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2021年のブライダル業界予想(2021年1月7日配信)

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あけましておめでとうございます。
アナロジーの市川です。本年もよろしくお願いいたします。

第64回目はテーマは「2021年のブライダル業界予想」です。
新年一発目ということで、昨年からの大きな変化を踏まえて2021年はこんなことが起こるんじゃないのかなぁということを書いてみます。

(5563文字 / 約11分半で読めます)


2020年の業界変化を振り返る

昨年、というよりはそれ以前からの大きな流れとしては、
①需要減による供給過多状態でブライダル業界のビジネスモデルはすでに破綻
②過剰な広告宣伝(集客)、強烈な営業(成約率)、青天井の見積り(単価)が進み顧客体験価値が失われる
③顧客離れが加速し、並行して人材離れも進む
④そんな厳しい状況でもなんとか業績回復を目指し…②に戻る
こんな感じの悪循環に陥っていたと思います。

先月も昨年もブライダル産業フェアのセミナーの多くが「集客アップ」「成約率アップ」「単価アップ」がテーマでしたしね。

そして昨年、コロナウイルス感染拡大が起こります。
・緊急事態宣言発令(4月)
・結婚式の延期、キャンセルが多発。顧客対応を巡ってSNSでもかなり投稿が見られる(4月-5月)
・BIAが新型コロナウイルス感染拡大防止ガイドラインを策定(5月14日)
・NEW NORMAL for HAPPY WEDDING宣言(6月22日)
・オンラインウェディングや密回避レイアウトなど、新生活の様式に合わせて開催できる商品開発が進む(5月-9月)
・フォトウェディング需要の増加(9月~現在)
・少人数での結婚式開催が戻り始める(10月~現在)
・希望退職やボーナスカットなど雇用状況が悪化(10月~現在)
今思い返すとざっとこんな感じでしょうか。

これって「コロナによって引き起こされた業界の大きな変化」のようにも見えるんですが、「もともと起こっていた流れがコロナでより急速に顕在化した」ものだと僕は捉えています。

・結婚式は無理してやらなくてもいいかな?
・わざわざ大人数呼ぶ必要ある?
・キャンセル料が高すぎてつらい
このような潜在的なユーザーの声が一気に出てきただけじゃないかなと。だから遅かれ早かれ起こる変化だったのがたまたま2020年に一気に起こった、という感じです。

本当に様々な商品やサービスが登場した1年でしたが、企業ごとのスタンスの違いやこの変化に対してどこまで内部で準備いていたかで対応スピードにも大きな差が出ました。

では2020年のこんな変化を踏まえて、2021年はどんなことが起こっていくのか、考えてみます。


ブライダル業界全体での変化

昨年の緊急事態宣言下のように完全に施行ストップという状況には至らないと思いますが、少なくとも上半期は厳しい状況は変わらないと思います。

オンラインが浸透した結果として逆にリアルで会うことの価値が高まった、結婚式という機会の貴重さが際立つようになった、のようにプラスにも取れる価値観が生まれたという見方もできますが、それはまだ先の話。

2021年はもっと現実的で、キャッシュをどう調達するか、ワクチン開発がされるまでの間どう生き残るかの方がはるかに重要になるでしょう。

大きなトレンドとして個人的に起こりそうだと思っているのは次の5つ。

①結婚式の少人数化
密回避の背景と、結婚式するなら親族だけでもいいよねという価値観の変化から、この流れは続きそう。

②オンライン接客
顧客側がオンラインに慣れてきているので、ブライダルフェア参加は3時間から、みたいな概念は大きく崩れそう。オンラインでできることはオンラインで、行かなければわからないことだけ現地で、みたいな感じに。

③結婚式のライブ配信(オンラインウェディングは微妙)
これをメインにした商品は流行らなそうだけど、オプション商品としてのニーズは一定残りそう。ただ、普通にカップルがインスタライブすればいいのでは?と思うので、お金取れるかどうかは微妙。

④副業解禁
雇用調整助成金がなくなると企業側が雇用しきれなくなる、社会全体で見たときに副業のフリーランスの人を活用することに慣れる、という背景からブライダル人材の副業は大きく増えそう。ただ、同業での副業規制は入りそうなので、するとしたら異業種。

⑤結婚式以外の商品開発
結婚式ももちろん頑張るけどもうそれだけでは無理だと考え、自社リソースを活用して結婚式以外でどうやって稼げるかを考える企業が増えそう。

2020年で起こった変化は基本的には続く。ただその流れの先に明るい未来はないので、さらにその先を見据えた仕込みをしていく1年になる、と予想します。


結婚式場の変化

キーワードは3つ。
①商品の変化
②人材の変化
③集客の変化

①商品の変化
ここ数年の結婚式は金太郎飴化してどこで挙げても同じと言われることもありますが、これはちょっと違うと思ってて、ユーザーニーズに対応するようにどの式場も商品開発などの努力をした結果、結婚式そのものの品質では差がつかなくなってきた、と書く方が近いかなと思います。

そうなると、今後は結婚式そのものではなく、プロセスや人材、デザインなど結婚式以外まで視野を広げて独自性を考えることが求められることになります。

つまり自社会場の情報に触れた瞬間から結婚式後までを一貫した体験となるように、その前後の商品開発に力を入れていく会場が勝機を見出すんじゃないかな、と。

②人材の変化
結婚式のコンテンツ提供に必要な人材をすべて自社で抱えるという内製化とは逆の流れが起こると思います。自社の強みにつながる人材を厳選して雇用し、そうでないところは外部から調達しようという流れ。

これまでのブライダル業界では不足したリソースを補うという意味合いでの人材調達が多かったですが、自社では強みを見出せない領域を強みとする他社と組んでお互いの強み弱みを補う、という提携が起こりそうです。

この変化を考えて、自社内ではゼネラリストよりスペシャリストを育成すると考える企業も増えそうな気はします。

③集客の変化
ブライダル媒体運用の最適化、だけではもう足りなくなるでしょう。
かといってブログを書く(SEO)、Instagramを運用する、リスティング広告などウェブマーケティング施策についても戦術の最適化だけでは(一定成果は出るでしょうが)起死回生!とまではならなそうです。

これからの式場集客で必要になるのは機能的な訴求に加えて情緒的な訴求。

例えば「料理にこだわってます」という会場は多いですよね。でも料理を蔑ろにしている会場はないわけで、こだわっていること自体が独自性には繋がらないのです。

「人生で忘れられない一皿を」をコンセプトに、食材調達、人材採用・育成、調理法、メニュー設計に徹底的にこだわる、そのこだわりを実現するためにこんな取り組みをしているというプロセスを継続してnoteやSNSで発信し続ける、といった具合に。

そしてそのコンセプトや取り組み、やり続ける姿勢に共感し、拡散や集客につながる、というイメージです。

差別化とは、自社のユニークさを顧客に価値と認められること。誰もやっていない商品だから差別化されるわけではなく、それが価値と感じてもらえることではじめて差別化と言えます。

一朝一夕でできるものではないですが、こういった覚悟をもって取り組む姿勢が集客の優劣につながると思います。


業界従事者の変化

主にプランナーやスタイリストなど接客に携わる職種の方を想定していますが、ポイントは3つ。

①求められる能力が変わる
これまでは多くの式場でマニュアル通りに自社商品を確度高く売ることが求められていましたが、これからは様々な変化に対応して顧客への価値を提供できる能力が求められるようになります。

この背景には環境の変化(オンライン化など)と顧客の変化(多様化)があり、これさえ出来ていれば正解というものがなくなっていくからです。

例えば、自社集客強化の文脈からブログを書いたりInstagramの個人アカウントを運用したりすることも求められるでしょうし、ブライダルフェアだけでなくオンライン接客での新規成約率も求められるでしょう。ドレス試着アプリを導入する企業も出てくるかもしれません。

なので、台本通りに接客して成約率や単価の結果を出すことがすごい、という価値観から、顧客のニーズに臨機応変に対応して結果を残せる人がすごい、に変わりそう。

②格差が開く
マニュアル通りに動く人の価値は下がり、逆に自分で判断して動ける人の価値が上がります。
これまで直接の対面接客では新規取れていたけどオンラインは苦手なんでやりません、みたいな人の価値は暴落します。

また、式場の変化でも書いたように企業側も人員の頭数を揃えようではなく、業務を効率化して必要人員数を減らし核となる強みを出せる人材を少数精鋭で採用しようというマインドに変わっていくと思います。労働集約型からの解放とでも言いましょうか。

極端に言うなら人員数が3割減って売上は変わらず、その分1人当たりの給与は3割上がる、みたいな流れになりそう。

そうなるとその流れに対応できる人は引く手あまたで(給与も高い)、できない人は置いて行かれる。3年以上であれば経験年数とかはあんまり関係なくなるんじゃないかなぁと思います。

③フリーランスが増える
この流れが進んでくると、自分一人でもできる(と感じる人)が増えると思うんですよね。
特に最近は副業・独立する人も増えますし、プランナーの場合は特に資格も必要なく始めるハードルも高くはないですし(ヘアメイクは美容師免許必要ですが)、自分もやってみようかなと始める人が増えそうです。

とはいえ、いきなり顧客を自分でとるのは難しいですが、対企業であればニーズは増えると思うので、ブライダル業界の中での自分の生き方を自分で決めるというのが大きな流れになりそうです。もちろん、スキルと自信がある人に限りますけどね。


変化を予測して先に動く

こんな変化がもし起こるとしたら、今から何ができるでしょうか。
少なくともこれはやっといた方がいいだろうと思うことは2つ。

①勉強する
どちらかと言えば、本業の周りにあるITやマーケティング、ブランドなど勉強しといたほうがいいかな、と。

接客や営業職の人がエクセルやパワポ、Canvaを高度に使えたとしても直接成果につながることはないので普段だと敬遠しがちなテーマなんですが、振り返りの分析を自分でできるようになったり、資料をお客様に合わせて自分でカスタマイズできたり、自分の考えとかイメージを自分のデザイン・言葉で表現できるようになることで、本職スキルの成長スピードは速くなると思うんですよ。

また、これから新しく出てくるであろうサービスはどう考えてもこれらの要素が必要になるので、事業理解を深めるためにもやっておいた方がいいです。

②情報発信力を鍛える
Instagram、twitter、tiktok、ブログ、なんでもいいんですけど自分の考えや想いを不特定多数の人に発信する訓練はしといたほうがいいと思います。

ちなみにテーマは仕事に関すること。今日のランチのブログ書いてもInstagramに猫アップしてもあんま意味ないんで…。

インフルエンサーになれって話では決してないんですが、これから企業で働くにしろ副業するにしろ独立するにしろ「あなたと仕事する、あなたに依頼するとどんないいことがあるんですか?」というセルフブランドの確立は必須になってくると思うんですよね。

で、これだけ情報過多の時代に「会えば話せばわかります!」っていうは非現実的なので、匿名アカウントでもいいし自分で勉強したことでも想いでもテーマは問わないので、発信力を鍛えていきましょう。 


ちなみにアナロジーではこんなことをする予定

●コンサルティング
お仕事としてはこれまでと変わらずですが、社内でも定期的に勉強会を実施してより精度の高い支援を実現していきます。

また、並行してブログやメルマガだけではなく、セミナー開催やYoutubeとかでの情報発信の増やしていこうと思ってます。

共通に必要な情報はオープンに、個別の課題解決はコンサルティングとして、という切り分けです。

●HRサービス
これまでは人材紹介だけでしたが
・求人広告掲載
・業務委託プランナーと結婚式場のマッチング支援
など支援メニューの拡充を図ります。先ほど書いたような人材の流れが起こるだろうと考えているので、そうなったときに必要な機能を提供できるようにしていこう、という意図です。
https://bridal-oshigoto.com/

●Lejuのグロース
まだ先月サイトリリースしたばかりですが、詳しくは年末のメルマガにも書いたのでその内容に沿って着実に、でも高速で進めていこうと思います。
https://ichimarke.net/leju/


あと僕個人としてはブライダル業界の池上彰を目指します。
・ビジネスとしてのブライダル業界の難しいことを分かりやすく解説する(ニュース そうだったのか!)
・たまーにエッジ利かせて切り込んでいく(選挙特番)
自分の意見を発信することには慣れてきたので、よりわかりやすく価値ある情報に磨いていけるようにというのが個人的なテーマです。


今回のまとめ

ということで2021年のブライダル業界予想でした。

1年後に振り返ったときにどれくらい当たっているか答え合わせが怖いですが、今の事実やトレンドを見るとこんな感じじゃないかなと思います。

あと予想は誰でもできるので、こうなると予想したから今こうするまでをセットで考えて日々頑張っていきましょう。

では、今年もよろしくお願いいたします。

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