見出し画像

アムステルゴールド2016 牽制?

アムステルゴールドレースと言えば、日本を代表とする新城選手が得意なレースだが、今年は骨折によってスタートラインに並ぶことができなかった。

北のクラシックはレースコースを隅々(1000のコーナー)まで知らないと、レースに振り回されて足を使う羽目になる。2016年のアムステルゴールドも例年通り激しい展開の中、位置取りが激しく、集団は伸び、アップダウンが常に集団全ての選手を6時間という長い時間、消耗させながらレースは進んだ。

最後のカウベルグでアタックに入った集団は、例年よりも遅いペースで登り始めるが、選手の表情は非常に険しい。骨折によってリタイアを余儀なくされたジルベールのようなスーパーアタックは見られそうもない。

そんな中、集団左端からスルスルと抜け出してきたガスパロットが、スルスルと集団を抜け出していく。バケランツが反応し他の選手も続く。ガスパロットのアタックは決して爆発力のあるアタックでは無かったし、他の選手もついていけないか?と言ったら難しいアタックでは無かっただろう。

しかし、残り2.3kmのあの場所でグイグイと重いギアを踏み、そのギアを頂上まで踏み切った選手はガスパロットしかいなかった。昨年ジルベールのスーパーアタックに反応したマシューズも、最高のポジションにいたが追走を仕掛けた元デンマークチャンピオン、ヴァグレンについていけない。

ヴァグレンはスプリントも得意なパンチャー。得意な走りでガスパロットにジョインする。

集団前方には各チームのエースが揃い、右端からエナオがアタックを仕掛けようとするが、前に追いつくまでの力がなく踏みやめてしまう。このまま引き下がるわけにはいかない集団だが、すべての選手が「誰か引いてくれ、ゴールまでの下り坂で回復できるだろう」という想いだっただろう。

数名のアシストを残したチームがいたが、アシスト選手が集団前方に上がっていくことすら出来ない、踏めない集団があの瞬間、スピードが緩んだ。

いや、緩んだのではなく全員同じくらい追いかけられなかったのだ。そして、誰しもが必要だった、風を切って踏める選手いなかった。

唯一前を追い始めることができたのは、以前ジルベールの女房役だったヴァネンデール、集団先頭に出て鬼引きを開始するも、前との差は縮まらない。「行かなかった」というのは後で言うことはできる。しかし、最後のスプリントでキレのある走りを見せた選手はソニー以外いなかった。

あの瞬間、もし誰かが捨て身で集団のペースを上げていたら......

しかしその足があれば、もっと早い段階でガスパロットの逃げに乗っている選手がいただろう。レースに「もし」はなかなか無いのだ。

アムステルゴールド2016のレース、最後のカウベルグは、2名の力が集団内で飛び抜けて強かったパワーレースとなった。牽制という言葉とはちょっと違ったレース展開だったと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?