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「シータ・トゥレイト」の衝撃

「デュエルマスターズ・プレイス」いわゆる「デュエプレ」は、リリース当初より不安視された諸々の問題点を徐々に改善し、最新16弾カードパック「ファースト・オブ・ビクトリー 激竜王の目覚め」が登場するに至った。
 
かくいう私は、リリース当初からデュエプレのユーザーであり、ランクマッチよりはそれぞれのカードの背景ストーリーなどについてを重視し、強さを気にせずに使いたいカードを使っている。

今回話題とするのは、「シータ・トゥレイト」というカードである。

「シータ・トゥレイト」デュエプレ版

あまりにも素晴らしいカードではないだろうか。
私は、カードの効果、あるいは能力において、ゲームとしての強さだけではなく物語性をも帯びるようなものを、美しいカードだと感じる。そして、「シータ・トゥレイト」は、その点では素晴らしいカードである。

「カードの効果が物語性を帯びる」とは?

たとえば、「冒険妖精ポレゴン」というカードがある。

「冒険妖精ポレゴン」

このカードの効果は、簡単にいえば「攻撃したのちに手札に戻る」というものであるが、私はこの効果を、「ポレゴン自身が逃げている」と解釈している。効果発動時に「にっげろ~」とのボイスが再生されるからである。
この、「手札に戻る能力」を「相手から逃げ出している」と読み替えることができるものを、ここでは「物語性」と呼んでいるわけである。物語性は、単なるカード対戦を豊かな経験にする。仮に、「ポレゴン」を「アクア・サーファー」の能力で手札に戻した場合、それは同じ「手札に戻る」状況であるが、「ポレゴン」は逃げたのではなく、「アクア・サーファー」に押し流されたと解釈できる。対戦中の刹那的瞬間が固有の物語を紡ぐのである。

「シータ・トゥレイト」・「サバイバー」


「シータ・トゥレイト」は、物語性を非常に多く含んでいる。「サバイバー」がクリーチャー世界を飲み込み、周囲もサバイバー化していく状況の、いわば首領としてのクリーチャーにふさわしい物語である。少し、フレーバーテキストを見てみよう。

封じられた技術によって進化したサバイバー
あらゆるものを吸い尽くす存在
サバイバーは地上を覆い尽くした
神さえ飲み込む

TCG版とは遍歴含めてストーリーが異なっているが、その本質は変わらない。そして、すべてを説明するのはたいへんに難儀だ。漂流大陸を由来とするサバイバーが、アマリンの気まぐれがきっかけで進化を遂げているが、すでにこの段階でTCGのストーリーと大きく異なる。従って、ここでは詳しい来歴は割愛し、以下のようにまとめてしまう。

サバイバーは、急速に進化を遂げている。
サバイバーは、周囲のものを取り込んで増殖する。
サバイバーは、共鳴する。
サバイバーは、神であろうと飲み込んでしまう。

サバイバーの侵略は、デュエマのストーリー上あまり例のない人海戦術である。デュエプレでは同弾収録のボルフェウス・ヘヴンに滅ぼされたとしてストーリー上から退場するが、後に生き残っていることも判明する。
文明の隔てなく襲来し、周囲を取り込んで膨張、手がつけられなくなる様子は、かつての無限軍団に似る。

さて、その中での「シータ・トゥレイト」である。このカードは、前述したサバイバーの侵略を、端的かつ網羅的に能力に落とし込んでいる。能力を列挙する形で、見てみよう。

能力① S・トリガー

TCG版にも存在した、フレーバーに富んだ能力である。これをサバイバーの王、「シータ・トゥレイト」が持つことは、まさしく、サバイバーが、「新たなステージへ」と進化を遂げていることの証左であろう。さらに、割ったはずのシールドから突然召喚されるという挙動は、サバイバーの侵略の始まりを意味するほか、撃破したはずの敵から突然にサバイバーが生えてくる光景も浮かんでくるようである。「シータ・トゥレイト」のイラストは、下部が木のようになっているのが確認でき、突然現れるデザインと鮮烈にマッチしている。サバイバーの侵略というストーリーも相まって、今私が割ったシールドは、本当は触れてはならないものだったのではないかというような、底知れぬ恐怖心が芽生えるような気さえするのである。

能力② 進化-クリーチャー

「シータ・トゥレイト」は、あらゆるクリーチャーから進化する。デュエプレにおいては、今現在も唯一の進化条件だ。
サバイバーのデッキを使っていると、「青銅の鎧」などのようなサバイバーでないクリーチャーの上に進化するようなこともよく起こったものである。フレーバーテキストで示唆されていたような、「あらゆるものを取り込む」かのような情景が、ふんだんに浮かぶ挙動である。通常、進化というと、それこそ「ドラゴン」が「バジュラ」に進化するように、ある一定の布置を踏んでいくみたいな形で脈絡のある進化を想像するものだが、「シータ・トゥレイト」に限っては一切それがない。あらゆる自然文明クリーチャーが混ざり合ったかのような見た目が、いかなるクリーチャーから進化しようともそこになにか屈辱的な、「進化下」とは形容したくないような感情を喚起させる。根底にあるイメージはTCGにおけるキーワード能力「侵略」にも似ているのではないだろうか。
ともあれ、あらゆるクリーチャーから進化するのは、サバイバーの「のみこむ」描写をゲーム内で実現させた、素晴らしい特徴だ。「O.V.E.R.Evo」あるいはサファイア・ミスティ、ウィズダム夫妻に感謝せねばなるまい。

能力③ 自分のクリーチャーは全て、種族にサバイバーを追加する。

進化下のクリーチャーをのみこんだあと、他のクリーチャーを全てサバイバー化させてしまう。いわずもがな、サバイバーの侵略それ自体の表現である。デュエプレの利点として、カードの効果発動、その挙動を自動で行ってくれるというものがあるが、それも物語性の付与に役立っている。つまり、
クリーチャーから進化した(=クリーチャー一体から突然、シータ・トゥレイトが生えてきた)→自分のクリーチャーにサバイバー付与した(周囲のクリーチャーもサバイバー軍団の一部に取り込まれてしまった)という物語性が、プレイヤーの眼前で、カードの効果処理として展開されるわけであり、まるで背景ストーリーをそのまま追っているような臨場感ある体験をさせてくれるのである。

能力④ 自分のマナゾーンにある全てのサバイバーのサバイバー能力を得る。

「共鳴」である。「シータ・トゥレイト」が後天的にサバイバーにしたクリーチャーではなく、生来のサバイバーたちの力を、いわば飲み込み、吸い上げ、共鳴している。さらに、「シータ・トゥレイト」の木のようなデザインが、マナゾーンからサバイバーの力を得ることの説得性を増している。先ほどまで挙げた能力たちは、基本的にクリーチャー世界に対する「シータ・トゥレイト」の侵略行動が中心であったが、こちらはサバイバーの王としての最たる共鳴、連帯の物語性である。TCG版「シータ・トゥレイト」のデザインとの最も大きな違いはここにある。


TCG版「シータ・トゥレイト」

サバイバーの突然の侵略行動、そして周囲を飲み込む力は表現されているが、サバイバーが持つはずの共鳴させる能力を持たず、ただ他に共鳴するのみであったのだ。デュエプレでは、このいわば歪みを逆に利用し、「マナゾーンの全てのサバイバーに共鳴する」という能力で、周りをサバイバーに取り込みながら自らはサバイバーの力に共鳴しつづけ巨大化するというデザインへと落とし込んだのだ。思えば、サバイバーが共鳴しあうのであれば、その共鳴の発信先がいるはずだ。発信先は「シータ・トゥレイト」であり、受信、共鳴するサバイバーを増殖させていたということなのだろうか。
なんにせよ、TCGにはなかった能力と物語性を付与し、サバイバーの物語をより流麗に語ることに成功しているだろう。

以上が、私の「シータ・トゥレイト」への所感である。登場から数ヶ月経ったが、やはり言葉にしておこうと思い至り、この文を記した。これに皆が共鳴するか否かは、自由だ。

(本文中の画像は、デュエプレ公式サイトhttps://dmps.takaratomy.co.jp/

タカラトミーのカード検索サイトhttps://dm.takaratomy.co.jp/card/

に依る)










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