赤月ゆにが夢に出てきた

これは今朝見た夢のお話。

前置き:赤月ゆにが出てくるまで700文字くらいかかります。がんばれ。

僕は海沿いの町で働いていた。
労働は厳しいながらも、一緒に働く仲間達は朗らかで仲もよい。
みんな40〜50代に見えるけど、僕はいくつくらいなんだろう。

海辺に置かれた、プレハブのようなカプセルのような小さな部屋。
4人で束の間の休憩をとっていると、地震なのか大波なのか、小さな部屋は海に投げ出されて漂流を始めた。
「これはいい、このまま北海道まで逃げちまおう」
「それもいいねぇ」
「…………」
「この部屋大丈夫なの?」と僕。

小さな部屋は波に大きく揺られながらも、浸水の心配はなさそうだった。
だけど海は黒く大きくうねり、呑み込まれたらそれで終わりだと思わせる迫力があった。
海中からも時折煙突のような鉄柱が飛び出してきて、かすっただけでこの小さな部屋はバラバラにされてしまうだろう。

波が落ち着いてきた。
漂流してどのくらい経ったかわからないけど、北海道に着いたらどうする?みたいな話をして4人とも気楽に構えていた。

周囲が明るくなり、陸地が見えてきた。
漂流物避けの網の付いた鉄塔が海中から勢いよく何本も飛び出したけれど、幸い小さな部屋はその脇を抜けて海岸に流れ着いた。

海岸沿いに国道らしき道があり、そこそこ栄えてる地方都市という感じだ。郊外型のチェーン店もいくつか見える。
「ここ、◯◯だな」
初めて来たけど、多分元の町から車で1時間くらいのところだ。
「知り合いがいるからそこへ行こう」
北海道はいいのか?、と思いながらみんなに着いていった。

仲間の知り合いの家では、狭い部屋に通され、4人でささやかな歓待を受けた。
そこに赤月ゆにがいた。

(ゆにちゃんだ……)
華奢な身体に豊かな金髪、整った顔立ちの紅い瞳。
見慣れないデカい丸メガネをしているが、歓待の片付けをしているのは赤月ゆにその人で間違いない。

「大変だったね、●●」
突然の苗字呼びに驚いた僕は後ろにひっくり返った。
なぜマットレスの上にチェストを置いて座っていたのか、現場猫案件じゃないか。

「ああっ大丈夫?怪我ない?」
「だっ大丈夫です、すみませんすみません」
差し出された手を取ってとろとろ起き上がる。

何か名前の分かるもの身につけてたっけ?
そもそもゆにちゃん、僕が眷族だとわかってたのか?
なんでこんなとこにいるんだ?
ドキドキしながら色々考えつつ、カッコ悪いとこ見せた照れ隠しで倒れたチェストをマットレスの上に戻し、またその上に座った。

片付けの続きを始めたゆにちゃんを見る。
しんどそうには見えないが、元気が溢れてるわけでもない。
すごくフラットに見える。

「あの、ゆにちゃん……」
「?」
「俺、"すな"です!」
キョトンとした顔をするゆにちゃん。

色々な想いが去来して名乗りが口をついて出たが、言ってから焦る。
これ、ゆにちゃんが覚えてなかったら気不味くて死ぬしかねぇ。

ゆにちゃんの表情がパッと明るくなる。
杞憂。
これは覚えてくれてた顔だ。

「すなだったんだ……懐かしいね」

そこからしばし歓談。
「プラモデルはずっと一人で作ってるの?」
「ほぼほぼ一人ですけど、何人かで集まって作ったり、出来たものを持ち寄って見せたりはありますね」
みたいな。
概ねゆにちゃんが話を振ってくれて、それに返すような、口下手に気を使ってくれてるのが申し訳なくもあり、楽しい時間だった。

「あの、ゆにちゃん……いつまでも待ってるので、その……」
「ん……心配させてすまん」

言おうか言うまいか。応援が負担にならないか、俺の願望の押しつけにはならないか。
だが、言わざるをえなかった言葉を口にした。

ゆにちゃんの表情はまたフラットになったけど、口元はわずかに緩んで見えた。

ゆにちゃんはメガネを外し、すっくと立ち上がると、僕の手を握った。
「すな、これ取っときなさい」
と五千円札をねじ込んできた。
「いやいやいや!これはもらえません!」
「流されてきてこれから大変だし、遠慮しなくていいから」
「大丈夫です大丈夫!ほら、俺も現金はいくらかありますから!!」
僕も財布を開けて中身を見せる。千円札ばっかだけど20枚くらいはありそう。
「それに推しに現金もらうとかありえないですから!」
むむむ、と五千円札を握ったままたじろぐ吸血鬼。

「わかった。でも無理はするんじゃないよ」
優しい顔でそう言われて、目が覚めた。

ゆにちゃんが外したメガネ、サラダが入ってたボウルに置かれた気がするんだけど、マヨネーズの残りとか付いてないか心配だ(´・ω・`)

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