論19.「AIとこれからの声」へ~ナレーション、声優、歌手、ヴォイストレーナーの職のソフトウェア化

〇カラオケバトルという歌謡番組

 日本では、カラオケに続き、ヴォーカロイドが実用化されました。これは、ロボット、アンドロイドという2つの進化に相当します。

 歌番組もほとんどなくなりつつある日本のTVで、カラオケ採点機能での点数を競うカラオケバトルの放映が増えました。カラオケ採点機能が改良され、ある面で、審査員以上の公正な判断をしているとみたのでしょうか。そのセンサー機能を人の耳よりも信用をおいたわけです。

ゲームのようなことが、いつの間にか、その点数を1点、いや、0.1点でも上げようとして、参加者が競うようになっています。歌手のゲストコメンテーターでさえ、その点数を基準として聞こうとしているようです。歌の先生、ヴォイストレーナーの仕事を、代行していることになってきたのです。

 十代のオリコンランキングの上位の半分が、ヴォーカロイドの歌曲となったこともあります。高い声と滑舌(早口ことば)を楽しんでのことです。それが生理的快感らしいのは疑いようがありません。ランキングのあとの半分も、AKB48とかジャニーズ系ですから、もはや、ここでとりあげる対象にならないのです。

〇コンピュータの進歩と音楽

 カラオケバトルをクイズやゲームのように興味本位でみていましたが、声の世界での大きな変化であるのは現実なのです。歌番組として、カラオケ採点機を入れないものよりも、多くの人に視聴されているのです。紅白もそうして競った方が視聴率は上がるかもしれません。

20世紀後半、シンセサイザーの登場で、バンドの音づくりは打込みになりました。人間よりも正確に音楽の演奏を文句一つ言わずにこなすのです。しかも、それまでにない音色や音の動きまでつくれます。ドラマーも、人間では32ビート、64ビートなどを正確に持続しては叩けません。同様に、歌手はヴォーカロイドのもつ声域、リズム、音程の正しさに敵いません。まだ勝っているのが発音、高低アクセント、イントネーションの変化ですが、これらもいずれカバーされるでしょう。残るは、音色、その人だけの声です。しかし、それさえ近いうちに代替されそうです。あなたの求める声や有名人の声で読み上げるソフトは、間違いなく出るでしょう。

〇日本でのAI化と“かわいい”

 ハイテク技術での技量、正確さの向上、再現性と、人の耳を通しての音楽、歌の捉え方、脳での聞き方での評価とは、必ずしも比例しません。とはいえ、AIとなると、そういうものさえ取り入れるでしょう。いずれはiPSでの生の声帯で発声できるようなアンドロイドも出てくるでしょう。声帯の代用の発声として、医療リハビリ面での必要から開発されるでしょう。

CDのレベルなら、そこまでの必要もなく、人の声の合成だけでも、ほぼ間に合いそうです。カラオケバトルで、正確、完全な歌唱を競うだけなら、人は、音声ソフトに敵わなくなるでしょう。

 “かわいい”カルチャーに席巻された日本の若い世代は、歌手の歌声が人間の声でなくとも、さほど違和感をもたないようです。それどころか、合成音に慣れてスムーズに移行しつつあるのです。もしかしたらウォークマンあたりから慣れていったのかもしれません。iPod、iPhoneの音にも違和感はないでしょう。すでに、若い世代は、デジタル音をよいものとして、ファミコンあたりから訓練されてきたのです。

〇声優、ナレーター業のソフト化

 声優、ナレーターの仕事は先細りです。ナレーションのソフトが、かなり高い完成度で販売されています。しかも、日夜、改善を続けています。

 通訳、翻訳も、一流は、どの職では特別ですが、それ以外では、通訳、翻訳ソフトに替わるでしょう。

 余談ですが、私の学生時代では、まさか自分が、日常でパソコンを使うとは思ってもいませんでした。1980年代のことです。電動タイプライターはありましたが、アルファベットに比べて日本語の入力自動化の限界を感じていました。

 女性では、和文タイピストというのが花形職、1枚で何千円かを稼げました。写植屋さんは、もっと高く、二千万円ほどの初期投資で一生安泰などと聞いていたものです。今や、和文タイプライターは職とともに消え、街に写植屋さんもみあたりません。職が消えるというのは、簡単なことなのです。

 ちなみに、当時、動画映像、VTRのマスターを1本60分ほどをつくるのに1千万円以上かかっていました。機材もスタジオ代も含めると、今と何桁違うでしょうか。今や、小中学生がそのレベル以上のことをできます。無料で、しかも、すぐに配信までできるようになったのです。

 ついこの間まで、浪曲が日本を席巻していたのに、もはや、その面影もないのを彷彿とさせます。

○シンギュラリティ

 シンギュラリティTechnological Singularity(技術的特異点)とは、人工的な超知能が人の知能を超える特異点です。一説には、2045年(カーツワイルほか)に起きるとされています。

 人工知能(AI、AGI)の開発は、DNA解析、原子力の発明と並ぶ大革命といえます。

○リオから東京オリンピックへ

 たとえば、パラピンピックの選手が、これ以上サイボーグ化したら、オリンピックの記録をすべて上回るのではないでしょうか。

 パラリンピックでは、義足で2015年に10.57秒の記録を出したアラン・オリベイラ選手がいます。ちなみに、ウサイン・ボルト選手の記録は9.58秒(2006年)です。

 すでに走り幅跳びでは、マルクス・レーム選手が8m40まで出しています。(マイク・パウエルは8m95)

 マラソンについては、世界記録が2時間2分57秒、車いすマラソンでは、すでに1時間20分14秒となっているのです。(2016.9月現在)

○AI世界と日本人

「マトリックス」の映画のように、培養され夢だけ見ている状態、夢の中で幸せにくらす方が日本人は、自由を求めて命をかけて戦うよりまし、と思うのでは、とは、松田卓也氏の指摘したことです。「永続敗戦」という白井聡氏のベストセラーに思い当たりました。

Q.テクノロジーの進歩は、どんどん速くなるのですか。

A.集積加速の法則、The Law of Accelerating Returns、これは「ムーアの法則」より派生しました。集積回路の集積度について1960年代に発見されたものです。指数関数的な進歩をするということです。というのは、1年後2倍、2年後2の2乗で4倍、3年後2の3乗で8倍、10年後およそ1000倍、20年後100万倍、30年後10億倍ということです。

 これを、コンピュータの進化のスピードとして、その結果をみると、当たっていると言われます。

Q.AIで、すべての仕事はなくなりますか。

A.アンドロイドは、ロボット(産業機械)以上に、人を助け、人のこれまでの仕事を奪うでしょう。人の仕事として残るのは、自由意思を尊重して、判断して関わること、トップとボトムくらいのようです。

Q.AIは、音楽の創作もできますか。

A.すでにシンフォビア(SYMPHOBIA)の奏でる音楽は、本物そっくりと言われます。ディビッド・コープのEMIは、特定の作曲家ふうに曲づくりをします。

Q.音声入力があれば、キー入力は不要になりますか。

A.iPhoneのSiriは、2011年秋、英仏独語、2012年3月に日本語版がでました。これまでのViaVoiceやAmiVoiceとは、格段の違いがあります。事前の訓練もいらないのです。

 ただし、音声入力は、周りに人がいるときなど使いにくいのが欠点です。いずれ、骨振動の入力、喉の筋肉の動きを捉える技術(NASA)などが、使われるでしょう。

 脳波で入力できるようになるかもしれません。これはBCIブレイン・コンピュータ・インターフェイス、または、BMIはブレイン・マシン・インターフェイスと言われています。

 現に、EPOC(エモーティブ社)は、300ドルで、頭にかぶり16個の電極をつけ、簡単に脳波を扱えるように開発し、普及に拍車をかけました。

Q.AIの音声応答は、使われていますか。

A.ボットという人工知能ソフトウェアで、音声での応答をすることができます。

 コールセンターのなかには、電話の話し声から客のタイプを判別して、もっとも適切なオペレーターに回しているところがあります。それだけでも相当手間が省けるものでしょう。

Q.未来予測のオーソドックスな研究は何ですか。

A.1972年、ローマ・クラブの将来予測での「成長の限界」(MITメドウズほか)が有名です。(ロトカ=ヴォルテラの方程式が使われました)

○ロボットからAIへ

「ロボット」(1920年 カレル・チャベック)

「AI」(1956年 ジョン・マッカーシー)

MOTOMAN(1974年 産業ロボ 安川電機)

Eo(1986年)PS(1996年 ホンダ)

ルンバ(そうじロボット 2002年)

Sophia(2015年4月)

Pepper(2015年6月)、PALRO PARO

そら楽(ドローン、ゴルフ場 2016年)

アルファ碁(2016年3月)1997年 ディープ・ブルー(チェス)、東ロボくん(受験)、ワトソン(クイズほか)

AIBO(ソニー)

ASIMO(2011年 ホンダ3代目)

「教えてgoo」なども、AI使用

Siri、GoogleNow、Cortana

NeoFace

(映画)

ヴィキ「アイロボット」「マトリックス」

スカイネット「ターミネーター」

(マンガ)

ハレルヤ「火の鳥」

「鉄腕アトム」「ドラえもん」「サイボーグ009」

「ドラゴンボール」「攻殻機動隊」

関連記事をfukugenからあげておきます。

〇ことばと手話のAI化と平和

TEDで、ASLアメリカ手話を魅せる英語として演じたクリスティーンさんは、「音は、社会的通貨」と述べました。言葉を話してこそ、人は通じ合えるということです。しかし、手話があれば、理解し合えます。

私たちが、外国で外国語を理解できないとき、孤立化します。コミュニケーションがとれないと、そこで差別が生じます。しかし、通訳がいると対話ができ、理解し合えます。

ことばも手話もなんでも通じるようにAIが発達すると、それで、世界が平和になるということです。

〇通訳、翻訳は自動化に

多言語コミュニケーションサービス本格化。

ジャパンフィッターが2秒で自動翻訳

日英中韓 2020年10ヵ国対応予定

(JTBとパナソニックのクラウド利用)

手荷物配送もラゲージフリートラベルで。

やがて、通訳、翻訳、ツアーガイドも淘汰の時代に。

〇パラリンピックに夢みる

パラ=パラレルは「もう一つ」のですが、もとはパラプレジア=対まひということでした。視覚障害や手足切断の人は、まひではないので、こう変わったのです。

足を切断したために、自由な長さの足をつけられるようになって、まわりにうらやまれたというモデルの人がいましたが、障害した人の働くことが驚かれた時代から、今や、技術の進歩もあり、障害が個性として強みになりつつあるのです。

そもそもカツラもメガネも整形も障害克服技術ですし、コンタクトレンズが望遠になったら、くらいに、身体のサイボーグ化は身近に進みつつあるのです。

パラリンピックがオリンピックの記録を塗り替えていくと廃止されかねないのでないか、と心配しつつも、両足50メートルの義足にしたら100メートル走は一歩とか、など、最近、私は、リハビリから競技になったパラリンピックに、余計な心配とともに、人類の夢を重ねて、見ております。

オリンピックで日本のメダルは最高の41、入賞は45でしたが、そろそろ国をはずしたいですね。日本などの大国は、選手村の外に完全ケアの施設を完備、金にものを言わせるようなメダルレースはおかしいのに、自国のことばかり考えるな、フェアにやろうよ、と思うのですね。欧米が仕切って日本がそこにのる、何処かで見たような。

1ヵ月まえ、8月6、7日とエチオピアでは、100人以上が政府の治安部隊に殺害されたとやら、で、マラソンでリレサ選手が抗議のポーズ。

夢とともに現実をしっかり、みたいものです。

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