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酸ヶ湯温泉湯治 初夏の巻

夕方五時過ぎにチェックインして部屋に入ると、カエルの大きな鳴き声に驚いた。まだ6月半ばだというのに季節外れの暑さで、ついにカエルたちも狂ったかと思うほど。雲上の霊泉、酸ヶ湯といえども、この日は蒸し暑かった。

いつも部屋をとる湯治棟3号館の窓越に、向かいの湯治棟6号館の木造建物が見える。前回今年一月には軒先から大きな氷柱が伸びていたのだが、いまは遮るものは何もない。夕暮れ時、それぞれの部屋に明かりが灯って趣ある風情。

夕暮れ時の湯治棟6号館の佇まい

この度は夕食無しの二泊三日のプラン。初めての自炊だ。チェックイン時に旅館のフロントで調理道具の貸出しについて尋ねると、番号入りの包丁を貸してくれた。鍋や食器類は無料で湯治棟に備えてある棚から借りられる。調理場には洗いのためのスポンジや洗剤が備えてあるし、電子レンジやガスも無料で使えるのがありがたい。

2階の炊事場 階段を上がってすぐの場所 ここに一番近い部屋を予約した

まずは売店を一巡り。毎回必ず購入するのが、ロングセラー商品の酸ヶ湯温泉の入浴剤だ。遠く及ばないとは知りつつも、自宅の湯にこれを加えてほのかな硫黄の香りと温泉気分を楽しんでいる。そして、酸ヶ湯温泉ペールエール。シトラスが華やかに香るフルーティーなビールでとても美味しい。

津軽塗の茶櫃とともに、奥にはダイヤル式の電話機

この日の夕食は酢飯に鯛のお刺身を乗せた丼ものに、市販の茶わん蒸しで簡単に済ませた。ただ素材を切ってのせただけの自炊飯デビューだ。

明日はいよいよ火を使って念願の凍み豆腐含め煮を。あの酸ヶ湯温泉名物の寒仕込み凍み豆腐である。

内湯「玉の湯」に続く旅館棟イ棟の廊下

夕食を済ませて、湯治棟3号から女性浴場「玉の湯」までは迷路のような廊下を辿っていく。階段の昇り降りが多いからお年寄りは難しいと思いきや、館内案内図を見るとエレベーターが2機ある。観光ではなく湯治目的でここを訪れるお年寄りも少なからずいるだろう。できりだけ足音が響かないよう廊下をそっと歩んだ。

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