朱く林檎の色付く頃に

春の儚い朝日の中で
オルゴールは歌います
 
林檎の白い花が咲き
春風に散らされました
 
オルゴールは泡沫の歌を紡ぎました
 
白い花びらが
地面に落ちて踏まれました
 
春漏は静かに時を刻み続けます
 
 
秋の淡い夕陽の中で
オルゴールは語ります
 
熟れた林檎の実が樹から堕ちて
地面で腐りました
 
オルゴールは唄います
それは遥か昔の冷たい冽たい子守唄
 
籠の中の鳥は穹を見上げ
花影の弧蝶は夢から目覚め
 
秋風は全てを揺らしました
 
朱く林檎の色付く頃に
唯ただ漂う幻を見る


2008年10月作

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