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『一月の声に歓びを刻め』から学ぶー三島監督×エリックゼミの対話ー

2023年12月7日(木)に青山学院大学 相模原キャンパスにて、三島有紀子監督作 映画『一月の声に歓びを刻め』の鑑賞会と三島監督×エリックゼミ生によるディスカッションが行われました。

エリックゼミでは、青山学院大学 地球社会共生学部 学部長 松永エリック・匡史教授のもと学生それぞれが興味を抱く分野の社会課題解決に向け、事業構想策定を目指して活動しています。学生内に留まらず、様々な分野を牽引する社会人や企業の方々など外部との関わりを通じ、柔軟な発想を生み出していきたいという思いもあり、この度さまざまな方のご協力を得て三島有紀子監督にお越しいただきました。

三島有紀子監督は、18歳からインディーズ映画を撮り始め、大学卒業後には市井の人々を追う人間ドキュメンタリーの数多くを企画・監督されて来ました。劇映画を撮るために独立しフリーの助監督として活動された後には、オリジナル脚本・監督として数々の代表作を発表されました。最新作『一月の声に歓びを刻め』は、三島監督の強い気持ちで自主映画から製作がスタートしたオリジナル企画で、自身が47年間向き合い続ける「性暴力と心の傷」をテーマに、製作されたヒューマンドラマ映画です。

2024年2月9日(金)全国公開『一月の声に歓びを刻め』

性暴力は被害者本人だけでなく、被害者の家族にまで深い心の傷を残します。何気ない日常を突如として一変させ、人から笑顔や喜び、幸せを奪います。誰にも事実を打ち明けることが出来ず、自ら命を絶つ被害者も少なくありません。このような耐え難い現実を被害者と加害者間だけの問題として捉えるのではなくどのように向き合うべきであるのかを考えるために、エリックゼミ生全員で映画を鑑賞後、三島監督を交えてディスカッションしました。作品を通して感じたこと、共感したストーリーや登場人物、作品が描く社会課題をどのように受け止めたのかについて話し合いました。

三島監督を交えたディスカッションの様子


今回の鑑賞会・ディスカッションを通して、『一月の声に歓びを刻め』は性暴力を静かに見つめ、考えるきっかけを私たちに与えてくれているように感じました。そして、私たち鑑賞者に求められるのは作品を真に理解しようと向き合う姿勢なのではないかと気付きました。作品の登場人物たちが抱える苦しみを傍観するのではなく、作者が伝えたいことは何であるのかを思い巡らしながら作品の世界に入り込んでいく、このような「寄り添う姿勢」こそが性被害者やその家族たちが抱える苦しみを少しずつ軽減していく一助になり得るのではないでしょうか。

被害者やその家族が苦しみを相談できる場所があったら、包み隠さず心の内をさらけ出せるような環境が彼らの身近に少しでもあったら。道端ですれ違う人、何気ない挨拶を交わす人、今自分の隣にいる人、毎日のように会う友人。そのような人たちの中にも、実は心の傷を抱えている人がいるかもしれません。たとえ同じ痛みを感じることが難しくても相手を理解しようとする姿勢を持つこと、心の声に耳を傾け受け入れようとする姿勢を持つことが、私たちに求められていることなのではないでしょうか。

一度閉ざされた心を少しずつ開いていこう。
声なき声に耳を澄ましてみよう。
人の背中をそっと押し、小さな勇気がそっと芽生える作品『一月の声に歓びを刻め』。自分が気付くことの出来なかった声がまだ作品の中にあるかもしれません。もう一度、この作品を通して「性暴力」について考えていきたいと思います。

《三島有紀子監督 プロフィール》
https://www.yukikomishima.com/pages/2286214/profile
《エリックゼミ HP》
https://ericmatsunaga.jp/seminar-member/


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