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オトナ帝国に憧れて

数年前の誕生日、コロナ禍だったので久々に家でホールケーキを食べた。
なんでもいいというので、サーティーワンのイーブイの顔をしたアイスケーキを所望した。
二十歳過ぎた大人がなんで子供らしいものを欲しているのだと家族に呆れられた。
しかし数ヶ月後、全く同じケーキを誕生日に食べた同級生をSNSで見かけた。
ほら見ろと言わんばかりに見せびらかし、今はこれが経済を動かしているのだと力説した。

さてさて、タイトルにもある通りクレヨンしんちゃんの映画「オトナ帝国の逆襲」をご存知だろうか。
簡単に言えば、懐かしさを利用して洗脳された大人を子供が救う話だ。

5歳のしんちゃんたちは「そんなにいいものなのかな、懐かしいって」と言うが、このセリフがかなり印象深い。
私がこの映画を初めて見たのは低学年の頃だったが、このセリフをしっかりと覚えていた割には特段何も感じなかった。
しかし、平成が終わる頃に成人を迎えた私は友達と一緒にその映画を見たのだが、あのセリフが妙に刺さってしまった。
そして自覚した、私はもう戻りたい過去があるオトナなのだと。

最近のポケモンのコラボ商品は、子供向けに限らず多岐にわたる。
化粧品や工芸品、ティファニーに至るまでオトナ向けに展開されたグッズの光景は私が幼かった頃は想像もつかなかっただろう。
なぜなら、まだポケモン世代がオトナになりきっていなかったからだ。

しかし今は、巻いたタネが芽吹いて育ち、次はタネが自分の中に生まれたようにオトナとしてその頃と同じワクワクを欲するようになる。
経済の先見の明を持っている人はそれにいち早く気づき、グッズ展開を試みたのか。
あるいは、当時の子供が権力を持っただけなのか。

品物がオトナ向けなだけではなく、去年公開された「ゲゲゲの謎」はPG12作品、今冬公開される忍たま乱太郎の「最強の軍師」はシリアス路線と、作品自体でオトナになった私たちを飽きさせない味付けをしてくる場合もある。
一緒にオトナになったんだと嬉しくなる影響で財布の紐が緩む。

クレしん映画での大人帝国は限定された範囲での洗脳だったが、今の日本社会はある意味洗脳なしで広範囲の大人を扇動するもっと怖い帝国なのではないか。

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