ひとがいやだ

私は「ひと」がいやだ。

「ひと」は朝、挨拶をしても無視をする。
「ひと」は聞こえるところで嫌味を言う。
「ひと」は匿名でいじわるなことを書いてくる。
「ひと」は自分の考えが正解かのように説教をする。
「ひと」は気分で理不尽に罵倒する。
「ひと」は本当に思っていることを言わない。
「ひと」は「ひと」の事情も知らずに(まだ若いんだから)と言う。

「ひと」は言葉や態度で「ひと」を傷つける。
そんなわたしも「ひと」だからいやだ。


私は「ひと」の優しさがいやだ。

「ひと」は仕事前に飴やお菓子をくれる。
「ひと」は手が荒れているのを見てさりげなく声をかけてくれる。
「ひと」は「ひと」の話をうんうんって聞いてくれる。
「ひと」は「ひと」のことを考えて言葉を選んでくれる。
「ひと」は「ひと」のそばにただ居てくれる。

「ひと」の優しさに触れた時、わたしはきらいなぶん、涙が出る。

涙の雨は止むまで待たないといけない。
涙もいやだ。

今日は仕事中なのに、泣いた。
上司にバレないように泣いた。

わたしは心と体が疲れやすくなってしまっていたから、上司に自分の言葉で「残業を断る」ことをした。
伝え方って難しい。本心を伝えるのは怖い。

上司は残業が必要な理由と、仕事の現状を説明した後、わたしの「断り」を理解をしてくれて、さらに今の実力を評価してくれた。

最後に「頑張ろう、でも、考えすぎないでね」とわたしの肩にポン、と、手をあてた。

たったそれだけのことだったが、わたしはそのあと、静かに泣いた。

涙を溜めながら仕事をした。
体力がないこと、経験が足りないこと、申し訳なさ、上司の対応の良さ、疲れたなぁっていう気持ち。
色んなことを考えたら涙が出ていた。

涙が流れないように仕事をした。
仕事に涙はいらないから。


「ひと」は言葉や態度で「ひと」を温める。
そういう「ひと」に私はなりたいと思った。

わたしは「ひと」がいやだ。
だけど、きらいと同じくらい、すきになる時もある。
そんなわたしも「ひと」だけど、「わたし」は「わたし」のことをすきになれるのだろうか。

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