事例が多い有望な移籍先となっていると思います。

将来、三笘選手がプレミアリーグを代表するアタッカーにすらなれると僕は信じて疑わないのですが、対戦選手のレベル・チーム内での競争・活躍した際のステップアップの機会、様々な観点から見ても、彼が今所属する環境としてブライトンはこの上なく良質な機会・クラブであると僕は確信をしています。

2.ブライトンって強いクラブなの?

結論から言うと、リーグを代表する名監督が4年目のシーズンを迎え、いよいよ無名クラブから、メガクラブを除くと特筆して面白いサッカーを展開すると定評を得つつある、上昇気流に乗った急成長中のクラブと言えます。

プレミアリーグの在籍は6年目。
ポッター監督就任以降も15位→16位→9位と順位だけ見ると、目立たない中下位クラブという印象かと思います。

しかし、僕が主張したいのはその中身です。
ポッター監督がシーズン終盤の5月から指揮を執った19/20シーズン以降の主要スタッツをご覧ください。

Brightonテーブル

ご覧頂くと、いくつか気付く点があるかと思います。

1.チーム予算順位を上回る成果を上げ続けているチーム
2.ボール保持率も高い水準をキープ(昨年は4位!)
3.得点期待値の割に得点が出来ておらず、足を引っ張っている
4.失点期待値と失点数は例年リーグ上位
上記4点がブライトンというチームの特徴といえるでしょう。

弱小クラブの予算しかないにも関わらず、ボールを保持しながら高い守備力を持ち続け、チャンスは作るものの決めきれないチーム。
これがブライトンの実情と言えます。
昨期はこの取り組みの一つの成果として、依然として総得点は低いものの、9位という上半分の順位に入ることが出来ました。
道半ばながらも、現時点で充分に偉業と言っていい成果だと思います。

ブライトンは守れるし、ボールは持てる。チャンスはある程度作れるものの、得点だけ決められない。
そんなサッカーをしているのは理由があります。
その理由はシンプルです。

少予算でポゼッションサッカーをやるから、FWに割く金が無い。

ポゼッションサッカーはお金のかかる戦術です。
プレス耐性の低い選手、パスが苦手な選手が一人いるだけで、一瞬で失点をしてしまいます。

そのため、ほぼ全てのリーグにおける下位チームの定石は、9~10人の働き者による守備固め+大金で用意した点取り屋に数少ないチャンスをモノにしてもらうサッカーだと思います。

僕はこの傾向はダメだと思いません。
むしろ経済効率を考えるのであれば、妥当な選択です。

一方、ブライトンが展開しているサッカーはそういったものではありません。近年買ったレギュラークラスの選手を列挙してみましょう。

◇今年
エストゥピニャン(左SB)→18M€
エンシソ(ST)→12M€

◇去年
ムウェプ(CH)→23M€
ククレジャ(左SB)→18M€
ウンダヴ(CF)→8M€
三笘(左WG)→3M€

今期も昨期得点王放出したのに、センターフォワード全然お金かけないよ!!!笑

こういった、一見経済効率の低いサッカーをしている事は不利だと思います。
僕はその独自性・異常性からファンになりましたが、普通はそんな方針を取っても結果がついてきません。
サッカーではいくら試合を支配していても、結局得点と失点の勝負です。

ただ、ブライトンはそんな事お構いなしのように、マンチェスターシティ、リバプール、アーセナルといったボールポゼッション重視のメガクラブに対戦した際も、ブライトンは真っ向からボール保持を目指します。

その結果、「若手にも割とチャンスがある中下位のチームでありながら、ポゼッションを貫くプレミアリーグのチーム」という、この時点でほぼ唯一と言えるチームとなっています。

また、個の質では当然劣りながらも、経済的には効率の悪いポゼッションを貫き、世界最高峰のリーグで9位まで到達しているのは、偶然ではありません。

毎年サッカーの質を変えながら、シーズン中も離脱者や選手の調子に合わせたシステム・役割変更を行い、着実にシーズンごとにチーム強化に成功してきています。
ブライトンというクラブの成長は、ポリシー的には非効率に見える方針でも、ポゼッションを貫けるアイデアと知識があり、変化と成長を起こし続ける、ポッター監督の活躍によって実現していると思います。

と、想定よりも僕が長く書きすぎたので、前編はここまで。

後編では、
・ポッター監督はそんなにすごい監督なのか?
・ポッター監督が抜けたら弱くなるのか?
という部分を掘り下げて記載をしています。

後編のリンク先はこちらです。
楽しみにご覧ください。

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