目でみる臨床推論

姿勢分析を今より速くするために明日からできること:座位編その1

姿勢分析。新人の頃の自分はまーー何から見たら良いか分かりませんでした。

学生時代には実習レポートで丸と線で何となく見た目の雰囲気を描いてましたが、そこから何を考えるのか?までを学ぶことはなかったように思います。

むしろ他の評価項目をこじつけて、座位姿勢ではこうなると考える…のようなボトムアップの結果としての座位姿勢や立位姿勢の考察だったように思います。


でも、実際に臨床場面ではトップダウンで評価することが多くなります。

目の前の患者さんは、なぜそのような座位姿勢を取っているのか。取らざるを得ないのか?と仮説を立てながら、他の評価や反応を見ながら要素を見つけていきます。


姿勢分析もあくまで評価の1つです。


私たちの介入のターゲットは、

「患者さんの日常生活を阻害している問題を解決に導く」

ことにあります。


座位や立位の姿勢分析に時間を取られてしまっては、介入の時間を減らすことになります。


いかに効率よく問題点を抽出し、より優先度の高い問題に介入できるか?


が、時間・期間の制限のある中では大切になります。


・時間はかかるが、正確な評価

・時間は速いが、雑な結果


どちらでもいけない訳ですね。


自分としては、


姿勢分析である程度大まかな特徴を見つけ、問題点の仮説を絞り込みながら、介入をしながら、問題点を細かく抽出しながら、解決していく。


ようなイメージです。


この記事は現在は無料ですが、今後も更新し有料記事にしていく予定です。


座位姿勢のランドマーク

*骨のランドマークの触診に自信がない方はここは飛ばしてください!


●矢状面上での重心線が通るライン:乳様突起・肩峰・座骨結節

●脊柱の生理的弯曲:頚椎前弯・胸椎後弯・腰椎前弯

●矢状面での骨盤中間位:上前腸骨棘と恥骨結合が垂直に並ぶ位置
(*実際に恥骨結合を触れて確認することはないです。上記の脊柱の生理的弯曲と合わせてみます)

●前額面での左右の傾き・水平面での回旋をみるポイント
 ・乳様突起(外耳孔)
 ・肩峰
 ・肋骨下部
 ・上前腸骨棘・腸骨稜
 ・棘突起を触れて脊柱の配列・回旋を見る


これらを最終的には、3Dで捉えられることが大事です。
ほとんどの場合、矢状面・前額面・水平面の動きが混合します。


例えば、右の肩峰が低く見える場合にも、
・右肩甲骨の下制・下方回旋
・左肩甲骨の挙上・上方回旋
・体幹の右側屈
・骨盤右下制に伴う体幹の右傾斜
などいずれかの要素やこれらの要素の組み合わせの可能性がありますね。


ただし、これらを短時間で見るには触診のトレーニングが必要です。


良い座位姿勢って何?

上図のような姿勢を座位の基本姿勢として学校では習います。

でもこの姿勢で生活している人はいるでしょうか?


はい、いませんね。


ぼくたちは座るといっても、椅子座位や端座位、あぐら、長座位など様々な座り方をしていますね。

座位は、主に下半身(殿部から下肢)が支持面となる姿勢ですね。(立位であれば足底)


またその中でも足を組んだり、上半身を前後左右に傾けたり、図のような姿勢で常に生活をすることはありません。


同じ姿勢では同じ筋ばかりに負担をかけますし、疲れますよね。


また食事や更衣、トイレ、本を読むなど目的に応じても上半身を様々なポジションを取る必要があります。

ってことは、単純に図のような座位姿勢が取れればOK!!!!


とはなりません。


ぼくは良い(座位)姿勢はない、と考えてます。


どれだけ座位姿勢のバリエーションを持っていて、そのバリエーションを状況に応じて選択できるか?


が大事だと考えています。


では図のようないわゆる教科書的な座位姿勢なんて評価しなくていいんじゃ?


って思うかもしれません。


でもこの図のような「いわゆる良い座位姿勢」を取れることは大切です。


それはこの姿勢が、抗重力伸展活動が必要な座位姿勢だからです。


つまりこの姿勢が取れない、ということは身体のどこかに抗重力伸展活動が不足している可能性がある。ことを示すヒントになっているからです。


姿勢制御の2つの戦略

姿勢制御やバランスなどは本当に色々な本が出てます。詳しく知りたい方は本や文献を読みましょう。


ぼくの姿勢の見方ですが、上図にもありますが大きく2つに分けて見ています。

A . 重力に負けずに自分の身体パーツを持ち上げている
(筋の求心性収縮による制御)

B . 自重に負け、筋や軟部組織の張力で受け止める
(組織の伸長による硬度増加を利用した支持)


という2つの戦略に分けられます。実際の場面では上記A,Bの戦略を左右の身体パーツごとに組み合わさって複合的に姿勢を制御しています。


姿勢保持に必要な筋活動をてこの原理から考えてみる

物理の授業でありましたね。天秤を釣り合わせるには

支点からの重さ(力)× 距離(モーメントアーム)

で計算できましたね。


つまり、重さが同じでも、支点からの距離が離れれば回転する力は大きくなるってことです。


ということは、

体幹の支点:脊柱(今回は胸腰椎移行部付近)と頭部の位置が離れれば離れるほど、維持するために必要な脊柱起立筋の筋活動は大きくなるわけですね。

ただ円背の方の場合には、積極的な筋収縮を使っているよりも、円背により脊柱起立筋を伸長させることで筋の硬さを高め、それ以上前に傾かないように止めています。

この戦略しか取れない患者さんはそのままの座位保持は可能ですが、脊柱起立筋の求心性収縮が弱くなっている場合、さらに体幹を前に傾けると保持しきれず前に倒れそうになったり、上肢の支持が必要となります。また体幹を後ろに起こす際にも上肢の参加が必要となったります。

(逆にこのおじぎが上肢の支持を使わずにできるかにより脊柱起立筋の求心性収縮の能力を評価することもできますし、前傾角度の設定によりこれらの筋トレとしても利用できます。)


骨盤・腰椎レベルでも同様ですね。支点となる座骨と脊柱の位置が離れるほど、骨盤前傾・腰椎前弯のために必要な力は大きくなります。


座位での抗重力伸展

そうなると座位での適切な抗重力伸展とは
・支持面上のできるだけ近い位置に身体パーツが積み上がる
・円背の方であれば、胸椎は後方に伸び上がり、腰椎は前方(前弯)、骨盤も前(前傾)方向へ移動する

ような位置関係となる座位を取ることができるか?どうかが大事になると言えますね。

そしてそのためには、

背筋群の求心性収縮:胸椎伸展
股関節屈筋の求心性収縮:腰椎伸展(前弯)・骨盤前傾

が必要になりますね。


では座位における抗重力伸展活動が何となく理解できたところで、座位姿勢の分析を始めるにあたって、どうしたら座位の必要な情報を評価できるか?を考えてみましょう!


座位分析の第1歩「C」の形を見つけよう

まずは矢状面から。脊柱には生理的弯曲(頚椎前弯・胸椎後弯・腰椎前弯)がありましたね。

ということは横から見た時に、頚椎・胸椎・腰椎で3つの「C」があるか?がポイントになるわけですね。

また上図のような円背の場合には胸腰椎は屈曲し、頚椎は過度な前弯、つまり「C」は2つになります。


勘違いしてはいけないのは「C」の数が3つなら良いわけではなく、身体パーツが支持面上のできるだけ近い位置にあるか?も見ていく必要があります。

姿勢の修正は目的ではない!!!!!

「C」は3つでも腰椎前弯や胸椎後弯が過剰で、腰痛や肩こりがあれば問題ですし、また生理的前弯っぽくても、腰痛など何かしら訴えがあれば、その状態を保持するための筋の使い方に問題があったりします。

姿勢はあくまで患者さんの訴えや日常生活で困っていることを探るためのツールの1つです。姿勢が良くなっても症状が残るなら、それは見た目しか変わっておらず、症状を引き起こす要素にはアプローチできていないサインです。

次は前から見てみましょう。教科書的であれば、脊柱は「C」がなく垂直になるのが良いといえます。そんな人みたことないけど(笑)

また抗重力伸展活動がどこかで不足していれば左右の弯曲が出てきます。上図では3つのCがありますね。

ただ脊柱はつながっているので、3つのCがあった場合、どこかの崩れがまず存在し、その崩れを補いできるだけ身体パーツを支持面上に近づけるように代償して他のCが作られている可能性もあります。


そしてCの形を見つけたら、そこから筋の状態を予測します。

凸側は筋が長くなっている:筋の過度な伸長・遠心性収縮
凹側は筋が短くなっている:短縮までは求心性収縮

と推測できます。そこから実際に筋を触診したり、可動域や筋の伸長性、筋力を見ながら、筋力の問題なのか伸長性の問題なのかを確かめていきます。


まずCの形を見つけることで、評価のターゲットになる部分や筋を絞り込むことができ、効率的な評価・介入につながるきっかけになります。


トレーニング:「C」の形を見つけよう。

では上の写真、うちの息子ですが、座位を評価してみてください。

・Cの形はどうなっているか?
・そこからどの部分の筋が長く/短くなっているか?

考えてみてください!

答え合わせは次回に。


最後までお読みいただきありがとうございました!

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