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達者でなニパ子

プラモデルを嗜む人ならみんなが知っている、ゴッドハンド株式会社の誇る「アルティメットニッパー」
その擬人化キャラクターである「ニパ子」がその活動を停止する。
サブカルチャーに造詣が深く、絶えることなくエゴサを行いTwitterで暴れまわったニパ子。
突然の運用終了に驚きを隠せないが、その7年余の軌跡を、全くの部外者ながら振り返りたいと思う。

〇2013年、コミPO!で描かれたニパ子初期型

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まずは最高級プラモデル用ニッパーとして確固たる地位を築いた、アルティメットニッパーについて説明しておく。
SPN-120 アルティメットニッパーはニパ子誕生の約2年前、2011年5月に発売を開始(当時は「プラモデル専用ニッパー」)、開発には1年半かかったという。

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実際にアルティメットニッパーの名前が登場するのは同年10月ごろ。当時は楽天の自社サイトのみの取り扱いのみ、価格は送料込み3300円。
現在は5000円を超えているため激安に思えるけれど、当時の最高級品はタミヤの薄刃ニッパーで2000円程度。
今まで使っていたものの1.5倍の商品、気軽に手を出せるものではなかった、ということは覚えていてほしい。

私がこのニッパーの存在を知ったのは2012年になってからだったと思う。
ここのニッパーがすごいらしい、そう聞いて楽天のサイトを見た私の感想。今でもはっきり覚えている。

「ウサンくせぇ」

冗談ではなく本当に本当に胡散臭かったの。
「切れ味グレード5.0!!」「究極の切れ味!」みたいな煽り文句とイナズマエフェクトのかかったニッパーの画像と社長がニッパー作ってる写真が延々と続くの。縦に10mくらいそんなのが続く。健康食品のCMかよ。

そんな胡散臭さになけなしの購買意欲は消沈、でも気になるし胡散臭いのは面白いのでたまに見に行く、なんてことを繰り返していたわけだ。

そこに突如現れたのがコミPO!で作られた解説マンガ。あるてぃめっと!ニパ子ちゃん。セリーヌ・p・ニッパーヌ、爆誕。
基本的に言ってることはこれまでと同じなのに、スルスルと腑に落ちる。

サイトページの長さは相変わらずだったものの、この漫画とTwitterでの発信は、俺の中に長らくあった胡散臭さは相当に軽減された。

ニパ子が登場して間もない2013年7月、楽天サイトでアルティメットニッパーの共同購入が企画された。
最低人数20人、上限100人で価格は2830円。
ふんぎりには十分だった。
これは即完売ということもなく、1週間ほどかけて100人になったように思う。

ニパ子の産みの親であるT氏はTwitterでの活動も精力的に行い、企業個人の区別なく、なんなら模型に関係のない業種にもガンガン絡んでいった。
マンガ、ゲーム、アニメに造詣が深くエゴサも大好き。
大変にTwitterと相性の良い人物で、フォロワーがまだ少ないうちは気軽にリプを返してくれていた。
私も多少やり取りしたことがあるのだけど、印象深かったのは楽天サイトの縦に長い構造について。
あれは当時、楽天からの指示として「ページは縦にこのくらいの長さに作りなさい」という指示があって、その基準を満たすために無理矢理長さを稼いでいたとのこと。
マンガ形式というのはその制約を逆手に取った奇策でもあったわけだ。

話は戻ってアルティメットニッパーは、ニパ子の登場以降徐々に知名度をあげ、マスパーやエッジニッパー、メタルラインニッパーといった新製品を展開しつつ、2014年になるころは生産の遅れもあり、通常販売では即完売も目立つようになり、予約販売制となっていく。

月に数丁、というところまで落ち込んでいたアルティメットニッパーを売るために生まれたニパ子の威力は、会社の生産能力を超えてしまったわけだ。

ないものを売るわけにもいかなかったのか、このあたりからニパ子の活動は模型シーンの盛り上げにシフトしていったように思う。
TwitterもT氏の言葉だったものが、徐々にニパ子そのものとして発信するようになる。これが数年にわたって継続するは非常に稀有なこと。

模型業界には多数のマスコットキャラクター、萌えキャラが存在し、Twitter上でもアカウントを持って発信しているが、その活動は往々にして安定しない。
多くはTwitter担当者が男性社員であり、萌えキャラとしての発信が難しい、恥ずかしい、メンタルが持たない、話題の守備範囲がカバーしきれないといったところに難しさがある。
仮に女性担当者であってもやはり状況は同じで、なんならセクハラで更にメンタルをやられるまで追加される。
したがって活動は新製品の登場時やイベント前後など、比較的短い期間だけ活発で、あとはせいぜいRTやいいねをするくらいになってしまう。
キャラクターを作るだけならどうとでもなるが、運用となると話は全く変わってくる。

その難しい状況をニパ子はものともせず、異常な活動量は数々のコラボを果たし、皆の良く知る現在に至った。

アルティメットニッパーにとどまらず、ニパ子の活動によりゴッドハンド社の知名度は模型業界において揺るがないものとなった。

そのニパ子の運用を終了させるのは下策のようにも思えるが、ゴッドハンド社も決して大きな会社ではない。
その活発すぎる動きが会社の負担となってきたのかもしれない。などと勘繰るのは下衆の極みか。

ニパ子の活動は終わる。
だが、きっとまた会えるだろう。
どっかのマスコットキャラが、突然関係のないゲームの話に割り込んできたり、エゴサしまくりイジりにやってくるかもしれない。
別に死んだわけでもない。

じゃあ、達者でなニパ子

宇宙のどこかで、また会おう。

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