平成の名勝負、畑山vs坂本その1

現在、プロボクサーといえば無敵のチャンピオン井上尚弥の名前が真っ先に上がると思うが、今から20年以上も前に日本中が湧き上がった世界戦があった。
それが畑山隆則vs坂本博之のWBA世界タイトルを賭けた試合だった。
元々畑山はジュニアライト級、今で言うとスーパーフェザー、対して坂本は一貫してライト級を主戦場としていたボクサーである。
畑山は元々スピードもありながら同階級ではパンチ力も一目置かれる存在であった。彼は期待通りスーパーフェザーで世界チャンピオンになるも防衛戦2戦目でラクバシンにTKO負けをきっし引退を表明した。
対して坂本はライト級でも屈指のハードパンチャーであるものの何回か世界戦に挑戦したがチャンピオンになることはなかった。
一度は引退表明をした畑山だったが、ボクシングでやり残したことがあったのだろう、引退を撤回して復帰宣言をした。
ボクシング復帰にあたり彼が選んだ階級は1階級上のライト級だった。
スーパーフェザーとライト級の体重差は2.5キロ弱、一般の人にとってみればそう大きくない体重かも知れないが贅肉を極限まで削ぎ落として臨むボクシングにおいては非常に大きな差だ。
畑山はスーパーフェザー級時代は減量に苦しんでおりそれもあってのライト級での復帰だったのだろう。
当時の畑山の体重は減量前は70キロ超えていたと本人は言っているが、ライト級のリミットまで持っていくのは非常に楽だったらしい。たった2.5キロされど2.5キロと言うべきだろうか?
対して坂本は元々ライト級を主戦場としているファイター、坂本からは減量が苦しいと言った話は聞こえていない。
畑山がライト級で復帰してから、いろいろなことが動き出した。いや動き出したは的確ではないかも知れない。ボクシングファンの見る目が動き出したと言うべきだろう。
畑山が復帰した後、すぐに坂本のWBA世界戦が決まった。相手はヒラベルト・セラノ。
この試合では序盤で坂本がセラノを圧倒し1Rで2回もダウンを奪うなどの攻勢を見せたものの、右目を負傷し、結果5ラウンドでドクターチェックによりTKO負けという残念な結果に終わりタイトル奪取はならなかった。
坂本戦で防衛したセラノは今度は畑山とタイトルをかけて世界戦を行うことになる。
スーパーフェザーからライト級に階級をあげ減量の苦しみから解放された畑山はこう述懐する。
計量のだいぶ前に体重は落とせた。普段通り食べたいものを食べて2キロオーバー。起きて体重測ると1キロオーバーになってる。その後練習したらもうリミットを割っている。毎日がこの繰り返し。全く減量の辛さがなかったと。
対して坂本はどうだったのだろう?坂本は公にあの試合を語ることはないので知る由もない。

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