毎日会社法を五条ずつ読んでみる:第五回_第十六条~第二十条


第十六条(通知義務)

第二節 会社の代理商
(通知義務)

第十六条 代理商(会社のためにその平常の事業の部類に属する取引の代理又は媒介をする者で、その会社の使用人でないものをいう。以下この節において同じ。)は、取引の代理又は媒介をしたときは、遅滞なく、会社に対して、その旨の通知を発しなければならない。

会社法 | e-Gov法令検索

 「会社の代理商」という節に入りました。「代理」と「媒介」の違いをまずは確認しましょう。「代理」は「取引を本人に代わって行うこと」、媒介は「取引の間を取り持とうとする」くらいの感じですかね。で、これをした場合は会社に「代理」or「媒介」したよ、と遅滞なく通知を発しないといけない。
 そりゃ、取引先から会社に「例の件で~」って話が来たときに「え?なんですか?」ってなったら困りますから、通知してもらわないと。

代理とは、本人と一定の関係にある他人が意思表示を行ない、その意思表示の効果が本人に帰属するという法制度である。
代理の本質は、代理権を持つ者(代理人)が存在し、その代理人が行なった行為の効果が本人に帰属することであると解釈されており、このことを「他人効」と呼ぶ。この他人効がなぜ発生するのかという理論的根拠については、「顕名説」と「代理権説」が対立している。(詳しくは他人効へ)。
代理が成立するためには、本人と他人との間に一定の関係が存在することが必要であり、このとき他人は「代理権」を持つものとされており、このような他人を「代理人」と呼ぶ。
また代理において、行為の主体が本人であるのか、それとも代理人であるのかについて学説が分かれており、通説は代理人が行為主体であると考えている(代理人行為説)。

代理(民法における)とは | 不動産用語集 | みずほ不動産販売

私法上の概念で、他人間の契約等法律行為の成立に向けて行う事実行為をいう。代理や取次と違って、法律行為ではないとされる。

媒介とは | 不動産用語集 | みずほ不動産販売

私法上の概念で、自己の名をもって、他人のために(経済的な効果が他人に帰属するように)法律行為をなすことを引き受ける行為をいう。商行為の一つで、問屋(物品の売買を行なう)や運送取扱人(物品の運搬を行なう)はこれに該当する。また、取次契約は役務提供型契約である。

取次とは | 不動産用語集 | みずほ不動産販売

第十七条(代理商の競業の禁止)

(代理商の競業の禁止)
第十七条
 代理商は、会社の許可を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。
一 自己又は第三者のために会社の事業の部類に属する取引をすること。
二 会社の事業と同種の事業を行う他の会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。
2 代理商が前項の規定に違反して同項第一号に掲げる行為をしたときは、当該行為によって代理商又は第三者が得た利益の額は、会社に生じた損害の額と推定する。

前述「会社法 | e-Gov法令検索」

 無断で、複数の同種の事業の会社の代理商になったらいけないよってことですね。もし私が代理商で、勝手に複数の同種事業他社の代理商をやっていたら、同種事業他社もしくは自分(代理商)が利益を得たら、それは別の会社からしたら損害です。

第十八条(通知を受ける権限)

(通知を受ける権限)
第十八条 物品の販売又はその媒介の委託を受けた代理商は、商法(明治三十二年法律第四十八号)第五百二十六条第二項の通知その他の売買に関する通知を受ける権限を有する。

同上

 商法が出てきてしまったので、確認します。「売買の目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないこと」の通知、つまり、売ったものの種類が違ったり、品質が説明と違ったり、数が多かったり少なかったりして「契約とちゃうやんけ」という買主からの通知を代理商は受ける権限を有する、と。
 あー、オフィスソフトのライセンスとか、直接MS社からじゃなくて代理店から買ってたけど、たしかになんかあったときはMS社じゃなくて代理店に連絡してました。

(買主による目的物の検査及び通知)
第五百二十六条
 商人間の売買において、買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査しなければならない。
 前項に規定する場合において、買主は、同項の規定による検査により売買の目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないことを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、その不適合を理由とする履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。売買の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないことを直ちに発見することができない場合において、買主が六箇月以内にその不適合を発見したときも、同様とする。
3 前項の規定は、売買の目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないことにつき売主が悪意であった場合には、適用しない。

商法 | e-Gov法令検索

第十九条(契約の解除)

(契約の解除)
第十九条
 会社及び代理商は、契約の期間を定めなかったときは、二箇月前までに予告し、その契約を解除することができる。
2 前項の規定にかかわらず、やむを得ない事由があるときは、会社及び代理商は、いつでもその契約を解除することができる。

前述「会社法 | e-Gov法令検索」

 契約期間を決めてなかったら、二箇月前までに予告すれば、会社からでも代理商側からでも契約が解除できます、でもやむをえない事由があればいつでもOK。へー。

第二十条(代理商の留置権)

(代理商の留置権)
第二十条
 代理商は、取引の代理又は媒介をしたことによって生じた債権の弁済期が到来しているときは、その弁済を受けるまでは、会社のために当該代理商が占有する物又は有価証券を留置することができる。ただし、当事者が別段の意思表示をしたときは、この限りでない。

同上

 取引の代理又は媒介の手間賃をもらうはずなのにまだもらってない場合は、会社から代理又は媒介のために預かっているものを留置できる。でも、しなくてもいい、って感じかな。

まとめ

 会社の代わりに取引をしたり(代理)、取引の紹介を行ったり(媒介)する人/会社=代理商。代理商は代理・媒介をした場合、すぐに会社に報告しないといけない。勝手に同業他社の代理商になったり、役員になったらだめ。代理・媒介した取引の取引先からの通知をうける権限があるよ(受けられちゃうよ)。会社と代理商との代理・媒介の契約は、期間を定めていない場合は二箇月前に言えば解除できるけど、やむを得ない事情があれば即解除できるよ。会社が手数料を出し渋ったら、取引のために預かっているものを留め置いてもいいよ、でも返してもいいけど。 みたいな感じですかね。

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