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【神の使いの子。】13話:導かれし者「創作大賞2024提出用」

──決着がついてから翌日の朝──



ー2024年4月2日ー 10時頃



俺は仕事が終わり、母親と連絡をとった。


俺「大丈夫?」



母親「え、どうした?」

母親「特にいつも通りよ」



俺「良かった...」




母親「ただ、昨日は何でか分からないけどいつもより熟睡できたわ。」

母親「いつも全然寝れないのに」




俺「そっか。でも何事も無さそうで良かった。」






俺はそれを聞いて安心した。
無事だったんだな...




気づくと
俺の目からは涙がこぼれ落ちていた…..




俺は昨晩あった事を一通り母親に説明した。
母親は驚きを隠せない状態ではあったが、俺の事を信じ、すぐに理解してくれた。
だが本人いわく、体の事は特に変化は感じなかったという。






俺は家に帰宅したので
昨晩のことを麗奈さんに報告することにした。






俺「麗奈さん、ごめんなさい。お祓いの方終わっちゃいました。」

俺「色々力になって下さったのに同席させてあげられなくてごめんなさい。」



俺「昨日色々あってから母親の事が心配すぎて...」
俺「まだ心臓のバクバクが止まってません...」




麗奈「ううん、大丈夫だよ。お母さん見せてみて?」






俺は母親に許可をとり、母親の現在の写真を麗奈さんに見せた。






麗奈「しっかり綺麗にとれてるよ。」

麗奈「神城さん、もう大丈夫だから安心して。落ち着いて。」






良かった...本当に終わったんだな...
俺は本当の意味で安堵できた気がした。
確かに、母親の顔色が以前よりも格段に良くなっているのは確かだ。
目の下の隈は取れ、目も以前よりパッチリしているように見える。

そして、以前まで極端に下がっていた右肩がもう下がっていない。
両肩均等の位置に戻っている事に気づいた。











そういえば...
──俺は以前麗奈さんから言われた事を思い出した。






麗奈(ここの神社の使いの子は、参拝者の中で‪”‬近々危ない事が起こるかもしれない人‪”‬にランダムで付いて行ってるみたいなんだよね。)






もしかして...今日の事か?






俺「そういえば...麗奈さん。」

俺「以前に神社の使いの子が”‬近々危ない事が起こるかもしれない‪”‬参拝者‪にランダムで付いていっているって話しましたけど」

俺「もしかして..…この事ですか...?」




麗奈「確かに...」

麗奈「今からなっちゃんに聞いてみるね。」




麗奈さんはなっちゃんと霊話をはじめた。






そして俺は、衝撃の真実を知ることになる…..














────朱天神社の神様は、もう随分前から俺の存在を知っていた。
俺が朱天神社の事を調べていた時から俺の存在を知っていたのだという。



そして朱天神社の神様が
母親の状況や俺の持病の状況を知り
俺を‪朱天神社に‪”‬呼んだ‪”‬のだ。



確かに初めて参拝した日は天赦日で、朱天神社のイベントの日だった。
たまたまその日の前後含めて三連休になったから行けたのだ。

そう考えると辻褄が合う。




──そしてあの日
俺が朱天神社に参拝しに行った日。

朱天神社の神様が「この人に付いていきなさい。そしてこの人を守りなさい。」
となっちゃんに伝えた。



なっちゃんの任務は、除霊が終わるまでの期間
”‬神城真とその母親を守る事‪”‬



なっちゃんは神の使いの子ではあるが
長い期間の修行を終えて、今回が初めての任務だったのだという。





・朱天神社に参拝する前から周りに大勢の霊能者との縁を繋ぐこと。
・俺を朱天神社に呼び、俺になっちゃんをつけること。
・母親に憑いている怪物達を祓えるレベルの
除霊師との縁を繋ぐこと。


全て導かれていた。






霊話ができる麗奈さんと俺の縁を繋いだのは、
なっちゃんが初任務の遠征だった為


なっちゃんが寂しくならないように
会話ができる相手が出来るようにと、神様が俺と麗奈さんの縁を繋いだ。




確かに、導かれていたというのであれば辻褄が合う…
最近は霊能者との縁が異常な程あった。






更に麗奈さんは
3月下旬にお婆さんの霊の存在を確認し
母親の写真を初見で視て感じたのは
”‬思ったよりも力が弱い‪霊だ”‬と思ってしまったらしい。
だから初見は、自分の祓えるレベルの範囲であると思ってしまった。


麗奈さんいわく
強い霊程‪”‬自分の力の隠し方‪”‬が上手いのだという。


たまたま麗奈さんのエネルギーが切れていたので、すぐにお祓いを行わなかったから良かったものの.….

もしあの時
麗奈さんのエネルギーが通常の状態かつ
そのままの勢いで‪”‬母親のお祓い‪”‬に真っ向から勝負を挑んでいたなら…

最悪の場合
もしかしたら麗奈さんも命を落とし
俺も母親も命を落としていたかもしれない…..







偶然が偶然を呼んでいた。


‪いや、”‬偶然‪”‬というよりも‪”‬奇跡‪”‬という言葉の方が近いのかもしれない…






そう考えると、それも神様の導きなのかもしれない…






そして俺が除霊師さんと
母親のお祓いの手続きをしている時
なっちゃんはボロボロになりながら、必死に俺と母親の事を守ってくれていた。
俺が左足に激痛を覚えた時は、母親に憑いていた‪”‬怪物”‬が俺に攻撃してきたからだという。



‪”‬怪物‪”‬の矛先は、どちらかと言えば母親よりも
‪”俺‪”‬に向いていた。

‪”‬除霊師‪”‬と連絡を取れる唯一の人物が‪”‬俺‪”‬だからだ。




なっちゃん「今日一日、二人を守るだけでも
手一杯なのに、これ以上は私がもたないよ...」




そう判断したなっちゃんは
俺に‪”‬今日中になんとかしなければやばい‪”‬と
思い込ませたのだ。



なっちゃんが守っていてくれていなければ…
この時よりももっと激痛で、俺は行動不能になっていたという。






とんでもない話だ。
霊能者との縁もそうだが
俺が朱天神社へ参拝しに行った日のたまたま
三連休になった日、仕事のシフト調整の件も考えれば
朱天神社の神様の影響を受けていた人間はざっと十人以上はいるだろう。




なんて凄い力なんだ...
俺は、大勢の人達に救われた。




そして何より…..俺を含め俺の周りの人間は
誰一人として傷一つつけられることなく
この件を終えることができた。











麗奈「その時の戦いで…なっちゃんボロボロになってる…..」



麗奈「本当に必死になって守ってくれてたみたいだよ。」



麗奈「まだこんなに小さい子なのに…」
麗奈「凄いよ。なっちゃんは。」





なっちゃんは神の使いとはいうものの
心は幼い子供だ。

俺や麗奈さんが恐怖するようなレベルの怪物達相手に、勇敢にも立ち向かい俺達のことを守ってくれた。






俺「そうだったんだ.….」

俺「なっちゃん…本当にありがとう。」




心からの言葉だった。






麗奈「なっちゃんの任務はこれで終わりみたいだね。ちゃんと神城さん達を守りきれた。」



麗奈「でもなっちゃんがこんなボロボロの状態だと、自分の力だけで神社に帰るの厳しいと思うんだよね...」



麗奈「神城さん、近々朱天神社にお礼参りするのと一緒になっちゃんを送り届けてあげてくれないかな…?」



麗奈「朱天神社に帰れば、ボロボロになった所も治ると思うから。」






俺「分かりました。」

俺「なっちゃんにはいっぱい守ってもらったので、次は自分がなっちゃんを守る番です。」

俺「自分の仕事のシフトで今月の23日が丁度前後休みがあって都合がいいので、その日にお礼参りしに行くことにします。」




麗奈「うん。ありがとうね。」



俺「そういえば、今月の半ばくらいから
なっちゃんのお別れ会しませんか!?」

俺「もうしばらく会えないわけですし。」




麗奈「いいね!しようしよう!」

麗奈「なっちゃん、金平糖が好きらしいから
用意したらきっと喜ぶと思うよ」




俺「分かりました!用意しときます!」






こうしてなっちゃんのお別れ会と
朱天神社へのお礼参りの予定が決まった。






そして、お別れ会の日まで時は流れる──




#創作大賞2024   #ホラー小説部門

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