カルダー展
8月14日、カルダー展に行くために、道順を調べました。ついでにGoogleの口コミを何気なく見たのですが、うーん、あまり評判良くない感じです。
ギャラリーの広さに対して入場料が高すぎる、とか、モビール作品なのに動かない、とか、係員が多すぎて、常に監視されてるみたいとか。
実際に行ってみて、私が感じた事を綴ります。
1940年代から1970年代のカルダー作品が展示されているということでした。
ということは、ですよ。ここに展示されている作品群は、実はとても古いものなんですよね。一番新しくて1970年代、私(50代)が生まれた頃の作品たちなんです。50年は経っている訳です。そうは見えないのは、作品の現代的な感覚のせいですね。
あくまで私の推測ですが、もともとの作品が繊細な作りであって、経年劣化で壊れやすいうえ、会場が狭めなので、万一鑑賞者が接触などして壊れてしまったら大変!…ということで、管理体制強めになっているんじゃないでしょうか。
モビール作品は、空気の流れのなかで動いていて欲しいのは確かなのですが、紐、切れたら大変だから、そうしていないのかもしれません。入り口で、息を吹きかけたりして動かそうとしないでね、という注意もありました。
話が逸れますが、現代美術の作品には、「指示書」によって作品が成り立つ、というものがあります。
コンセプチュアル・アートの世界では、2019年、マウリツィオ・カラテンというイタリアのアーティストが、壁にバナナを銀色のダクトテープ(ガムテープのようなもの)で貼り付けただけの作品が、1600万円で売れたという話があります。ニュースになっていましたね。
この場合、作品の購入者は何に対してお金を払うのか。
バナナ、何日か経ったら腐っちゃいますし。別のアーティストに食べられちゃったりもしたようですし。
この場合、バナナをどんな壁に、どの位置に、どんな角度で、どのようなテープを使って、どうやって貼り付けるのか、といったことを書いてある、アーティスト作成による指示書を購入することになるそうです。
その指示書があれば、アーティスト公認で、作品を再現できると言うことですね。
カルダーのモビール作品にもそんな指示書があるとよかったかもしれません。実はあるのかもしれませんが。でも、あったとしたら、かなり詳細な設計図が必要になりそうですけどね。紐が切れたり、針金が曲がったりしても、指示書をもとに再現すれば、それはそのアーティストの本物の作品である、ということになりますよね。
カルダーさんは1976年に亡くなっているそうです。再現や修理がなされていないとしたら、ちょっと力を加えたら曲がってしまいそうな針金や、経年劣化で切れてしまいそうな紐なんかが使われている作品、今までどうやって保管されていたのでしょうか。
口コミ通り、たくさんいらっしゃるスタッフさんに質問してみればよかったです。いつもそういうこと、後から気づくんですよね。
今回の展覧会では、作品そのものも、とても良かったのですが、そんなことを考えて少し楽しくなっていました。美術展の運営の皆様にも、そのご苦労に感謝の気持ちを表明したいです。
アレクサンダー・カルダーを知ったのは、やっぱり高校時代の美術の教科書でした。(資料集だったかもしれません)
教科書では現代美術のページに紹介されていたと思います。今回の展覧会で知ったのは、モンドリアンと親交があったことです。その時代の方なんだなという驚きがありました。
というのも、作品がとても洗練されていて、シンプルなイメージなので、もっと最近の人のような感覚を、勝手にもってしまっていたのですね。
この感覚は、見に来ている皆さん、同感していただける方、多いのではないかと思います。
今では一般的に使われている「モビール」という言葉は、彼の作品から、マルセル・デュシャンによって生まれた言葉なんだということも、初めて知りました。
写真などで知っていただけのカルダー作品でしたが、本物を観ることができ、絵画作品や鉄の彫刻作品もあることを知りました。
おもしろかったです。
2024年のお盆休み、今年も東京の美術展を観ただけで終わりそうですが、楽しいから良いのです。
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