荷主の知らないトラック運行の事実

国土交通省では、トラック輸送状況の実態調査を行いました(https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001409523.pdf)。ここからいいニュースと悪いニュースを紹介します。

いいニュースは「ドライバーの拘束時間が少し減った」ということです。悪いニュースは、「運送の委託者である荷主はドライバーの労働時間について基準があることすら知らなかった」ということです。

2015年にも同様の調査(https://www.mlit.go.jp/common/001128768.pdf)を行っているのですが、この調査で初めてデータとして実態が把握され、注目されたことの一つが「トラックの待機時間」です。

1運行あたり平均で1時間45分待機があったというのが2015年の結果。「1運行」とは、トラックが所属する営業所を出発してから戻るまでの間を言います。オフィスワーカーに例えれば、自分の会社を出発してお客さんの会社を訪ね、仕事をして会社に戻ってくるまでの時間ですね。

この調査結果では、「1運行」の長さも衝撃的でした。1運行あたりの拘束時間が平均で13時間を超えていたのです。客先に出かけて帰ってくるまでに毎日13時間を超えるなんて、オフィスワーカーとしたら“かなりブラック”と言われる状況ではないでしょうか。トラックドライバーとしても、原則として13時間を越えてはいけないという基準を超えてしまっており、“ブラック”な状態です。

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今回の調査で、ほんのわずかではありますが改善されていると思われました。平均拘束時間が13時間を下回り、12時間26分となったのです。

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トラック運行の中でもっともムダな時間といえるものが「待機時間」ですが、これは平均で「11分」しか短縮されていません。大きく短縮されたのが荷役時間で2015年調査では2時間44分であったのが1時間29分と、ほぼ半減されています。これには関係者の大変な努力があったと言ってよいでしょう。

ところで、2021年の調査結果で大いに問題と感じられたのが、荷主と運送事業者との間に大きな認識のズレがあったことです。たとえば、ドライバーの労働時間は上記のように違法スレスレなのですが、この事実は多くの荷主には知られていないようです。

ドライバーの労働時間は厚生労働大臣による「改善基準告示」に定められていますが、この告示について「存在も内容も知らない」という荷主が半数にものぼったのです。

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今後、ドライバー不足は益々深刻化することが確実です。法律を遵守すれば、もっと短時間しか働けなくなるドライバーも多いというのが実態です。「荷主」とは、運送の委託者のことを言うわけですが、荷主の方もこのような事実をよく知り、いざという時に自社の荷物が運べないということにならないよう、今から備えて頂きたいと思います。


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