見出し画像

橋を架ける仕事についての往復書簡#02

長野より、瀧内です。

往復書簡はじまりましたね。トークイベント的な即興とは違って、しっかり考えて返すって新鮮です。洪さんから往復書簡をnoteでやろうと提案されたとき、文通みたいで気恥ずかしい感じもしなくはなかったですが(笑)

私たちのような企画をつくる人たちにとって、こんなにも難しい時期が来るとは思ってもみませんでした。でも、集まれないということでいくつか気づいたことがあります。名の知れた方をお招きしてのトークイベントをやって、それなりに伝えた気になっていた。その後の忙しさから、たくさん来たね、良かったね、で終わることもあったり、継続的に伝えないと変わらないのに、その場限りだったり。
変わる可能性を生み出すことの放棄だった気もしますし、放任というか、可能性のデザインをちゃんとできてなかったなあ、と思います。きっと行列や混雑も一緒ですね。本当の意味での「場の持つ力」は実はそこじゃないような気がしています。まあ、このあたりはまたいずれ。

さて、僕にとっての「橋を架ける仕事」とはどんなものか、というお題をいただいていました。「自分にとっての」ということをちゃんと考える必要があると思い、10年ちょっと前にこの仕事の方向へ舵を切ったな、と思う頃に遡ります。
高等専門学校を卒業して紆余曲折しつつ(専門職種を渡り歩くという変な経歴を描きつつ)子どもの頃からの憧れでもあったデザインの仕事に行き着き、ほぼ独学のようなカタチでキャリアを積み重ねていこうとするわけですが、仕事としての労力に対しての対価があまりにも低く(とは言えこの仕事をする人で多く儲けたいと思っている人はそんなにいないような気もしますが)ある意味体力任せで、ずっと続けていく仕事だとは思えずにいました。
しばらくして知ることになるのですが、長野だけではなく、東京など一部地域を除き、ほぼ同じような状況。研究していくと、デザインの費用対効果がうまく機能していないことが大きな要因。本来はローリスクハイリターンが期待できるものがデザインの力なはずなのに、ほとんどのケースでそうなっていないことがわかってきました。作る人にとって良いものこそが効果がある、と信じがちですが、よく使ってこそ効果があるわけで。今でこそあたりまえですが、ディレクションをちゃんとして、彼に頼むと効果がある、みたいになることが、ひとつ回答ではないか?と思って動き始めたことがきっかけです。
でも、おそらく他業種から入ってきたからこそのやりかただったように思います。だって、クライアントから言われたように作らないわけで。業界の常識的には絶対的にありえない(笑)

そうやって、ディレクションの力をまた独学で高めていって、コミュニティデザインにも出会い、課題解決のために自主提案してたり、何気なくふと聞かれたことにこじ開けるように提案をし続けたりしていったわけですが、結局、デザインの周辺のことだけでデザインがうまく作用する環境をつくれるはずもなく、そもそもの仕組みを変えないと、と提案(現実的な対処と将来的な展望を同時に)したりしていくと、うまくいっていない状況が変わっていく。そのための「つなぎ合わせ」をしていたように思います。
もしかしたら外からの協力者かもしれないし、知らなかった情報への糸口かもしれない。つなぎ合わせるだけではなく、そこからの初動もお付き合いする(自走できるな、と感じられるまで)そこまで関われる(発注してもらえる)仕事は多くはないですが、そんな橋渡しが「橋を架ける仕事」のひとつのあり方、僕なりの方法論かもしれません。このあたりを主軸に置きつつ、さまざまなバリエーションがあったりもしますが。
複雑化している物事の絡み合った糸をほどきつつ、必要に応じて新しくつなぎ合わせ、理想論で終わらない現実的な視点であるべき姿をつくる。それが僕のとっての「橋を架ける仕事」です。

そうやって今ではそのディレクションのみ、まさしく「橋を架ける仕事」のみの受注も増えてきていて、もちろん手応えも感じてはいますが、見える範囲の出来事だけだったとしても、1000ある課題に3も対応できていないような無力感も同時に感じています。その無力感が精神的な疲れがじわじわと広がっているのも感じていたりもします。
洪さんも、この仕事をしていて疲れたって思うことないですか?この仕事をする上で、モチベーションの源泉ってなんでしょう?
この仕事に携わる人たちが倍増どころか、職業として認知され、爆発的に増えるいいなと思って、洪さんとの企画だけでなく、他のトライも着手しはじめていますが、その人たちにもこの仕事の大変さももちろんありつつ、その先に見える景色、価値、やりがいのようなことを(自分自身が独学だったから、一般的ではないと思うし)他の人の思考を伝えるようなことができれば、少しでも増える方向につながるような気がしています。だって、洪さんってすごくたのしそうに仕事してるし。

瀧内 貫

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?