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ニューノーマル市場のブランド分析 ~フードデリバリーサービス編~

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、私たちの暮らし、そして消費は一変しました。マスクは花粉症やインフルエンザのシーズンに限らず、通年で購入し補充するものになりましたし、雑貨店やショッピングモールなどでも、自宅のワーキングスペースの環境を向上させるアイテム類が目立つようになりました。

このようなニューノーマルな時代に誕生し、急速に成長している様々なカテゴリーの市場を、ブランディングの観点で分析・解体し、背景にある世の中の潮流や人々のインサイトを考察してみようと、フードデリバリーサービスを分析しました。

リモートワークの浸透や、飲食店の営業時間の制限を背景に、実際に利用する機会が増えた方も多いのではないでしょうか。街中でも様々なブランドのアイコンのバックパックを見ることが出来ますし、多様なサービスを選択することが出来るようになっています。

そんなフードデリバリー市場がどのように移り変わっているのか、どのようなプレイヤーが存在するのかを分析してみます。

【1】フードデリバリー市場の規模推移

フードデリバリーの市場は新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、大きく成長しました。

ICT総研の調査によると、2019年には4,172億円であった市場規模が、2020年には4,960億円と大きく伸びています。また今後も利用拡大が続き、2021年には5,678億円、2023年に6,821億円に成長すると予測されています。

また、実際にどのように利用されているのかをもう少し深掘りしてみると、フードデリバリーサービスが、人々の生活に定着していることがわかりました。

消費者庁の発表したデータによると、2020年11月時点で約40%の人がフードデリバリーサービスの利用経験があり、そのうち5%が新型コロナウイルスの感染拡大後にはじめて利用しています。

若い世代ほど利用経験があり、1都3県内の利用者のうち1/4が月に1回以上利用するなど、やはり都市部の方の利用率が高いという結果が出ています。

出典:ICT総研 2021年フードデリバリーサービス利用動向調査
   消費者庁 フードデリバリーサービスの動向整理

【2】フードデリバリー市場のプレイヤー

急速に成長しているフードデリバリー市場では、様々なブランドがサービスを提供しています。また、国内の新サービスや海外のブランドが次々に参入してきています。

ICT総研の調査によると、『出前館』と『Uber Eats』が利用者数の多くを占めています。それに『ドミノ・ピザ』や『ピザハット』といったピザ系のデリバリーサービスが続き、その他の総合フードデリバリーサービスが残りのシェアを分け合うという状況です。

今回はピザ系を除いたフードデリバリーサービスのいくつかを、ブランディングやコミュニケーションの視点で分析してみました。

各社HP、リリース情報よりブラビス・インターナショナルが作成

上記の表のように、各プレイヤーを深掘りしてみると、それぞれが独自のポジションを獲得するために差別化を図っていることがわかりました。

例えば、2019年に全社リブランディングを実施した『出前館』は「しあわせは すぐ届く」というタグラインのもと、人と人とのつながりを感じられるようなあたたかい時間を届けるというビジョンを制定しました。

競合となる『Uber Eats』はアプリケーション上でのメニュー選択画面やメールマガジンの中で「今日は自分にご褒美をあげませんか」という文言を使用し、サービスを使用する際の贅沢感を訴求したり、広告で都会的なライフスタイルの世界観を表現しています。

『Uber Eats』ブランドとの住み分けを『出前館』はリニューアルで実行しました。

また他ブランドとの差別化を図っていく際に重要になってくるのが、ブランドカラーではないかと考えられます。

フードデリバリーサービスの特徴的なアイテムとして、ユニフォームや商品を入れる大きなバックパックがありますが、これらは街中でも非常によく目立ち、ブランドの広告としても機能し、ブランドイメージを創っていきます。

重要なステークホルダーであるパートナー(サービスに登録し配達を担うスタッフ)にとっても、ユニフォームの格好よさは魅力に繋がります。

ユニフォームやバックパックなどのアイテムの大きな要素となるブランドカラーは他社との差別化を図り、独自のイメージを醸成していく上で重要なポイントとなってくるのです。

【3】ブランディング視点で今後注目したいプレイヤー

最後に、我々が様々なフードデリバリーブランドを調べた中で、今後、注目したいプレイヤーを世の中のトレンドも踏まえて紹介します。

フィンランド発のサービス『Wolt(ウォルト)』は2021年から日本に上陸し、広島、札幌、仙台とエリアを拡大。10月から東京にも進出しました。

大きな特徴は2点あり、どちらも世の中のトレンドやニーズを捉えたものになっています。

1つ目の特徴は、レストランに提供される北欧デザインのオリジナル紙袋や、購入客へのメッセージをつづることができるカードです。

このようなアイテムによってこれまでの他ブランドにはなかった、人と人とのつながりを感じられるコミュニケーションが実現できています。

フードデリバリー業界ではレストランと配達パートナー、消費者の関係が希薄であったり、それによって起こるトラブルの責任の所在が不明になってしまうといった問題が起こっています。メッセージカードのようなアプリケーションは、こうした問題の解決にも繋がってくるのではないでしょうか。

2つ目の特徴は、競合と一線を画した「ローカライズした品揃え」です。『Wolt』は東京進出前に北海道や仙台で展開されてきましたが、その際、チェーン店だけではなく地元の飲食店などのメニューも豊富に加わったことが話題となりました。

コロナ禍において、打撃を受けた日本の飲食店や、地元の飲食店を応援したいという想いから消費をするようになった人が増えたと言われています。海外旅行や県を跨いだ遠出、外出が難しくなった状況で、地元の魅力を再発見するような動きもあり、正に今の生活者のインサイトに応えている特徴であるといえます。

コロナの状況は、これから先もまだ不透明な部分も大きく、フードデリバリーへの需要も、引き続き高まりを見せるのではないでしょうか。

そのような状況の中で、『Wolt』は独自のポジションを築いていくのではないかと考えられます。

『ニューノーマル市場のブランド分析』は、ニューノーマルな時代において新たな市場を創出しているブランドを、私たちが収集しているトレンドなどを絡めながら、ブランディングの観点で分析していきます。

急速なスピードで変化している人々の行動と市場を捉えることが求められる昨今のマーケティング活動に、少しでも貢献できれば幸いです。

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ブラビス・インターナショナルは、戦略立案、コンセプト策定、クリエイティブ開発等、国内外の様々なクライアントのブランディング業務を多岐にわたってサポートしています。

リブランディングを行ったり、新規ブランドを立ち上げ、市場を創造して行く際、今の消費者が「どんな生活をしているのか」「何を求めているか」に対して常にアンテナを立てておくことが大切です。

本記事のように、統計データやトレンド事象などを様々なメディアから収集し、その裏にある生活者意識を弊社独自の視点で読み解くレポートをメルマガでも配信しています。

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