嚥下モデルver.2_keynote版.001

なぜPTのぼくが嚥下に興味を持ったのか?

ここ数年、STさん向けの摂食嚥下のセミナーや学会などの講師として招いて頂くことが増えました。

PTとして、食事や嚥下に関わることができる。
PTとしての知識や経験をSTさんのために活かせるといいな。

そんな思いで摂食嚥下のセミナーを開催しています。

ぼくが嚥下に興味を持ち、臨床場面で関わり始めたのはPTとして8,9年目の頃からでした。自分の中で姿勢と筋のつながりが意識できるようになってきて、それが食事の際の頭頸部や上肢操作の時にどう影響するかをイメージ・確認できるようになったからだと思います。


PTのぼくが摂食嚥下と姿勢の関係に興味を持つまで

でもその前には姿勢と摂食嚥下のつながりは、他のPTの方同様「自分にはあまり関係のないこと」「STさんに任せておけば良いこと」というイメージでした。

ただ、今思い起こせばぼくが新人の頃に勤めていた病院は、ベテランも多くSTさんの臨床能力が高かったんだと今になって思います。
(ぼくが新人の頃に同じ職場にいた唯一のSTさんが、現在大学で教授を勤めており、臨床・研究で日本だけでなく世界を駆け巡っているスーパーSTさんでした。)

今思い起こせば、そのスーパーSTさん(I先生)のおかげで、姿勢は摂食嚥下に影響することは1年目の時から体験していました。

重度の脳卒中の方で座位保持が難しい方にPT・STで一緒に入る機会を何度ももらっていました。プラットホームにてぼくが後方から、I先生は前方から口腔や舌にアプローチしていました(多分)。患者さんの反応をみながらI先生はぼくに、
「もう少し体幹を伸展して〜」
「もう少し右に重心移動して〜少し戻して〜そのあたり!」
「もう少し頭部軽くして欲しいんだけど〜」
とまぁ新人のぼくには無理難題をふっかけてきたわけです。

患者さんは少しでもグラつくと全身がガチガチに緊張が上がってしまう方。
ぼくは全然患者さんの全身の反応を見る余裕もなく、何が良い座位なのかも分からないけど必死にI先生の指示と、患者さんがガチガチにならないように必死。

そんなわけで当時は姿勢と摂食嚥下の関連性など掴めるわけもなく「大変だった」という記憶しかありません。

そこから7、8年が経過し、田舎の回復期リハ病院に転職しました。そこには若いSTさんしかおらず、PT,OT,STさんの連携はまだまだでした。

その病院で感じたことは、
「前の病院より患者さんの変化が遅い、少ない」ということでした。

ということでぼくは昼休憩の時間に食堂へ行き、STさんの介入場面に立ち会うことから始めました。
視線が落ち着かない…
非麻痺側の手足が落ち着かない…
STさんの声かけが届いていない…
非麻痺側の上肢で食べ物に手を伸ばす度に姿勢が崩れていく…
この方は今食事場面だと認識してるんだろうか…?

といった場面がありました。

ここで数年前のI先生のやり取りが頭をよぎり、そういえば姿勢と食事は関連あったなと思いまして、ぼくが姿勢の修正とタッチや視線誘導などで感覚入力をサポートし、STさんに嚥下の評価をしてもらいました。

そこで嚥下がその場で変化をするってことに気づきました。とはいえそんなことしてるPTは当時ぼくだけでしたが(笑)


筋肉から考える嚥下と姿勢の関係

嚥下モデル:keynote版.004

舌骨・舌に付着する筋は上記のような感じになっております。

こまい(細かい)ですね。えぇこまい。
詳しいことはセミナー(5/9,10に愛知県でやります!)や今後noteにアップしていきたいと思っていますが、
筋肉はどこについてますか?

頭蓋骨
下顎
胸骨
そしてまさかの肩甲骨にもついているわけです(肩甲舌骨筋)。

ごっくんと嚥下をする時には舌骨やその下の甲状軟骨が上に移動します。
また口の中で食べ物を飲み込みやすい形にして、奥の咽頭まで運ぶためには舌の動きが必要になります。

すごーく簡単に言いますと、舌骨が上がるためには舌骨の上の筋肉(舌骨上筋群)が短く収縮し、舌骨の下の筋肉(舌骨下筋群)が上方移動を阻害しないように伸張されるゆとりが必要になるわけです。

ということは舌骨上筋群の収縮が弱かったり、舌骨下筋群が伸びにくくなると飲み込みにくくなる可能性があるわけです。

加えて姿勢が崩れたらどうでしょうか?

肩甲骨が下がれば、同側の舌骨は肩甲舌骨筋を介して下に引っ張られるかもしれません。体幹伸展が不十分で体幹が屈曲してしまえば、胸郭が下を向き胸骨舌骨筋を介して舌骨は下方に引かれます。

上記のような場合、舌骨の動きにくさの問題は肩甲骨や体幹のコントロールが原因となっていることもあります。

舌骨や舌も筋肉で動き、位置決定されます。PT・OTさんが食事姿勢を見る理由はここにあります。摂食嚥下を阻害している姿勢の問題をポジショニングにてサポートすることにあります。


「食事」というADLの視点から姿勢を考える

摂食嚥下を含めた食事を皆さんはどう考えるでしょうか?

単に栄養摂取という見方をすれば、誤嚥することなく胃まで食物が届けば良いかもしれません。

でも食事という行為を考えれば、


「食べる」をきっかけに様々な物事を楽しむこと

と考えることができます。


料理の味はもちろん、料理の見た目、お店の雰囲気、
そして一緒に食事をする相手やその会話

そういったことも含めて「食事」だと言えるのではないでしょうか?

食事を楽しむためには、「余裕」が必要です。


そしてその余裕を作るために姿勢制御能力が大切です。


どんなに美味しいものでも、綱渡りをしながら食べたらおいしいでしょうか?
多分味わう余裕なんてないですよね。


「転びそうだな」
「グラグラしてるな」
「どこか掴む所ないかな」

と考えていたら、
それこそどれから食べよう?とか
いま口に入ったのなんだろう?とか
そんな余裕ないと思うんです。

そんな中「おいしいですか?」と聞かれても…という状況かもしれませんよね。


そういった意味でも姿勢は大事です。


さいごに

PTOTさんが転ばない、転ぶ心配をする必要がない状況を作ることや、STさんも筋肉や姿勢制御について少し勉強していくと、全身との関係が見えてくるかもしれません。


5/9,10に愛知県で「PTOTSTで考える食事動作」のセミナーをやります!
セミナー:詳細・申し込み

講師も3人のPT・OT・STそれぞれが様々な視点から話し、実技をしていきます★
もしよろしければどうぞ!


PTOTSTで垣根を作らず、一緒により良い食事動作について今後も考えていけたらと思います。


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