毎日会社法を五条ずつ読んでみる:第十九回_第百二条~第百三条

 今回は区切りの都合で二条(「の二」があるので実質三条)のみ。でも長い……。


第百二条(設立手続等の特則)

第七款 設立手続等の特則等
(設立手続等の特則)
第百二条
 設立時募集株式の引受人は、発起人が定めた時間内は、いつでも、第三十一条第二項各号に掲げる請求をすることができる。ただし、同項第二号又は第四号に掲げる請求をするには、発起人の定めた費用を支払わなければならない。
2 設立時募集株式の引受人は、株式会社の成立の時に、第六十三条第一項の規定による払込みを行った設立時発行株式の株主となる。
3 設立時募集株式の引受人は、第六十三条第一項の規定による払込みを仮装した場合には、次条第一項又は第百三条第二項の規定による支払がされた後でなければ、払込みを仮装した設立時発行株式について、設立時株主及び株主の権利を行使することができない。
4 前項の設立時発行株式又はその株主となる権利を譲り受けた者は、当該設立時発行株式についての設立時株主及び株主の権利を行使することができる。ただし、その者に悪意又は重大な過失があるときは、この限りでない。
5 民法第九十三条第一項ただし書及び第九十四条第一項の規定は、設立時募集株式の引受けの申込み及び割当て並びに第六十一条の契約に係る意思表示については、適用しない。
6 設立時募集株式の引受人は、株式会社の成立後又は創立総会若しくは種類創立総会においてその議決権を行使した後は、錯誤、詐欺又は強迫を理由として設立時発行株式の引受けの取消しをすることができない。

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 設立時募集株式の引受人は、書面で作成された定款の閲覧の請求、謄本・抄本の交付の請求、データの場合は閲覧もしくは書面での交付の請求ができる。謄本は全部、抄本は一部ですね。
 引受人は会社の成立時に株主になれる。それまでは株主じゃない、と。仮装した場合は、このあと見る条項に規定された支払をした後じゃないと権利の行使ができない。仮装した払込による設立時株式・株主になる権利を譲り受けた人は、権利を行使できるけど、悪意又は重過失があるときはダメ。
 設立時募集株式の引受けの申し込み・割当、設立時募集株式を全部引き受ける契約は、相手(発起人)が申込者が真意でないことを知っていても有効。共同した虚偽表示も有効。
 会社成立後、創立総会等での議決権行使後、詐欺や脅迫を理由に引受けを取り消せない。権利行使しちゃってますからね……。

第三十一条 発起人(株式会社の成立後にあっては、当該株式会社)は、定款を発起人が定めた場所(株式会社の成立後にあっては、その本店及び支店)に備え置かなければならない。
2 発起人(株式会社の成立後にあっては、その株主及び債権者)は、発起人が定めた時間(株式会社の成立後にあっては、その営業時間)内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。ただし、第二号又は第四号に掲げる請求をするには、発起人(株式会社の成立後にあっては、当該株式会社)の定めた費用を支払わなければならない。
一 定款が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧の請求
二 前号の書面の謄本又は抄本の交付の請求
三 定款が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求
四 前号の電磁的記録に記録された事項を電磁的方法であって発起人(株式会社の成立後にあっては、当該株式会社)の定めたものにより提供することの請求又はその事項を記載した書面の交付の請求

同上

(設立時募集株式の払込金額の払込み)
第六十三条 設立時募集株式の引受人は、第五十八条第一項第三号の期日又は同号の期間内に、発起人が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所において、それぞれの設立時募集株式の払込金額の全額の払込みを行わなければならない。

同上

(心裡り留保)
第九十三条 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
2 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
(虚偽表示)
第九十四条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

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(設立時募集株式の申込み及び割当てに関する特則)
第六十一条 前二条の規定は、設立時募集株式を引き受けようとする者がその総数の引受けを行う契約を締結する場合には、適用しない。

前述「会社法」

第百二条の二(払込みを仮装した設立時募集株式の引受人の責任)

(払込みを仮装した設立時募集株式の引受人の責任)
第百二条の二
 設立時募集株式の引受人は、前条第三項に規定する場合には、株式会社に対し、払込みを仮装した払込金額の全額の支払をする義務を負う。
2 前項の規定により設立時募集株式の引受人の負う義務は、総株主の同意がなければ、免除することができない。

同上

 払込を仮装した引受人は、株式会社にその全額を支払う義務を負う。総株主の同意があれば免除できる。できる、というか、総株主が同意しないと免除されない。まあ、当たり前な感じ。

第百三条(発起人の責任)

(発起人の責任等)
第百三条
 第五十七条第一項の募集をした場合における第五十二条第二項の規定の適用については、同項中「次に」とあるのは、「第一号に」とする。
2 第百二条第三項に規定する場合には、払込みを仮装することに関与した発起人又は設立時取締役として法務省令で定める者は、株式会社に対し、前条第一項の引受人と連帯して、同項に規定する支払をする義務を負う。ただし、その者(当該払込みを仮装したものを除く。)がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。
3 前項の規定により発起人又は設立時取締役の負う義務は、総株主の同意がなければ、免除することができない。
4 第五十七条第一項の募集をした場合において、当該募集の広告その他当該募集に関する書面又は電磁的記録に自己の氏名又は名称及び株式会社の設立を賛助する旨を記載し、又は記録することを承諾した者(発起人を除く。)は、発起人とみなして、前節及び前三項の規定を適用する。

同上

 設立時発行株式の引受人を募集する場合、株式会社が成立したときに現物出資財産等の価額が定款に記載・記録された価額より著しく低いときに、発起人は、裁判所が選任した検査人の検査があった場合を除いて、会社に対して不足額を支払う義務を負う(募集しない場合は、怠慢がないことの証明で義務を負わないことも)。
 払込の仮装に関与した取締役は、引受人と連帯責任だけど、職務の執行に注意をおこたらなかったことを証明すればセーフ。連帯責任は総株主の同意がなければ免除できない。
 設立時発行株式の引受人を募集する場合に、広告等に氏名や名称と設立に賛同する旨を記載・掲載することを承諾した発起人以外の人は、上記の規定が適用される。……芸能人とかが設立時発行株式の広告をした場合には変な責任を負いかねないってことか。

(設立時発行株式を引き受ける者の募集)
第五十七条 発起人は、この款の定めるところにより、設立時発行株式を引き受ける者の募集をする旨を定めることができる。

同上

(出資された財産等の価額が不足する場合の責任)
第五十二条 株式会社の成立の時における現物出資財産等の価額が当該現物出資財産等について定款に記載され、又は記録された価額(定款の変更があった場合にあっては、変更後の価額)に著しく不足するときは、発起人及び設立時取締役は、当該株式会社に対し、連帯して、当該不足額を支払う義務を負う。
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、発起人(第二十八条第一号の財産を給付した者又は同条第二号の財産の譲渡人を除く。第二号において同じ。)及び設立時取締役は、現物出資財産等について同項の義務を負わない。
一 第二十八条第一号又は第二号に掲げる事項について第三十三条第二項の検査役の調査を経た場合
二 当該発起人又は設立時取締役がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合

同上

(定款の記載又は記録事項に関する検査役の選任)
第三十三条 発起人は、定款に第二十八条各号に掲げる事項についての記載又は記録があるときは、第三十条第一項の公証人の認証の後遅滞なく、当該事項を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをしなければならない。
2 前項の申立てがあった場合には、裁判所は、これを不適法として却下する場合を除き、検査役を選任しなければならない。

同上

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