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よちよちある記#463『猫のお告げは樹の下で』

またひとつ
好きな作品が増えた

『猫のお告げは樹の下で』青山美智子

裏表紙に描かれた紹介文より

ふと立ち寄った神社で出会った、お尻に星のマークがついた猫ーーミクジの葉っぱの「お告げ」が導く、7つのやさしい物語。

この文章のまんまの
やさしい物語だったな〜

苦悩や葛藤や迷いや焦燥や
いろんな感情を経てるからこそ
人は強くなっていく
何もない平坦な道には
きっと心を打つような景色は
ないんじゃないか…?

7つそれぞれに良かったけれど
特に心が震えた物語
就職活動をする大学生の主人公
彼の心の揺れ具合がよくわかる

ーーー以下引用ーーー

僕は。
僕はずっと、どこへ行けばいいのかわからないって思っていた。何を選べばいいのか、何を決めればいいのか。先にある終着点だけを探していた。でも、それよりも前に、もっとわかっていないことがあった。
まず知るべきは、目的地じゃない。
現在地だったんだーーー。

ーーー

内定確定だ。志望動機すら聞かれていないのに。僕のほうにはそれを断る理由なんかない。
でも、なんだろう。ざわざわした違和感がおさまらなかった。
これでいいのかなって、そう思うなら、いいわけないんじゃないかって気がした。
「あの…社長は、どうしてこの会社を設立したんですか」
僕が尋ねると、社長はほんの一瞬だけ宙を
見て、そしてなつかしそうに話し出した。
「高校のとき、親とケンカして、家出したことがあってね」
「家出?」
「そう。勢いだけで飛び出しちゃったから行くところなくて、公園で寝た。一晩でもしんどかったよ。人は建物がないと生きられないんだと、改めて感動した。建物はどんなものも、それぞれ素敵だ。でもあいにく、僕は建築士には向いていなかったみたいでね」
社長は少しだけ自嘲気味に言い、そのあとすぐ、どこか勇ましくほほえんだ。
「だけど、建物を作り出すことはできなくても、求めている人たちに案内することはできる。そこで暮らす人に安心を与えられる建物をね。作る人ばかりじゃなくて、伝える人もいないとだめだ。ガイドもすごく重要な役で、きっと僕にはそのほうが合っている。それが、僕がこの仕事を愛して会社を設立した理由です」
なんだか、がつんときた。幸福と自信に満たされた笑顔だった。この人がここまで大切な想いで経営してきた会社に、こんないい加減な僕が入っていいんだろうか。
僕にとって、仕事って?就職って?僕は何がしたい?何ができる?

ーーー引用終わりーーー

この社長の想いに触れて
ぐっときてしまい

結局この主人公は
この社長さんの会社には
内定辞退を申し出ちゃうんだけど

このあとに続く展開が
これまたすごく良くて
ひと目のあるところなのに
思わず涙が溢れてしまい…

50ページに満たない話の中で
物語の大きな世界が広がっている

今の自分だから受け取れる
ってこともあるんだよなぁ…

人とのご縁と同じように
本とのご縁ってのもきっとあるな

“流れのままに”
“なんとなく”
その感覚を大事にしつつ
日々を過ごそう

今日もいい1日✨

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