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ショートショート、短編小説 創作集

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メンバーによるとってもステキな作品集をまとめてみました。 不思議な体験談、短編小説、ショートショート、イラストに物語つけてみた! などなど、盛りだくさんです。 ぜひご一読ください。
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#ショートショート

文芸社×TOKYO FMのラジオドラマ賞を受賞作「こまちねず」をラジオドラマ化!

10代から20代に変わる頃の混濁した「あの感じ」をどうぞ(全文掲載) こまちねず 「東京に降る雪はどんなかね」 あれから3年が経ったが、 東京にはまだ雪が降らない。 このままずっと 東京には雪が降らないんじゃないかと思っていた。 雪が降らなければ、 僕は美浜に連絡する用が無い。 美浜も同じだ。 ニュースで東京に大雪が降ったと知れば、 きっと連絡してきてくれるだろう。 今日も僕の隣には知らない女の子が裸で寝ている。 僕の布団は裸で寝られるほど、温かいのに、 外は随分

【ショートストーリー】世界中の人々が滅亡とループを自覚した世界を描いた短編

終末は週末に 死のう。 死んで全てを終わらせよう。 夜にかけるとか、生きていたんだよなとか。 とにかく死にそうな音楽をかけ、テンションを上げながら階段を昇る。 私の走馬灯は、どんなだろうか。 走馬灯って、そもそもどのタイミングでどんな尺で流れるのだろうか。 私は、これから死のうと言うのに、そんなことを考えてワクワクしていた。 ビルの屋上のフェンスを乗り越えて下を眺める。 そして ふと気が付くと逆さまの景色が、頭から足に向かって流れていった。 そうか。 私も

【短編】ちょっぴりドジだけど、心優しい吸血鬼少女の恋物語

かくしごと 私はいま、人生最大のピンチを迎えている。 彼に私の正体 〈吸血鬼であること〉 がバレそうなのだ。 天体観測が趣味の彼とは、 夜、一人で〈食料〉を探し歩いていたときに出会った。 彼の何かに惹かれたのか…… 幾度かの逢瀬の末、付き合うことになった。 ヒトと付き合うのは別に珍しいことじゃない。 私だって吸血鬼のお母さんとヒトとの間に産まれた。 吸血鬼は世間で言われているような、 血を吸った相手が吸血鬼になったり、死んだりすることはない。 吸血鬼は遺伝だ。 子

【ショートショート】コンビニでいつもクレームを入れてくるおじいさんの意外な正体

嫌われ松尾の一生 とにかくこの街の治安は最悪だ 俺がバイトをしているこのコンビニはその中心地だ 客のクレームも半端ない 中でも最近現れた新入りクレーマー『松尾の爺さん』は最悪だ 脈絡なくキレてくる 1ヶ月前、飲料コーナーで突然キレ始めた 「おい、誰かこっちこい! 冷蔵庫の奥で品出ししてるお前だよ!」 俺は渋々、松尾の爺さんのところに出て行った。 「何だ、この生ヌルいビールは!」 俺は松尾の爺さんが持っているビールの温度を確かめた 冷えてるじゃねーか これ以上どうしろ

優しい雨の音とBGM。そして、詩的なショートストーリー

【イラストに物語つけてみた! 第二弾】の五作目。 儚く美しい世界観と、雨の音に合わせて描かれる「あまやどりの話」 作は【2号】が担当。 あまやどりの話             ある雨の日、彼が待ってたの 「傘、無いと思って」って 本当は折り畳み傘を持っていたけど 「ありがとう」って 傘に入れてもらったの それから、何度も雨の日だけ待ってるのよ わたし、いつからか雨の日が待ち遠しくなってね でも、朝から雨の日はさすがに傘、 持ってきてるもんね 待ってるわけ