冷やす? 温める? どっちが正解?

こんにちは。だんだん気温が下がってきましたね。
体調には気をつけて生活したいものです。

ところで、冬になるとケガが多くなると言われます。
ちょっとこの理由を説明します。

気温が下がると体温も下がりやすくなります。
人間の体には、体温や体液濃度などの体の内部の状態を
一定に保とうとする働きがあります。
これを、恒常性(こうじょうせい)と言います。

なぜ、一定に保つかと言いますと、平常時の体の状態が
いわゆる「ベストコンディション」だからです。

例えば、気温が低く寒いところにいる時、
人間の体は、熱を産生させることで体温の低下を防ごうとします。
それを担うのが主に筋肉です。
筋肉を働かせることで熱を産み出します。
その最たるものが「ふるえ」ですね。
ものすごく寒いときに、体がブルブルふるえるのは、そのためです。

「ふるえ」まで出なくても、寒いときには体が硬くなります。
筋肉をギュッと硬くしているわけですね。
その状態で急激に運動すると、筋肉や関節に大きな負担がかかって
ケガにつながってしまいます。
これが気温が低くなる冬にケガが多くなる主な理由です。
(ほかには、路面が凍結していて滑って転ぶということも起こります。)

ケガと言っても、打撲・骨折・脳挫傷・筋断裂・靭帯損傷など
いろいろありますが、ここでは「打撲」を例に挙げてみます。

「転んでしまった。お尻を打ってしまった。痛い。」という
ケースです。この時、冷やしたら良いのか? 温めたら良いのか?
一体、どっちが正解なのか? 
これが、今回のお話です。

転んで打ってしまったり、どこかにぶつけてしまったりすると、
その部位に炎症が生じます。
炎症には5大徴候といわれる症状があらわれます。

発赤(ほっせき):赤くなる
熱感(ねっかん):熱くなる
腫脹(しゅちょう):腫れる
疼痛(とうつう):痛くなる
機能障害(きのうしょうがい):動きにくくなる

少し解説しますと、
炎症が起こると、体内の毛細血管が拡張してその部位の血流が増加します。
これが「発赤」と「熱感」の原因です。
さらに、拡張した血管から血漿(血液の成分)が滲み出て、
むくみが生じます。これが「腫脹」です。
ちなみに、強くぶつけると血管が破れて血液が流れ出てきます。
これが内出血です。
打ったり、ぶつけたりすると、その部位の組織がダメージを受けるため、
単純に痛いです。「疼痛」ですね。
また、腫れたり、痛みがあると、動かしにくくなります。
これが「機能障害」です。

基本原則として、
温めると、その部位の血管が拡張して血流量が増えます。
冷やすと、その部位の血管が収縮して血流量が減ります。

というわけで、
打ったり、ぶつけたりした直後で炎症が起こっている場合は、
患部を冷やすことが最優先となります。
これをアイシングと言います。
冷やすことで、血管を収縮させて血流量が減らし、
患部の「発赤」・「熱感」・「腫脹」を治めます。

温めるのは、そのあとです。
血流を良くして、細胞に必要不可欠な酸素と栄養分を十分に供給します。
そして、組織が修復されてくると「疼痛」も治まってきます。
そうすると、動かせるようになってきますので、
「機能障害」も改善します。

これが炎症治癒の基本的な流れとなります。
つまり、炎症が起こっている直後に患部を温めてしまうと、
「発赤」・「熱感」・「腫脹」を悪化させてしまうわけですね。
結論としては、打ったり、ぶつけたりした場合は、すぐに冷やしましょう。

ビニール袋やアイスバッグに氷を入れ、患部を冷却(アイシング)します。
15分~20分冷却したらアイシングを止め、痛みが出てきたら、
また冷却(アイシング)します。これを1日~3日繰り返します。
※日本スポーツ整形外科学会(JSOA)
「スポーツ損傷シリーズ 3. スポーツ外傷の応急処置」より

冷却(アイシング)して「発赤」・「熱感」・「腫脹」が治まったら、
今度は温めることで血流を良くして、傷ついた組織の修復を促します。
そして、痛みに合わせて少しずつ動かしていきましょう。
あまりにも慎重になりすぎて、ずっと動かさないままでいると
体が硬くなってしまいますので、無理のない範囲でできる限り動かすように
しましょう。




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