論33.レッスンの活用と支援

○情報での満足~レッスンのスタンス

 全ての情報を伝えるのは無理なことです。若くてとか未熟な人へなら本の100ページくらいを統括したこととして、話せなくもありません。それは、概論としての範囲に留まります。
一般論というのは、聞く人個人にとっては、大して重要な情報ではないのです。誰かの本を一冊読めば済むくらいのものです。
しかし、そういう本も読まない人に伝えることが、レッスンの充実やサービスとなってしまうような風潮です。それは、私が思うに、とてもレッスンの本意ではないのです。もちろん、レッスンに入るガイダンスとして、相当の期間をおくということで、準備とするような考えもあるでしょう。
しかし、私はどうも、不要のように思うのです。特にそれを求める人、それが必要と思っている人ほど、ない方がよいと本音では思っています。(しかし、それをレッスンとか、レッスンに欠くことないものと信じている人の頭を変えることは大変です。説明がないとやめてしまう人に、説明せずにやめさせてよいのかという問題になります。そこは個別の事情に応じて判断せざるをえません。レッスンで上達を目指すか、サービスの満足を求めるかで分かれてきているようです。
個別になると、どのタイミングで、どのように適切な情報を与えるのかは、とても難しいことになり、そこにこそ、研究所の本意、本当の価値があるのです。
 
●「レポート」の活用
 
どの分野もベテランになると、一目見た表情や一声聞いた声で相手を把握していくものです。トレーナーは一目見たとき、一声聞いたときから、今の状態をシミュレートします。
口頭でないと伝わらないこともありますが、それ以外は、レッスン時間ではレッスンに集中し、その他のことは、メールやシートで済ます方がよいと思います。
レッスンの後で書き出すと考えがまとまります。まとまらなくても感想やレポートを出してもらえば、トレーナーは大体わかります。何が聞きたい、何が希望、何が不満、何を期待なのかと確認できます。
方向性や優先順位などが、本人のなかで変わることもあるので、毎回、その時点での希望を知ると、トレーナーの考えと擦り合わせができ、早めの軌道修正もできます。
やりたいことを優先するか、必要なことを優先するかは、最終的に本人の選ぶことと思っています。

<レッスンレポート>
トレーナー宛 内容評価[ /10]自己評価[ /10]

(1)レッスンで学んだこと、気づいたことなど
1.
2.
3.
4.
5.

(2)レッスンの効果
1.
2.
3.

(3)鑑賞予定、お勧めの人・番組・本・店など(「 」にタイトル名、その右にアーティスト名、( )にカテゴリー名)
「 」 ( )

(4)メッセージや提案、レッスン以外で気づいたことなど

(5)あなたの活動について(あるいは、その他)

------------------------

●「症状のアンケート」の利用

 声や体の不調となると、病気と同じように症状について尋ねることになります。
どういう症状が、いつから生じたのか、そこからプロセス、それへの対処法やその結果について、知る必要があるからです。
 「それ以前と何がどう変わったか」とか、「今、困っていること」「こちらに聞きたいこと」や「求めていること」まで、シートを基に尋ねます。
医者へ紹介した人もいますし、そちらの紹介もあります。病名、処方や薬を聞くこともあります。かなりプライベートなことまで話す人もいますが、どこまで関わるのかは、個別の症状によります。トレーナーは万能でないことを知りましょう。より適切な専門家や機関が対処する方がよいことも多いからです。
 もちろん、こういうアンケートは、特別なとき以外、使用しません。

<症状アンケート>
喉のトラブルに関わることであてはまるものに〇をつけてください。
1. 喉がよく痛くなる 
1a.大きく出すと 1b.長く話すと 1c.感情的に出すと                  
2.せきばらいをよくする                     
3.声がよくかれる 
3a.話している途中 3b.夜に 3c.翌朝に                      
4.たんがよく出る                         
5.よくむせる                         
6.声がよく出にくくなる 
6a.何もしなくとも 6b.お酒を飲むと 6c.少し長く話すと                    
7.喉にときどき違和感がある                    
8.喉がよく渇く                       
9.子どもの頃から喉をよく痛めていた               
10.喉を気にしていることがよくある              


これまでに訪れた音声医(耳鼻咽喉科)や声関係の治療機関と時期と期間
(                 )
呼吸器系の病気
(                       )
今飲んでいる薬 
(                    )
アレルギー
(         )
嗜好品 たばこ (    歳から1日    本) 
お酒(     を1日    杯)

○待つ

 レッスンで、評価や方法について、すぐに伝えず、様子をみることが少なくありません。それには、いろんな理由があります。何事も対処した結果をふまえ、時間とともにわかってくることも多いからです。
最初につくトレーナーは、とても大変です。2回目、3回目と相手に応じて修正していくからです。1回だけなら、サービスのようなものです。
普通、2人目のトレーナーの方が、「レッスンがよかった」となります。それは初回の情報で、予め、修正できるからです。
「1回だけでも全てわかる」、「10分くらいあればよくわかる」、というトレーナーもいます。相手のタイプ、トレーナーの経験、その相性などによって、理解の程度はさまざまです。
クライアントにも、その日の調子が大きくブレる人もいます。慣れていない人や緊張しやすい人ほど、その日の調子に左右されるのです。いつもと全く違う状態になっている人も少なくありません。
そこで、初心者には、時間よりも日数を多くバラすように勧めています。つまり、1回の時間よりも回数を多くするのです。
2人のトレーナーについていると、発声に相性も関係しているのが、とてもよくわかります。テクニカルな問題よりも、人としての相性が左右してしまうのは、あまりよいことではありません。
やがて、いつも同じ状態に整え、どのトレーナーのレッスンでも、充分活用できるようになっていくことです。
それが実力のつく前提です。プロでも、最初から、うまくトレーナーを使い切るのは、難しいことです。

○レッスンの周辺のサービス

レッスンの周辺のサービスとしては、次のようなことが考えられます。
時間、プライバシー、方針、説明
わかりやすい、ていねい、明確
知識、人脈
日常生活へのアドバイス、方法と進め方、調整
第三者の視点、モチベーションづけへの努力
セカンドオピニオン、カウンセリング、コーチング
配慮、励まし、協力、個人的対処

○目的とのズレ

トレーナーとクライアントの関係というのは、様々なものがあります。
レッスンに関係のない話が多い人もいます。レッスンも人と人ですから、たまには個人的な話をするようなことがあってもよいとは思います。
クライアントが話すのは、レッスンの時間なのである程度、自由と思います。しかし、トレーナーに聞くとなるとトレーナーにも聞かれたくないし、しゃべりたくないこともあります。特に若いトレーナーや女性のトレーナーに、個人的関心で聞く人もいるようです。「目的の再確認をするように」とトレーナーには言っています。
ドクターショッピングと同じく、トレーナーショッピングでたくさんトレーナーを回る人もいます。なかには、いろんなサービスで判断する人も少なくありません。それは、「本来の目的と違うのでは」と思うこともあります。
1回だけのレッスンでよいと思うトレーニングもありますが、持続しなくては価値のわからないものもあります。ワークショップなどでは、集団の上に、一日で効果を感じる見せ方や組み立て方が問われます。まさに トレーナーの演出力中心になりかねません。道具やPCツール(分析など)を使うのも、そういう面では有効です。
しかし、ここのマンツーマンレッスンでは、枝葉を除き、幹と根を育てようとするのを主意とするものです。

○ランキングの信頼度

 人数、サービス、レッスンのレベル、効果、有名人、出身、経歴、体制、カリキュラムなどについての評価は、どこまで当てになるのでしょうか。自分の専門分野で比べると、わかりやすいものです。指標そのものが違うと思われるものもけっこうあるのは驚きです。

○レッスンと研究

ここのレッスンは、共に研究していくというものです。そのために、話し合うことも大切です。しかし、その前に、やるべきことをやっていくことが必要です。
個別に、10人いたら10人のやり方があります。トレーナーもクライアントも十人十色です。そこでオーダーメイドのレッスンなのです。
 もちろん、あらゆるクライアントがそれを望んでいるわけではありません。しかし、長期になれば、そのような方向へトレーナーが引き上げていくことです。そのためのベースを整えていくことは、とても大切なことです。
なぜなら、声は、ただ発声していたら魅力的になっていくわけではないからです。それは、日常生活はもちろん、全人生の結晶したものともいえるからです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?