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タバコを拾っただけなのに〈アル力シル力のライブ感想〉

アル力シル力のレコ発ツアーで、初めて四国でのライブが行われると知って秋頃からずっと楽しみにしていた。

2月17日。先日そのライブに行ってきた。



この記事はライブの感想という体裁をとりながら、外的要因による私の心情の動きに重点を置いた自分のための記録です。





私は走っていた。なぜなら、開場5分前になってもまだ少し離れた場所にいたから。

夜の高松、慣れない土地でライブ会場を探すことに手間取っていた。間違えて上の階にあるライブハウスに入ってしまったし。


この建物の地下にある、と教えていただいたので階段を降りるとたくさんの人間がいた。その中にアル力シル力のメンバーの方々の後ろ姿を見つけた私は緊張していた。




チケット代を支払ってドリンクをいただく。ノンアルコールを望んでリンゴジュースを選んだ。




急いで走ってきたけどまだ時間に余裕があったようで、会場に入っても人がちらほらいる程度だった。客層は自分より年上が多く、パンクのライブだったためそれらしい風采をしている方が大半だった。缶バッジをたくさんつけていたり、トゲトゲがついた革ジャンを着てたり。私は普段そういった場に赴くことがないので暗めの色とはいえ普通の服で着てしまったことと、年齢的な面でも多分少し浮いていた。




このライブ、オールスタンディングかつ高身長の人間の割合が高く、人と人の隙間からやきもきしながら覗くことでやっとだった。ライブに来る度に身長があと3m欲しいと願う。



ライブが始まる。4組のバンドで構成されており、そのうち3組は初めて聴くバンドだった。パンクに詳しくないので音楽的なこととかはわからないけど、ステージの上で演奏して歌って叫ぶ人の姿は、普段公の場で晒せない我の形をしていて、音楽をやるなかに自由を求めているように感じられてとても良い時間だった。

3組目はGIVE ME BACK!という比較的メンバーの若いバンドだった。おそらくこのバンドが最も音が大きく、それが強風のようで思わず後ずさってしまうほどの迫力があり、まるで脳を貫通するような感覚に目眩すら覚えた。中華鍋に振るわれるチャーハンってこんな感じなのかな、なんて思いながら。





そして最後にアル力シル力の番へ。

YouTubeにアップされているライブの映像で何度も見た、バンド名を大きく書いた幕やロゴをあしらったガーランドでステージが装飾されていく様子や、メンバーのmariさんのアコーディオンに貼られたステッカーの数々を目にして、これから本当に生で聴けるのだと高揚していたことを強く覚えている。


とある話、悪態、想像、バラバラのステップ…と新譜の曲たちが続き、忘戦歌、スナフキンの狂詩曲、怒りの唄、シラフの唄、ポリスバスタード。多分もっとあったし順番も違うけど好きな曲たちをたくさん浴びることができた。あっという間の時間で、まだまだ無限に聴いていられる。

メインボーカルのUさんのパフォーマンスが映像よりもずっと激しく、正面にいた観客の方とぶつかりそうになっていた。歌いながら気持ちが昂り、アンプに乗り上げたり自身の頭を叩くなど、感情のわだかまりを吐露するような仕草にグッと来た。



シラフの唄のイントロの途中、アコーディオンの充電が切れたようで一旦演奏停止になったのだがステージ最前列にいた方がおもむろにポケットから取り出した単三電池を手渡して、それを受け取りアコーディオンにセットして再び演奏が開始した。ポケットに、対応するサイズの未使用の乾電池を所持していて、かつその人がステージ最前列にいる、なんて。神がかったようにそんな複数の条件が重なること、普通ある!?すごすぎる。なんだか感動してしまった。





ライブが終わり、このまま会場で残れる人はメンバーの方たちと打ち上げに参加できることになっていた。

その時、目の前で男性と女性が会話をされていて、お二人のどちらからかはわからないが、タバコが落ちる瞬間を目にしてしまった。お二方とも気づいていない。あまりにもその人たちの足元だったので失礼かもな、と思いながらタバコを拾い上げて手渡した。するとそのタバコは女性が耳に挟んでいたものだと言う。そんなことある?まあそういう人もいるか。「こんな若い人にタバコ拾わせてなあ!JRAのおっさんかい!言うてな、あんたどっから来た?え?わざわざここまで?アル力シル力見に来たんか?…よし、じゃあメンバー全員と写真撮る段取りとったるわ!」と思いがけず話が展開していき、メンバーの方々とお、お写真を…。こんなことある?タバコを拾っただけなのに。


物販でステッカーとまだ持っていなかったCDを買って、アコーディオンのmariさんと少しお話ができた。私はめちゃくちゃに緊張していた。画面越しでしか見たことない人とお話するのだから当然か。インスタでイラスト拝見してます、とか言ったと思う。緊張であまり覚えていない。夢だったかもしれない。

思い切って、FULL OF LOVEの曲もよく聴いています、と伝えられたので良かった。小山田さんのファンでFULL OF LOVEからアル力シル力を知ったこと、Twitterで小山田さんのファンアートを描いていてアル力シル力の絵のラフが存在していること(これに関しては絶対に完成させることを自分の中で誓った)。

mariさんが「確かにあの人描き甲斐ありそうだよね、目とかキラキラしてて」と仰っていたことで身近な人にもそう思われるほど輝いている方なのだと、嬉しく思った。UさんがFULL OF LOVEが以前徳島でシークレットライブをやっていたかも、と教えてくださった。偶然初めて FULL OF LOVEのライブと出会った人も確かにいるというわけだ。私もいつかそういった機会にめぐり会いたいね。

そしてmariさんもUさんも、小山田さんを「そうちゃん」と呼んでいることを知れてとても良かった。私は何も知らない他人だけど、そうちゃんと呼べる間柄の柔らかさに、彼らの築き上げた優しい関係の片鱗を享受した気持ちになってとても嬉しかった。


そのあとメンバーの方々とステージで一緒に写真を撮っていただいた。タバコを拾っただけでこんなことになってしまった。いいのかな。




いいのかなあ!


そのあと打ち上げに少し参加したが、ホテルのフロントが0時にオートロックがかかってしまうため本当に一瞬だった。ギターのNOKさんとお話しできたが、最初どなたかわからなかった。なぜかというと、映像や写真で帽子を被られた姿しか見たことがなく、この時は帽子を被ってらっしゃらなかったからだ。とはいえ気づかず無礼を働いてしまい、申し訳ございませんでした。

何人かの方に私の地元のことを聞かれたが、あまり魅力を語ることができなかった。地元の話すらうまくできないのって良くない。知ります。



23時40分ごろ、挨拶もそこそこに弾丸になって爆速でホテルまで走って帰った。あと30秒遅れたら野宿を余儀なくされるところであった。

息を切らして部屋の鍵を開けて、もしかしたら今日あったこと全部夢かもな、と思った。





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