第10回「高校図書館職員が選ぶ生徒に読んで欲しい本」TOP24

「本屋大賞」を高校の図書館で働く職員でやってみようという企画です。
2022年12月から2023年11月までに発行された本の中から、全国の高校図書館職員有志(全47校、60名)が自信をもっておすすめする本を発表します!


第1位 成瀬は天下を取りにいく


 
受賞ラッシュにわく本作ですが、「高校図書館本」でも14/60人に支持されぶっちぎりの1位でした。(31ポイント)

以下、高校図書館職員のコメント。


自分を持ち、進むべき道を選び突き進む成瀬は、天から遣わされた女神のようでもあり神々しく、瑞々しい。

本嫌いが珍しく手に取った貴重な一冊。

他人の目など気にせずに思うままに生きる成瀬。そんな生き方は怖い?だけどあなたの中にも小さな成瀬がたぶん隠れている。

成瀬の行動力に脱帽!幼馴染の島崎との関係性もイイ感じの距離感で、二人の行動に目が離せませんでした。

主人公の成瀬あかりのカッコ良さにしびれます。元気をもらえる一冊。

主人公の成瀬がとにかく魅力的です。彼女の地元愛(滋賀県愛)に胸がキュンとなりました。成瀬の大ファンです♪

成瀬の人間性が抜群に良い!彼女はいたって普通だけど、みんなが成瀬に惹かれて応援したくなる。爽快な一冊。

「200歳まで生きる」のが夢だと豪語する中学生、成瀬あかりは、いつもちょっと突飛な目標を口にして、まっすぐに挑戦していきます。そんな成瀬に巻きこまれる幼なじみの島崎みゆきとの掛け合いも絶妙です。クスッと笑えて、スカッとして、最後はちょっとグッときます!成瀬たちに会いに大津に行きたくなりました。

成瀬がクラスや近所にいたら面白かったろうなぁ。近すぎると強烈すぎて引いてしまうかもしれないが、まっすぐで自分を曲げない成瀬の日常にクスっと笑える本。

我が道を行く主人公・成瀬に振り回されながらも、いつの間にか元気をもらえる。そんな一冊でした。

空気は読まない、他人と違っていても気にしない、どんな時でも一生懸命。そんな少女・成瀬は同級生から浮いていても、何だかんだいって愛されているキャラクター。そんな姿が魅力的。

ゴーイング・マイ・ウェイの成瀬さんに惚れ惚れ。

私はもちろん成瀬側ではありませんので、どちらかというと島崎視点に肩入れしつつ読了。爽やかな友情を育む二人の青春の日々は眩しくて、読んでいて気分が良いです。

とにかく主人公・成瀬が魅力的! 読み終えた後は読む前よりも確実に元気になれる!

第2位 この夏の星を見る


以下、高校図書館職員の7名のコメント。(16ポイント)

コロナ禍で青春を過ごす中高生たちのお話しです。生徒だけでなく、大人にも読んでほしいです。

希望をもらい前向きになれるだけでなく、バラバラだったピースがつながっていく爽快感が味わえる。

コロナ禍で閉塞感や孤独感に苛まれる中でも、学校生活で自分たちができることを見つけ、たくましく成長していく姿がとても頼もしく眩しい。そばで支える大人もまた良い。

困難な時でも気持ちを分かち合うことができる。つながりの大切さを教えてくれます。

コロナ禍で多くの事を諦めざるを得ない中高生たちの苦悩、そして、制限された日常でも何か出来ないかと懸命に探す姿に胸を打たれます。

哀しさ、優しさ、温かさ…人間の感情が溢れていて読み応えがある。

コロナ禍でもこんな青春がある。(多分実際にも)やれることを精一杯やる生徒たちの姿が清々しく、同じ星空を観る一体感がこちらにも伝わってきました。

第3位 歌われなかった海賊へ


以下、高校図書館職員の4名のコメント。(12ポイント)

おもしろいから読んで、とシンプルに勧められる。ナチス体制下の「海賊」たちと冒険をともにした後は、きっと見える世界が変わっているはず。高校生のうちに読んで衝撃を受けてほしい。

ナチス政権を支えた市井の人々を、若者たちの眼を通して描き出す。

物語としても非常に引き込まれたが、ナチ体制下のドイツの様子がよく伝わった。戦争がどんなことを引き起こすのか、若い人に伝わるお話だと思うし、知ってもらいた。

ナチス体制下のドイツで「ただ自分たちの好きなように生きる」ことを信条にした少年少女の物語。市内に施設された線路の先には何があるのか、敵対者と戦いつつ旅を続ける3人の危うさに目が離せません。ラスト100ページから始まる迫真のバトルは逢坂さんならではのもの。しかし、本当の読みどころはそこではなく、タイトルに隠されています。読後、冒頭と巻末を読み返してほしい。結末に茫然とさせられます。素晴らしいテーマを持った物語です。

第4位 水車小屋のネネ


以下、高校図書館職員の5名のコメント。(11ポイント)

小さな手の届くところへの親切が綾を織りなして、2人の姉妹の人生をあたたかに包みこんでいきます。読みながら、読み終えて、私にできることに思いを致したくなります。

身勝手な親から離れて生きることに決めた姉妹の40年に渡る物語。ヨウムの「ネネ」がキーパーソン(キーバード?)なのですが、各場面で飛び出すネネのひとことに胸がギュっとなります。

なにか新しい一歩を踏み出すときに、傍で肩をそっとささえてくれるような優しい物語。水車小屋の番人ネネ(鳥。歌と声マネが得意)と主人公の姉妹、とりまく人々との日々が10年ごと移り変わりで綴られていく。

  児童虐待を扱った重い話かな?と身構えて手に取ったんですが、安心してください、そんな心配は無用の温かい物語でした。1981年に親から逃げてきた兄妹がこの町で生活する人々に親切にされ、成長し、その親切のバトンを引き継いでいきます。
  そんな兄妹を見守り続けるのが、平均寿命50年といわれるヨウム(大型インコ)のネネ。このネネがとにかく喋る!歌う! ネネのいる水車小屋に住み着きたくなるような愛おしさがあります。久しぶりに読み終わるのがもったいないと思えるいいお話でした。
  ちなみにヨウムを動画で見てみたら、本当にしゃべったり歌ったりしていました笑

ネットやSNSで時間の流れが刹那的になりつつある現代、このように静かで優しい小説を読んで心の栄養としてほしい。

第5位 くもをさがす


以下、高校図書館職員の4名のコメント。(9ポイント)

乳ガンの宣告を受けるところからガンサバイバーになるまでの闘病記です。ガンは身近ではないかもしれませんが、一人で頑張り過ぎているあなたに読んで欲しいです。

カナダでガン闘病。ナースの言葉が関西弁に訳されていて、重いテーマなのだがテンポよく読める。文中に、著者の心を支えたであろう本や歌からの多くの言葉が引用されている。

コロナ禍におけるカナダでのガン闘病記。ガンになったこともカナダに住んだこともない人でも苦しいくらいに共感し、そして心から救われるような文章です。

海外で病とたたかうこと。関西弁でテンポよく描かれするする読めました。

第6位 世界でいちばん透きとおった物語


以下、高校図書館職員の4名のコメント。(8ポイント)


紙の本でしかできない体験が味わえる。

作者の企てに気付いた瞬間、きっと驚嘆する。作る人、読む人、その両方がいて初めてこの物語は完成する。

思わず「おおー!」と声が出てしまいました。スマホやタブレットばかり見ている高校生たちにも、紙の本の良さを伝えたいです。

あなたにとって、かつてないほど強烈で衝撃的な読書体験になること間違いなし。

第7位 ネット情報におぼれない学び方


7位には4冊入りました。(6ポイント)
まずは1冊目。

インターネットで何でも調べられる現代は非常に便利だと思います。でも、上手に調べることができていますか?闇雲に調べるのではなく、ネットだけでなく、本も可活用して必要な情報を的確に入手する方法を身につけましょう。

ネットでの学びが広がり、玉石混交ある情報をいかに使いこなしていくかが今後よりよく生きていくカギになる。必要な情報リテラシーを身につけるための大切なポイントを紹介する良書。

勉強でPCを使うことが多くなってきました。だからこそより良い情報の調べ方を知る必要があります。ネット情報をうまく使いこなす方法を教えてくれる本です。

この本で学べば、インターネットで正しい情報を入手する方法がわかります!

第7位 続窓ぎわのトットちゃん


7位、2冊目。(6ポイント)

42年ぶりの続巻。戦争体験を書き残していかなければとの思いから、書いたそう。疎開先での苦労話、彼女がデビューしてからこれまでのこと、沢山のことを知ることができた。そして今もなお、イキイキと生活するこれからの徹子さんが楽しみな1冊だった。そのままの人格を受け入れ、伸ばしてくれたトモエ学園時代から、人との繋がり・出会いの大切さを教えてくれる。

「昭和」という時代を象徴するような激動の人生を、独特の視点で生き生きと表現している。高校生にこそ読んでもらいたい。

第7位 街とその不確かな壁


7位、3冊目。(6ポイント)


SNSの言葉は分かりやすい。学生にとっての「手っ取り早さ」の大切さもわかる。しかし、絡んだ糸を少しずつ解きほぐすかのような、読書の楽しみも知ってもらいたい。待ちに待った新作でした。館長の言葉、イエローサブマリンの少年の存在の意味、正解はないのでしょうが、その一つ一つを考えることで余韻に浸っています。

村上ワールドを目一杯楽しめました。図書館が出てきたのにも、ワクワクしました。現実にない世界が表現したいことについて、しばし思いを巡らせ考えさせられました。

第7位 ミライの源氏物語

7位、4冊目。(6ポイント)

不朽の名作ですが、現代の視点で読み直してみるとまあツッコミどころ満載!批判的にものを見るということも大事だと考えさせられる一冊。

こんなふうに源氏物語をとらえることもできるということに驚きました。

第11位 星を編む


11位は8冊です。(5ポイント)

『汝、星のごとく』の続編ということで読んだのですが、これだけでも十分読み応えのある感動作でした。多くの方にぜひ前作から読んでもらいたい、美しい愛の物語です。

過去があって未来がある。

第11位 動物たちは何をしゃべっているのか?


11位は8冊です。(5ポイント)

なんとなく動物も合図をしあっているとは思っていたけれど、鳥(シジュウカラ)が文法をつかって話しているなんて驚きました!研究者お二人の仮説、実験、考察もなかなか面白く、まったく眠くならずに一気読みでした!

ゴリラと暮らしたことのある山極寿一とシジュウカラの言葉を研究している鈴木俊貴の対談本。シジュウカラは2語文をしゃべって、エサを得るために仲間にウソをつくこともあるのだとか。自分が捕まった時のことを後から手話で語ったゴリラもいるのだとか。動物たちの多彩なコミュニケーションにびっくり!その後、話は人間の言葉の起源や現代社会の問題にまで広がって。読むとわくわくして、興味が広がる、おすすめの本です!

第11位 祖母姫、ロンドンへ行く!


11位は8冊です。(5ポイント)

「一生に一度でいいからイギリスに行きたい。お姫様のような旅がしてみたいわ!」80歳を超える祖母の一生一度の贅沢旅行。お供をするのは、英国留学経験のある孫娘。気まぐれで誇り高い「祖母姫」に振り回される、可笑しくてちょっとせつない5泊7日の旅日記。

ジャンルは紀行になるが、作者自身のエピソードや祖母のキャラクターが物語のようで、楽しい。

第11位 リカバリー・カバヒコ


11位は8冊です。(5ポイント)


何かに悩んだとき、カバヒコがいる公園があったらいいなと思いました。心が温まる物語です。

カバヒコにふれた人たちが大切なことに気づいていくことに心がほっこりする、そんな作品です。

第11位 さみしい夜にはペンを持て


11位は8冊です。(5ポイント)

この本を読んで、自分の気持ちや表現したいことを言葉にしたくなりました。書くことって、実は身近にある癒しなのだと思います。

SNSがしんどくなったら、スマホを放り出して、この本を手に取ってみてほしい。本は既読スルーでいいし、途中で放り出してもいい。もし気が向いたら、ヤドカリのおじさんのアドバイスを思い出しながら、ペンを持つのもいいと思う。

第11位 カブトムシの謎をとく


11位は8冊です。(5ポイント)

「カブトムシ」は男の子の魂! (`・ω・´) たとえ虫が怖い子でも「カブトムシ」は別格。

昆虫はまだまだわからないことがたくさんあるのですね。奥深い

第11位 私たちの世代は


11位は8冊です。(5ポイント)

感染症によって失ったものもあるけれど、最後には前に進んでいく主人公たちに感涙です。

失ったことも多かったコロナ禍。でもあの時間があったことで出会えた人、出来事もある。立ち止まっている人の心を優しく包み込んでくれるような作品です。

第11位 椿ノ恋文


11位は8冊です。(5ポイント)

久しぶりに主人公ポッポちゃんに再会できました。「代筆業」を通して人と深く関わっているようすが胸に沁みてきます。その出来事を鎌倉の風土が包み込んで、春風のように思える小説です。

6年ぶりの作品。その間、作中の人物も、私達読者と同じように、6年の月日を生きていたことが嬉しくて。日常生活の中のさりげない幸福感。人との関わりの温かさ、そして難しさ。今回は、想いをを伝えるだけでなく、想いをいかに汲み取るかも丁寧に描きだされています。

GPちゃんが反抗期‼

『ツバキ文具店』から10数年を経て、成長した主人公をとりまく鎌倉の生活物語。家族が増え、子育てや反抗期の内容も入ってきて親近感が湧く。鎌倉の季節を一緒に味わう感覚もいい。前作からの長いスパンを経ての感動がある

第19位 ゴリラ裁判の日


19位は6冊です。(4ポイント)

人間の子どもを救うために射殺された動物園のゴリラ。その妻のゴリラが裁判を起こす!人間と動物を分かつものとは、人権とは何なのか。読む手が止まらない一冊!

人間とはなんだろう…?とてもユニークだけど深く考えさせられる一冊です。ゴリラにもこの本をおすすめします。

第19位 宙わたる教室


19位は6冊です。(4ポイント)

”知りたい”という行為は尊い

探究心を刺激してくれる先生と出会い、さらに知的好奇心を共有しあえる仲間がいることで、学ぶ楽しさを知っていく定時制高校の生徒たち。実話をもとに書かれています!

第19位 アリアドネの声


19位は6冊です。(4ポイント)

巨大地震による被災者救出、タイムリミットは6時間、ハラハラの設定です。

近未来・地下都市・障害者・災害救助・ドローン技術など、今身近に起きていたり、起こり得ることについて考えさせられます。生と死、絶望や希望、限界を超えるとはどういうことなのか哲学的な思考をしたくなります。

第19位 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない


19位は6冊です。(4ポイント)

就活に失敗した後のひきこもり生活の中で、映画好きな著者はルーマニア映画にはまり、独学でルーマニア語をマスターした。そしてついにはルーマニア語の小説を書いて、ルーマニアでも小説家として認められた!という、ウソのようなホントの話。こんなに世界は広がるんだ!作者の姿に感動します。

俺文体が暑苦しいけれど、著者の気持ちが直球で読者に伝わってきます。好きなものを追求する情熱に圧倒されます。

第19位 3年間ホケツだった僕がドイツでサッカー指導者になった話


19位は6冊です。(4ポイント)

「生徒のための部活動とは本来何か」を楽しく考えさせてくれる本。帰宅部だった方にもおすすめです。

ホケツだったからこそ考えたことが書かれている。試合に出られなくてもサッカーが好きだから、ドイツでサッカーを続け、結果指導者になった。その経過をじっくり読んで欲しい。「勝利を目指す」ことも重要だが、それだけではないスポーツの魅力を読み取ってほしいです。

第25位 文学キョーダイ!!


25位でしたが複数の票が入ったのでここで紹介します。(3ポイント)

『同志少女よ、敵を撃て』の逢坂冬馬さんとロシア文学者の奈倉有里さんの姉弟対談。お二人が育った家庭環境が個を尊重できるもので素晴らしいと思いました。本の紹介も多いので、読書を幅を広げる参考になります。

姉であるロシア文学者の奈倉有里さんと、弟の小説家の逢坂冬馬さんとが語り合うというだけでワクワクします!!ふたりの語る家族や姉弟の関係、社会や、戦争、ロシアとの関わり、軽妙なやりとりの中に立ち止まって考えたくなることがあちこちに散りばめられています。

惜しくもTOP24には入らなかったけど、個人投票で1位に推された個性的な22冊はこちら。


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