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ふうちゃんと鉄三との出会いとジレンマ

僕が小学5年生の時、住んでいた団地内に
個人塾ができた。
はるばる北海道から越してきたばかりの
若いご夫婦
優しい笑顔を絶やさない
小柄な奥様が先生だった。
国語と算数がメインで、週末に
朗読会が開かれた。
朗読会初日に配られた本は
灰谷健次郎さん著「太陽の子」であり
主人公ふうちゃんとの出会いだった。

他人(ひと)の苦しみを
自らの苦しみにできる人間がすばらしい

僕は当時この感覚を未熟な精神ながらも
僕なりに素直に受け止めようと
していたように思う。

半年から一年かけて朗読作業と同時に
登場人物の心情を考えほかの生徒と
先生を交えて発表するを繰り返した。

「太陽の子」を読み終えると翌週には
灰谷健次郎さん著「兎の眼」が配られた。
主人公の鉄三との出会いである。

同じように
半年から一年かけて朗読作業と同時に
登場人物の心情を考えほかの生徒と
先生を交えて発表するを繰り返した。
みんながサイダーのくだりで泣いた…

小学6年生を終えようとしていた僕は
「人間の本当の優しさとは何か」と
問い続けてきた
灰谷さんにとっての「優しさ」を
そのときの自分なりに
感じとっていたつもりだったし
単純に優しいは正義だと信じきっていた。

灰谷さんの半分ぐらいやさしくなりたい

ただぁ~ 半分優しさで出来てるのは
バファリンぽんぴーん🎵
僕の席の背後には狭い部屋には似つかない
祭壇があって中央に立て掛けられた
大きめの遺影が
いつも僕の背中をじっとみていたよね
僕は必ず授業の前と後にお尻を向けて
ごめんなさいと謝っていましたよ
お尻を向けた祟りか定かでないけど
サッカー部最後の大会の最中に
スライディング失敗して股が開いてしまい
切れ痔になったし ふごふご

とどのつまり
あのころの僕には灰谷さんの伝えたかった
「優しさ」と「日常」を上手に
すり合わせることなど出来なかったから
苦労したよ 副作用あるよって話
今でもできてないだろきっと 
内容おぼえてないよまったく 

ただぁ~ 高校3年生卒業間近の時期
駅の方からこちらへ近づく尾関先生の姿
あなたは5年も顔を合わせてなかった
僕の顔を覚えていて 小さく手をふって
相変わらずの優しい笑顔で 
僕になにか声をかけてくれようとしたけど
僕は小さく ウッスとだけ言って
足を止めずにそのまますれ違いましたね

それ以来あなたの優しい笑顔を
みることはありませんが
あのころの僕にとって尾関先生の
笑顔が一番優しい世界だったって話です。

灰谷健次郎さんの著書を
もう一度手に取ってみようかな
うっすらとしか覚えていないから
もう一回泣けるかな いい大人になったかな
ごめんなさい もう泣いてる

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