論18.声の強さ、耐性について

Q.なぜ、ヴォイストレーナーの声は弱いのか。☆☆☆

〇ヴォイストレーナーの声は弱い?

最近、よく聞かれるようになった質問です。きっと、トレーナーは、声が強く大きいとか、太く深いと思って、会って幻滅したのかもしれません。しかし、ヴォイストレーナーというのは、必ずしも強い声を出せる人でも、強い声の出し方を教えることを専らとしている人ではありません。

ここは、ヴォイストレーナーに何を求めるのかで違ってくるでしょう。もちろん、全てをできるというトレーナーもいますが、そういう人に限って、大体は、全て薄めている、つまり、平均的にそこそこにできるということが多いでしょう。

私の研究所では、一人の受講生に複数のトレーナーがつく複数トレーナー制で行っています。これは、全ての問題に対応できる、あるいは、全てのタイプの人に対応できるトレーナーは、ハイレベルにおいてはどこにもいないと知っているからです。

〇海外のトレーナーと日本のトレーナー

万能なトレーナーなどは、アメリカやイタリアにもいません。そこで、すでに一流の歌手をみているトレーナーでも同じです。あなたがそうなりたくて、もしその人についても、なれません。 

これまで、たくさんの人が、一流をみているというトレーナーに学びに行ったのを私は知っています。そういうトレーナーの何人かとは面識もあります。しかし、日本人で、そうなれた人はみていません。

もちろん、歌手に限らず、認められるには声の力だけではないのですから、ヴォイトレの第一の目的の声でみるとします。でも、声の力こそ、全くついていないケースが多いのです。

海外のトレーナーと歌手の例から切り出しました。それは、大体において、現在、日本で歌手を教えている人は、他の国のヴォイストレーナーより声が出ない、弱い点で特異だからです。また、日本の歌手も役者も同様に、声は弱いのです。

そこで、プロの歌手、役者が自分を見本として教えると似たことが起きるのは、当然のことです。

それ以前に、そういう人たちは、声が強くなくてはいけないと思ってはいません。ポップスにはマイクがありますから、歌を上手く歌うことと、声の強さ、大きさは関係ないと思っています。または、本人はそうではないタイプなのでスルーしているのです。

もって生まれた声で、そのままでよいと思い、声の強さを求められなかった、求めても得られなかった、得ることをしてこなかったのです。簡単に言うなら、声を強くするトレーニングをしてこなかったし、その必要性も感じていなかったのです。

逆にいうと、それで人並み以上のことができ、認められてきたのです。つまり、高い声、細い声、きれいな声を求め、あるいは、すでにもっている声、質がよく、恵まれたタイプか、高音域優先タイプが、日本のトレーナーには多いのです。

〇ヴォイスコントロールとヴォイストレーニング

ですから、プロの歌手やトレーナーで普通の人よりも大きな声が出ない人はたくさんいます。そういう人は、声は鍛えるものでない、その人に合ったしぜんがよい、と考えています。そうなると、どこが声のトレーニングなのかと、私なぞは思うのです。

そこで伝えられているのは、ヴォイトレでなくヴォイスコントロールであると、私は、二つに分けてきました。

今の日本の歌の現状から、そういう方向に特化したヴォイストレーナーや声楽家を紹介することもあります。私の研究所には、かつて、声の弱いトレーナーも何人かいました。が、今は、一般の人よりも声が弱いというトレーナーはいません。ここには、あらゆる分野のプロの人もくるので、声が弱いのでは、などと疑問をもたれてはやっていけない厳しさがあるからです。

要は、いろんなタイプ、専門のトレーナーがいるので、そこをきちんと知ることです。ご自分のトレーナーに、どこが専門、強いのかを聞くのもよいと思います。それがわからないのなら、私があなたをみて勧めるトレーナーから始めるとよいと思います。


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